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プロベーション・レポート ~新入社員の四カ月~ 第二章4 定時の噂

第二章 
最終話「焼肉会4」 定時の噂

「おつかれー!」

カチンッ!

「二週間近く定時で上がるってなると慣れるもんだな。彼女も機嫌良くて嬉しいよ俺は。」

「えぇー?僕ようやく今週定時がチラホラ出来てるのにさぁ。まあでも須藤くん元々早かったんでしょ本当は。」

「おう、前から言った通り大体17時だな。だから今回の件で本当にありがたいのは帰っても大丈夫っつー空気の方だわ。烏丸何も言ってこねぇじゃん?」

「そんなことないよ!課長んとこ来てこないだなんかしら喚いててさー。課長が『全て私の指示です!』って大声張り上げてたもん。」

「なにそれ!?ウケる!!別に俺ら課長に何も言われてねぇのに!!ん?お前は指示されてたりすんの?」

「いや?別にそういうのは無いね。」

「じゃあ何その課長のやつ。」

「さぁ?課長が帰りたいと思ってて、小林くんが勝手に帰り出したし須藤くんも僕も葛西さんも帰るからそういう流れです!みたいな雰囲気出せば帰れると思ったとか?」

「まあ結局のところ烏丸だしな。誰も帰さねえの。俺としちゃ俺より遥かに人生の先輩でいらっしゃる人達が、ガン首揃えてあんなオッサン一人に逆らえないって方がおかしいと思うがねぇ?」

「待って?須藤くんも別に逆らってなくない?」

「まぁそうなんだけどさぁ。あ、そうかそれだ!人数集めてんだわ。課長?いやそうか?んー、小林別にそんな話してねぇしなぁ。
まあどっちかわかんねーけど、人数集めて帰りゃ烏丸も強く出れねぇだろ的な話なんじゃね?」

「えぇー?そんな陰謀みたいな話あるかなぁ?」

「でもそうなると小林だよなぁ。だってお前も今日使ったんだろスプシ。」

須藤は焦げた肉を見ては松本の皿に投げ入れる。

「スプシって何?」


「え?お前マジ?いや俺朝説明したじゃん!店舗リスト入ってて自分のルート入れてたろ!小林がやったっつって俺が説明したやつ!」

「あーあの表のやつか!あれ便利だけどあれのせいで僕怒られたんだけど。」

「そらお前馬鹿正直に昼寝の時間そのまんま入れるからだろ、あれ全員見れるんだぞ?いつでも。」

「そうなると結局仕事中頑張って走って早く終わらせないと怒られるってことぉ?」

「えぇ?どう考えても逆だろ。別に俺元々早かったからアレだけど早く終わらせて早く帰れってめちゃくちゃ普通だぞ?お前の実家ちげぇの?」

「うち?うちはなんていうか職人さんって感じだからあんまり気にしてないんじゃないかな?」


須藤はハイボールを小気味よく飲み干した。

「・・・お前それうちと負けず劣らずのクソ会社なんじゃね?」

「ひっどいなぁ!」
「ちょっとお前考えた方がいいぞマジで。後継ぐんだろ?」
「あーそうだねぇ。継ぎたくはないけど。」

「つーかお前までなんでスーツなん?小林ファン?」

「そういうわけじゃないけど、須藤くんだってなんでなのさ?僕はお客さんに『お?今日はいつもの人か!スーツのお兄ちゃんじゃないんだねぇ!』って言われて、なんか小林くんのこと良く言ってたから真似してみるかなーって。」

「まぁ似たようなもんか。明らかにこっちの方がやりやすいよなー。まあ運びにくいっつーかどうせジャケット着ないにしてもタオル何枚か持ってねぇとヤベェけどさ。
今まで課長だけスーツってことだったし、小林がずっとスーツ着てんのなんなの?って思ってたんだけどなー。実際客との話がしやすいっつーのはデケェ。」

須藤が手際よく追加の肉を整然と並べていく。

「思うんだけどなんだかんだ小林くん来てから結構な勢いで何か変わってない?たまたまなのかな?だって定時で上がってもいいみたいな空気になって、僕ら勝手にスーツ着始めて、今まで誰も使ってなかった社用のスマホで連絡取り合うようになった。」

「とりあえず小林に聞いてみるか。今日呼んでんでしょ?」

「うん!帰りに炊飯寄った時に伝えておいたよ!なんかあっちはあっちで面白いことになっとるって野村さん行ってたけど。」

「面白い?小林が行って?」

「なんか炊飯の工場長いるでしょ?」

「あーあのオッサンか、ちょっとめんどくさそうなやつね?」

「そうそう。あの人がなんか無視されるようになったとかなんとか。」

須藤のトングがピクっと震えた気もしたがそのまま肉をひっくり返していく。

「小林が?流石にそういう陰湿なことやるやつじゃねーだろ。」

「まぁそれはそうだね。あとあれだ!事件!僕にとっての!」

「は?お前の事件とかあんま興味ねえけど。」

「ひっどい!いやほんとに!なんか藤田さんが野村さんに小林くんの話聞いてきたって!」

「えぇ?だからなに?別に知らん社員っぽいやつ来たら『どなたですかー?』とか聞くだろ普通。つーか小林も煙草吸うんだから藤田ちゃんと被ったりしとるだろーしお互い喋るだろ普通。」

「違うって!なんか連絡先知ってますかとか言ってたって!ヤバいって!」

「ヤバくねぇわ。っつーかそれお前と一緒じゃねぇか、ギリ女だから許されるかもしれんけどだいぶキモい。直接聞けや。」

「聞けない気持ちわっかんないかなぁ!?」

「わかるかそんなん。で?野村さんなんて?」

「いや野村さんいい人だったよー。『あいつは彼女おるしピンパブのねーちゃんお持ち帰りしとったから手癖悪ぃでやめとけ!』って言ってくれたっていうもん。」


「大ボラじゃねぇか!うーわそれは野村さん酷いわ。流石に断るにしてもその嘘はいかんくね?」

「でも野村さんずっと『ほんとなんだって!』って言い続けてるよねぇ?やっぱ嫌いなんかな?」

「野村さんそういうタイプじゃねーけどなぁ?まーわっからんなー。」

「おーつかれーっすー!」

「おー来たな!ちょうどお前の噂話のことを」
「え?どゆこと?っていうかなに!?なんで二人ともスーツなんウケる!!」

「スーツはいんだよ!野村さんがお前の・・・」

第二章 完

ー次回ー 
第三章 派遣の藤田さんの章
第一話「早歩き鬼ごっこ←ガチ!」

第二章 全四話の一覧はこちら

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