第9回 事例に見るDXの真実 DX相談室 DX人材がいない会社は、どこから始めればよいのか?─最初に育てるべきは「AI人材」ではなく「DX推進人材」─
AIPAへ寄せられるDX相談で、経営者から最も多く聞く言葉があります。
「うちにはDXを進められる人材がいません。」
「AIに詳しい社員がいないので、何も始められません。」
「専門知識がないから、DXは大企業の話だと思っています。」
しかし、私はいつも同じことをお伝えしています。
DXは、AIに詳しい人が進めるものではありません。
DXとは企業を変革する活動です。
つまり必要なのは、「AIの専門家」ではなく、「会社の課題を理解し、デジタル技術を活用して解決できる人材」です。
これが、本当のDX推進人材です。
実際にAIPAが支援してきた企業でも、DXを成功させた担当者の多くは情報システム部門ではありませんでした。
製造現場のリーダー。
営業部門の管理職。
物流責任者。
品質管理担当者。
工場長。
現場をよく知る人たちが中心となり、DXを推進しています。
なぜでしょうか。
理由は簡単です。
現場の課題は、現場の人が最も理解しているからです。
例えば製造業であれば、
「毎日設備が止まる。」
「品質検査に時間がかかる。」
「ベテランしかできない作業がある。」
こうした課題を理解しているのは、現場で働く人です。
営業部門であれば、
「提案書づくりに時間がかかる。」
「営業ノウハウが共有できない。」
「新人教育が進まない。」
こうした課題も営業担当者だからこそ分かります。
つまりDXは、現場の課題を起点に考えるものなのです。
では、そのような人材に必要な能力とは何でしょうか。
第一に必要なのは、「課題発見力」です。
現場で何が困っているのか。
どこにムダがあるのか。
何を改善すれば会社が良くなるのか。
この視点が最も重要です。
次に必要なのが、「デジタル技術を理解する力」です。
ここで勘違いしてはいけないのは、プログラミングができる必要はないということです。
AIで何ができるのか。
IoTはどのようなデータを取得できるのか。
ロボティクス・オートメーションはどの作業を支援できるのか。
ITシステムはどの業務を効率化できるのか。
この程度の知識があれば十分です。
大切なのは、技術そのものではなく、「この課題には、この技術が使える」という発想です。
そして最後に必要なのが、「人を巻き込む力」です。
DXは一人では実現できません。
現場の協力。
経営者の理解。
取引先との連携。
こうした多くの人を巻き込みながら進めていくことが求められます。
だからこそ、DX推進人材にはコミュニケーション能力も欠かせません。
AIPAでは、このような人材を育成することを目的に、AI・IoT・ロボティクス・オートメーションを体系的に学べる教育プログラムを提供しています。
私たちが目指しているのは、「AIを操作できる人」を増やすことではありません。
企業の課題を見つけ、最適なデジタル技術を組み合わせ、現場を変えられる人材を育てることです。
DXが成功する企業には共通点があります。
それは、最新技術を数多く導入している企業ではありません。
現場を理解する人材を育て、その人材が中心となって改善を積み重ねている企業です。
DXは、一度に会社を変える大きな改革ではありません。
小さな改善を積み重ね、その成果を全社へ広げていく取り組みです。
その中心にいるのがDX推進人材なのです。
AIの時代だからこそ必要なのは、「AIに仕事を任せる人」ではなく、「AI・IoT・ロボティクス・オートメーションを使って企業を変革できる人」です。
これからの企業競争は、設備やシステムではなく、「人材」が勝負を決める時代になります。
AIPAは、そのようなDX推進人材の育成を通じて、日本企業の競争力向上に貢献していきたいと考えています。
これこそが、「事例に見るDXの真実」です。
次回は、「DXはシステム会社へ任せれば成功するのか?」をテーマに、システム導入とDXコンサルティングの違い、そして企業が本当に必要とする支援について解説します。
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