迎え火オペラ【毎週ショートショートnote】
「まあ、今年も忘れずに迎え火を……ほら『椿姫』! 素敵でしょう?」
「ウチは『ドン・ジョヴァンニ』だ。やはりモーツァルトだよ」
下界で家族が迎え火をたくと、浄土では合図のオペラが流れる。
その音に導かれて故人は家族の元へ帰るのだ。
その誰もいなくなった浄土に、一人の男がぽつんと残っていた。
「けっ、なぁにが迎え火オペラだよ……」
「あなたは帰らないのですか?」
仏様が優しく訊ねた。
「へへ、迎え火焚いてくれるような家族もおりませんで」
「まあ……」
仏様の顔が曇る。
「なぁに、散々ヤンチャしてたんでね。お上品なオペラなんか判んねえから羨ましくも何ともねえっす」
神様はにこりと笑って手招きした。
「迎え火オペラが苦手なら、こちらはどう? せっかくのお盆ですから行ってらっしゃいな」
男が下界を覗き込むと、煌々とした灯りの中から楽しげな音が聞こえてくる。
「あっ、この曲は……!」
男は懐かしさに顔を輝かせて下界へ駆け下りた。
「へへ、やっぱり俺ぁ、ドン何とかよりこっちがいいや」
彼の故郷、東京は中野の盆踊り。
DJの声が夜の空気を突き破る。
「――さあ行くよ! せーの!
We Love 盆ジョヴィ!!!」
(486字)
【あとがき代わりの秋しば創作プロセス】
『迎え火オペラ』また素敵なお題を出してくれますこと(苦)
さて、今回はどういきましょうか。
「迎え火をたくとオペラが……」という展開は多そうです。
それを見事に飛び越えたのが氷堂さん。
ちー、うまいこと書きますね。
流れるオペラを故人の思い出に引っ掛ける、というのはもっと多そうです。
――と思いきや、え、そっちのオペラ? にっこりみかんさん。
意表を突かれて悩む秋しば。
――あ、帰れない人もいるかも。
そんで神様が「帰らないのか」と訊ねる場面が浮かびました。
あ、迎え火だから仏様か。
そうか、迎え火をたいてもらうと浄土で呼び出しのオペラが流れることにしよう。でもたいてもらえないと帰れない。じゃあ、どうする?
オペラの題名からヒントないかな。
トスカ、椿姫、魔笛、ドン・ジョヴァンニ……。
ドン・ジョヴァンニ……盆・ジョヴァンニ……盆・ジョヴィ……
(はい、この記事の先頭に戻ってくださいw)
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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