プロベーション・レポート ~新入社員の四カ月~プロローグ
専務編 第0話/プロローグ
今期も赤字か、一体この会社もいつまで保つやら・・・
「親父の遺した泥舟をどうにか沈ませないようにとやってきたがさてどうしたものか。」
一族経営の末路。そんな言葉がよぎる。
急逝した父から引き継いだのは、米卸という斜陽産業。
そして、システムごと腐り落ちた遺物のような会社だった。
コンコンー
「入れ。」
「失礼します!
専務、一人ルート営業を採用しました!
元々飲食店で働いていた人間だそうで、営業力には期待できませんが体力的にはそこそこ保つでしょうな!
あれはあれでブラック業界なんて呼ばれとるでしょう?
あんまりにもすぐ辞められては面倒ですからな!
営業二課に配属の予定ですので一度履歴書に目をーー」
・・・騒々しい男だ。
「わかった。そこに置いておいてくれ、後で目を通す。」
「わかりました。失礼します!」
デスクには赤字の財務諸表、先日退職した若い奴の退職届。
今年だけで何件の退職届を受理したんだったか・・・
常務に採用は一任しているがああいう男だ、人を見る目とやらもしれている。
飲食上がり。
体力はあるだろう。
理不尽な長時間労働にも慣れているだろう。
だがそんな『この会社にとっての都合の良さ』を持った人間など、これまで何十人と通り過ぎていった。
そしてそのほとんどが一年も経たずして『一身上の都合』と書かれた紙を俺のデスクに残していく。
せいぜい派遣代の足しになる期間くらいは保ってくれれば御の字か。
窓の外には、昭和の空気を色濃く残した精米工場の煙突が力無く立っていた。
デスクに無造作に置かれた履歴書を、俺は一瞥することもなくため息をつく。
「どうせすぐ辞める。」
