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プロベーション・レポート ~新入社員の四カ月~ 第三章2

第三章 
第二話「爆速オペレーションチャレンジ」

「ハァ・・ハァ・・こ、これでいいか?」
ナニコレ。

脂ぎったおじさんがなんかすごい頑張って折りコン運んだり米袋運んだりしてるんだけど。

あれだ。
モンスターハンターの卵運び。

「OK!部長最高っすー!」

顔の濃いスーツの人はなにやらゲラゲラ笑っている。
ナニコレ。

このスーツの人はなんなんだろう?
偉い人なんだろうか?

あんまり話したこともないけれど、このおじさんが偉い人だということは派遣の私でもわかる。

クスクス・・
パートのおばちゃん達やバイトの男の子達も笑いを堪えるのに必死じゃん?

「あー面白ければみんな声殺す必要は無いですよー、皆さんしっかりマスクしてますし!」

アハハハハ!
「ハァ・・ハァ・・じゃあ次は・・君の番だ。」

バイトの子が部長に指名され、テキパキと米袋を運んでいく。
この子こんなに速かったっけ?

「結構しんどいっすねー!でもなんか楽しい気がします!」

「うん大丈夫!その感じがいいと思う!」

スーツの人がどんどん声をかけていく。
米袋を運ぶ人。
折りコンを積む人。
みんないつもよりテキパキしている、気がする。

ふと壁際を見ると、工場長がスーツの人を睨んでいるようだった。
え?工場長クビ?私的には願ったり叶ったりだけど。

「じゃあ次は、実際に炊いたお米の作業を僕もやってみますねー!」

キャー!!
少々年季の入った黄色い声援が飛ぶ。
ナニコレ。

「じゃあ皆さんこちらに集まってください!」

スーツの人に注目が集まると、なにやらよく見えないスピードで次々とご飯がコンテナに詰められていく。

えぇ?雑過ぎない?
それじゃコンテナにお米が・・・ついてない。

え?何したのこの人。

「ちょっと練習は要るんですけどこのぐらいの速さでやれる人がいるとありがたいですー!誰か自信ある人ー!」

誰も手を挙げない。
そうよね、あれは無理。
雑にやって怒られることがあったら嫌だもん。

「はい、僕やってみます。」

品質管理の岡本くんだ。
普段そんなに喋りもしないからわからないけどすごく大人しい若い社員の子という印象しかない。

パパッカッカッコン!

え・・・ご飯が縁に全くついてない。
すごい・・・っていうかスーツの人より上手ね?

「すーごいじゃないですか!速くて丁寧でありがたいです!こんな感じでちょっと作業の種類を分けてみたんですけど速くやれる作業は速く、品質管理の工程はしっかり丁寧に、と気をつけて今日はやってみませんか?いつも帰りが遅くなって困ってる方もいらっしゃると思いますし。」

「というわけで早く帰りたい人ー?」

まばらに手が挙がる。
便乗して私も挙げた。
私も早く帰って溜まったアニメを観たいのだ。

「半分くらいの方が早く帰りたいってことなんでここはみんなで協力して早く帰してあげませんか?きっと家でやりたいことがあるんすよ!ね?」


・・・不思議なことが起きた。
あれだけ朝時間を使って今更な説明を受けていたのに、私は普段より早く家に着いている。

確かにいつもより頑張った気がするし、心なしか身体のあちこちも痛い気がする。

けどなんだか今日はいい日だった気がする。
ちょっと仕事が楽しかったような気がする。


・・・残業代出ないのはイタイけどね。

トゥントゥンタタンタンー

「もしもしー?」

「あー藤田ー久しぶりー!あんた最近なかなか連絡つかないから心配したよー。元気ー?」

そうだった。
友人からしょっちゅう連絡はあったのだ。
着信あっても仕事で疲れてスルーしてましたー、なんて口が裂けても言えない。

「元気元気!最近ちょっと忙しかったから。なかなか連絡返せなくてごめんね?」

「いいよいいよー、今度の土曜日ご飯行かないかなーって。久しぶりに顔も見たいしね!」

「いいねぇどこ行くー?昼?夜?」

「夜がいいな。新しく肉バル出来たでしょ?あそこ行ってみたくてー。」

肉!ワイン!それはいいですねぇ!!

「いいよーそこ行こう!何時に集まろっか?」

「18時くらいでいいんじゃない?藤田は次の日仕事あったりする?それなら早めに」

「大丈夫大丈夫!ちゃーんと休みよ?そのために派遣先変えたんだからー。」

「了解ー、じゃあ土曜の18時にね!バイバーイ!」

「うんまたねー!」

私もあの肉バルは行ってみたかった。

日頃の!鬱憤を!肉と!!ワインで!!

などと考えていたらお腹が空いてきた。

ここ最近あんまり食欲もなかったから冷蔵庫にはあんまり何も入ってなくて、近所のラーメン屋さんでご飯を食べることにした。

「あー・・・彼氏欲しい。」

心の声がつい漏れ出してしまって、恥ずかしい気持ちになった私は早足で店に向かう。

早歩き鬼ごっこ、ねえ?
早歩きして、そのまま仕事して、なんか部長さんとかスーツの人が急いで仕事してて。

でもいつもと違って、色んな人が笑いながら仕事できたのはちょっと嬉しかった。
あの顔の古いスーツの人は結局何者なんだろうか?

私が朝礼を聞いてなかったせいだけど、名前も知らないや。
あの人は明日も来るのだろうか?

いつもより気持ち速く歩いていることに気づかないまま、私はラーメン屋の暖簾をくぐった。

ー次回ー 
第三章 第三話「テンションブースター」

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