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プロベーション・レポート ~新入社員の四カ月~ 第五章8

第五章 第八話「銀河鉄道の夜」

(おれぁーみんなをうらぎってぇー)
(うぉーおれをだれかしかれぇー)

この会社におかしな人は多々いるが、明確に様子のおかしい人と言えばそれは事務長だろう。

酒飲むたびにとんでもねぇ勢いで酔い潰れて妙な呻き声出してるんだもん。
気にするなという方が無理がある。

「あのーすみません。一つお伺いしたいんですけどいいですか?」

いくら常務に見つからないためとはいえ流石にこんな妙なしゃがみ姿勢は腰が痛い。
こっちだって勝手に最若手扱いされているがもう30歳だ、高齢化してんのはこの会社だっつの。

「こんなところで何をしている。仕事に戻れ。」

あら?そういう感じか。
まあいいか。

「あー・・・いえ一つだけなんで、この給与明細なんですけど基本給の金額おかしくないですか?少なくとも何人かの人は僕と同じ80,000円の記載になってましたけど年金や退職金どうなってんのかなって。」

・・・この人も黙るのかよ!!
どうなってんだこの会社!!
コワイ!!

とりあえず事務長は半分涙目みたいな表情で息も絶え絶えに、夕方に喫煙所に来いと言っていた。


通常業務を終え、颯爽と帰社するとこっちで見るには珍しい人がいた。

「野村さーん!」
「うぉ!なんだお前近寄ってくるな!!」

相変わらずこのおっさんはめちゃくちゃである。

「野村さん基本給見せてください。」
「おんまえ!おかしくなったのか!」

なってねぇよ、なりそうだけど。

「じゃあ見せなくてもいいんすけど基本給の金額って80,000円じゃないすか?退職金とか年金に関わるんで。場合によっては退職金がめちゃ少なかったり、最悪年金がヤベェかもしんないっす。」


・・・青い顔をして黙っちゃった。
なんなんだよこの会社!!


「・・・どうすればいい?」

・・・そうきたか。
いや・・・どうもこうもない。
裁判するのが一番いい。


「・・・とりあえずあんまりにも数字おかしいんで今日事務長に話聞けることになってます。詳しいことわかったら野村さんにはすぐ伝えます。
・・・だってあと2年ですもんね。」

いくらなんでも、60を目前にした人にこれは
・・・酷だろうな。


・・・アドレナリンが足りねぇ。
・・・カフェインも足りてねぇ。
同情してしんみりしてる場合じゃない。

とりあえずブラックの缶コーヒーを一気に煽って喫煙所に向かうことにする。

先に喫煙所に入り煙草に火をつける。

「すまない待たせたね。」

「あ、お疲れ様ですー。全然大丈夫ですよー。」

事務長は少し表情を歪めている。
「君はその若さでハイライトなのか?」

「あぁ、これですか?このぐらいじゃないとどうにも。キツイんですけどね。」

本当にそうなのだ。

カフェインとニコチンとアドレナリンでどうにかやれている。
という感覚があるのだから。

歳を取るって嫌ねぇ。

「さてどこから話をしたものか・・・」

とりあえず要件だけは済ませたい。
俺だってふざけているなりにきちんとショックは受けている。

「そうですねぇ。基本給80,000円がヤベェと思って確認したら、二課全員がそうでした。
ヒラだけならまだ可能性あるかなと思ったんですが、課長もだったんで。全員そうなんですか?」

もう俺の中では経営陣以外全員、という答えは出てしまっているが。

「君は私の罪を暴きにきたのか?」

は?なんて?イマイチ話の噛み合わない人だ。

「罪?何の話ですか?よくわかりませんがじゃあ質問を変えます。上からの指示ですか?」

どうせ常務だ。
まあワンチャン専務のセンも無くはないが、二人ともだと困るなぁ。

「常務からの指示だ。もう10年になる・・・私は奴からの・・・」
だろうな。
「まあそうですよねー。じゃあ常務がその金額に決めたんですかね?」

珍しく俺は焦っている。
いや、最初から焦っているのだけど今回ばかりは嫌な焦りがある。

「いや、常務からの指示ではあるが誰がこうすると決めたのかは私は知らないんだ。すまない力になれなくて。」

じゃあもうやれることは一つしかない。
これでダメならもう諦めるしかないのだから。

「あ、いえそれは大丈夫です。うーん・・・事務長に一つお願いがあるんですけど。」


「・・・出来ることなら協力しよう。」


「僕と社長の会食セッティングしてくれません?もちろん事務長同席で。」


・・・どうにでもなれ。
今日の煙草は不味い。

ー次回ー 第五章 第九話「生活」

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