プロベーション・レポート ~新入社員の四カ月~ 第五章4
第五章 第四話「旅立ち前夜」
定時上がりが完成した。
というか時間余った・・・おかしいだろ。
確かにお店さんに交渉はしたけど、同じ地域を何度も通る謎のルートを一回通ればいいようにしたりしただけでこれ?
17時どころか16時過ぎに帰社できる上に昼休憩っぽい時間帯、要はランチタイムの時間に2時間くらいあるんだけど。
1時間の昼休憩は取るけど更に1時間余る。
何をどう仕事してたらそうなるの?
気合で夜遅くまでいるよりよっぽどこっち指導した方がいいでしょうに。
というわけで定時上がり作戦が拍子抜けするぐらいイージーに完了してしまったので、最初に決めた『会社の半分くらいの人も帰す』をやらなきゃいけない。
なので余りの時間を使って、積載多い人の配送フォローに入ることにした。
課長に頼んでなんかしらExcel使えるPCが欲しいなーって言ったら、葛西さんが使ってないPCを俺が使っていいってことになった。
テレレンレンレーテレレンレンレーレーテレン
・・・・Windows2000の起動音懐かしいなぁ。じゃない!!
こぉれはヤバい。
一太郎のどれかわからんバージョンのやつとか入ってる・・・
とりあえずどうにか自分のルートのフォーマットを作って、二課全員分プリントアウトした。
その後課長に、月曜から出発前に二課ミーティングとでも適当な名前にしつつ5分だけ時間をくれ、と頼んだら快諾してくれた。
いざ月曜からは多分誰かのフォローに入りながら自分も定時で上がれるわけで、これでまだ二ヶ月以上残り時間があるのだから我ながら上出来なんじゃないか?
とりあえず来週の金曜は前の店に食いに行こ、ノー予約で行ってやろ。
確か彼女は仕事だし、将軍でも誘ってやるか。
いざやってみたフォロー作戦はすこぶる順調で、須藤くんや葛西さんが何回か早く帰れるようになっていい感じだと思う。
松本くんは俺の話を全く聞いてないとしか思えないアホな距離を『代わってよ!』とか言ってきやがったので無視した。
つーかおめぇのルートは俺の反対側だろうが。
俺だけこれやっててもみんな帰れるわけでもないし、お互いでフォローできる何かが欲しいなー。
と思ったので、課長に全員のルートがわかるリストが欲しいと頼んだんだが・・・
「須藤のは須藤のパソコンに入ってるぞ。松本のはなぁ・・・あいつパソコン無いから一課の佐々木さんのやつに入ってる」
などと言うので、流石にこの事務所が一回全焼して建て直した方がはえーんじゃねーかなと思われた。
ちょこちょことみんなのルートを集めて、どうにかスプシとグループLINEで連絡取り合えばどうにかならんか?
と思ったんだが、社用スマホはIS03だし課長のPCですらXPだしで・・・無理じゃん。
あんまりにもあんまりな情報環境に心は終始涙目である。
どうして俺がこんな目に!
・・・しかしここで折れたら元も子もない。
とりあえずもうヤケクソでやってみることにした。
葛西さんでも使えるように、店舗全部プルダウンで選択できるようにしたらどうにかなるだろう。
馬鹿みたいな手入力になるし、こんなん今日店に食いに行くの無理じゃん!
なんなら彼女より遅く帰って怒られるじゃん!
しゃーない、ヤケクソにヤケクソを貼り付けてやる!
課長に残業許可を取ったらなんか張り切って
「わかった。俺は何をすればいい?」
などと聞いてくるので内心、
『残念だったな、お前に出来ることなど何も無い』
と思いつつ、一階の工場の手伝いをお願いした。
なんか倉庫覚えついでに手伝ってたらいつの間にか『お前も家族だ』みたいな扱いにされていて、それはそれで困っていたからちょうどいい。
しばらく経つと課長が戻ってきた。
「炊飯工場が残業過多で悩んでいるそうでな。飲食出身のお前の力を借りたいらしい。期間は一週間なんだがどうだ?行ってくれるか?」
・・・なんて?
この人今一週間で炊飯工場の残業どうにかしろって言った?
いやまあ飲食のスキルを頼られるのは嬉しいけど、飯食わせて酒出すのと米炊いて配達するのが同じとはちょっと思えないんだよなぁ。
まぁちょっと面白そうだし見に行ってはみたい。
野村さんいるしね。
「え?一週間すか?現場見てみないとなんともですけど、それでもいいなら全然いいすよ。」
スプシの件はとりあえず月曜に説明だけして、最悪次の週でもいいでしょ。
大慌てで一階に降りて行った課長がしばらくして戻ってきた。
両手にエメラルドマウンテンを持って・・・
人力伝言じゃん!スマホは!?
流石この情報環境なだけはあるぜ。
俺はまだまだ考古学者として未熟者だと言わざるを得ないな。
それよりもそろそろ俺は缶ならブラックだと覚えて欲しい。
なんか一ヶ月すごい頑張ってた気もするし、来週は炊飯見学してのんびりしよ。
