イギリス2025: ハリポタと、感動ディナーと
2025-12-10 (Wed)
5:45に起床。シャワーを浴びようとすると…、お湯が出ない?! 時々ブシュッブシュッという空気が入ったような音が聞こえて、いくら待っても温かくならない。急いでフロントに電話すると、眠そうなスタッフが「昨日から壊れててねー、まだ直っていないんですよー。今日修理が来る予定です」とのこと。ある程度のホテルだったら、こういう時には各部屋のドアの隙間から現状報告と謝罪の手紙が入っているところなんだけど、安ホテルじゃ仕方ないか。出先から帰ってきた時には直っていることを期待しよう。
今日は今回の旅行の最終日。明日にはシアトルに戻る飛行機に乗らなければいけない。
今日の旅程は、ハリーポッターのスタジオツアー『ホグワーツ・イン・ザ・スノー(Hogwarts in the Snow)』からスタートする。郊外にあるスタジオに電車とバスを乗り継いで行くのは面倒だったので、ロンドン市内(ヴィクトリア駅とベイカー・ストリート)からバス送迎付きのチケット(£119=$160.20)をオフィシャルサイトから購入しておいた。ハリーポッターは、2001年に南アフリカに行く途中のニューヨークの書店で出会い、それ以来ずっとファンだった。原作本は発売日当日に買っていたし、もちろん映画も何度も観ている。スタジオツアーにはそれほど惹かれていたわけじゃないけど、「一度は行っておきたい」くらいの興味はずっとあった。
ホテルを6:45に出て、ベイカー・ストリートに向かうべく、エッジウェア・ロード(Edgware Road)駅まで地下鉄で行く。Googleマップで調べると、この近くのマリルボーン(Marylbone)駅の近くにGreggsがあるらしいので、そこで朝食にすることを決めておいた。リヴァプールに住んでいるカイさんがGreggsのことを勧めてくれていたので、ぜひとも食べておきたかったんだ。

マリルボーン駅の「中」にあるとは知らなかったのでちょっと迷ったけど、駅構内のGreggsに到着。7時過ぎという早い時間にも関わらず、ズラッと人が並んでいた。ソーセージロールやパイ類が美味しいとカイさんに聞いていたので、ソーセージロールを2つ購入。1つ£1.55という安さ! あまりの安さにクオリティーを心配したけど、サクッとしたパイ生地の中に優しい風味のソーセージがあって、とても美味しかった。「ソーセージ」といっても皮はなくて、軟らかい肉のフィリングといった感じ。安いので調子に乗って2つ買ったけど、予想以上にボリュームがあったので、1つ半しか食べられなかった。なるほどね、値段もすごく手頃だし、人気があるのもわかる。カイさん、ナイスなお勧めをありがとう!

8時過ぎにベイカー・ストリートのGolden Tours Visitor Centreの近くからバスに乗って、スタジオには9時半過ぎに到着。僕の入場時間は10時で、帰りのバスは14時に出発することになっている。



入口でデジタルガイド(£5.75)を借りたけど、音声のガイドだと思っていたら映像も見なきゃいけないヤツで、展示物から注意が逸れるのでほとんど使わなかった。見るものがたくさんある場所だから、ここでは音声だけの方がよかったなぁ。

最初にスタッフから説明を受けて、映画の俳優からのメッセージを聞いた後(ここだけ撮影不許可)、いよいよセットの中に入っていく。様々な式典や食事のシーンで使われたグレート・ホール(The Great Hall)はクリスマス仕様になっていて、とても豪華で綺麗。ホグワーツのシーンというとクリスマスの季節を連想する人が多いと思うけど、実は僕もその一人。クリスマスのデコレーションになる『ホグワーツ・イン・ザ・スノー』は11月中旬から1月中旬までだけなので、いい季節に来ることができてよかった。



様々なセットや衣装を見るのは楽しかったけど、一番興奮したのは実際に映画で使われたプロップ(小道具)の数々を見た時。1作目の賢者の石はもちろん、3作目でハーマイオニーが使ったタイム・ターナーや、6作目でハリーがダンブルドアに水を飲ませたクリスタル・ゴブレットなんかも置いてあって、それぞれの映画のシーンが鮮明に頭に蘇ってくる。こういうの、好きだー!



屋外のセットに出る直前にカフェがあったので、ここでちょっと休憩。ホグズミード村のシーンでいつも出てくるバタービールを買ってみた。£7.45(=$10)だから、この日のレートだと1,553円。かなり強気な値段設定だけど、未知の味を体験するためなら仕方がない。オリジナルのプラスチックのマグには、バニラの香りがする炭酸飲料の上に、軽いフワフワのクリームが乗せられている。「バター」という言葉がついているので、なんとなく重い味を連想していたんだけど、すごく爽やかじゃないですか! 見目だけ似せて味は二の次かもと思っていたのに、想像の上を行く美味しさにビックリした。これは体験できてよかったな。マグはお土産として持ち帰りができるけど、使うことはまずないだろうし、そもそも手ぶらでバッグも持ってきていないので、その場で捨ててしまった。

屋外には渡り廊下のセットや、ハリーが住んでいたプリベット・ドライブの家、ホグワーツの温室なんかがある。この一帯には粉雪が舞っていて、寒い日だったし雲も出てきているようだったので「えっ、本物?」と思ってスタッフに聞くと、やっぱりスノーマシンだった(笑)。この屋外の一角には、水中での撮影など特殊効果を説明する劇場があった。1時間に1回の上演で、ここは撮影禁止。これは個人的にあまり面白くなかったので、行かなくてもよかったかな。


ハグリッド役には身長2.08m(6′ 10″)のスタントダブルがいて、他の役者と一緒の画面に映るようなシーンでは、その人がハグリッドの顔のついた被り物を装備して出演していたことを知った。その被り物には精巧な装置が組み込まれていて、口の動きや表情を作ることができる。今だったらCGで簡単に合成できるけど、当時はまだこういうシステムの方が安上がりだったんだろうな。


見た瞬間に圧倒されたのが、ゴブリンの銀行グリンゴッツのセット。シャンデリアや大理石のような表面で、素晴らしく豪華な雰囲気を作り出していた。このセットのすぐ後には、ビデオとスモークマシンを組み合わせて、崩壊したグリンゴッツでドラゴンが火を吐くシーンが再現されていて、すごく迫力があった。




この後には、スタジオのレストランでシャンペン・アフタヌーンティーを12:30に予約してある。特殊効果の劇場で20分ほど無駄遣いしてしまったので、最後の方はあまりゆっくり鑑賞できなかったけど、全体的に十分見られた感じなのでよしとする。ハリーポッター好きの友達と来たらもっとよかっただろうけど、一人でもとても楽しめた。最後のショップには本当にたくさんのアイテムが売られていて、いくつか買いたいと思うものもあったけど、実際に着たり使ったりすることを想像できなかったのでやめておいた。こういうところは本当にケチだと自分でも思うけど、美味しいものにお金を遣うためにはどこかで節約しないと!(笑)
シャンペン・アフタヌーンティー(£54.95=$73.97)は、スタジオのレストランの一角の、グレート・ホールに似せた作りの場所で提供されている。テーブルの上にはクリスマスクラッカーが置いてあって、両方から引くと破裂音と共に中のおまけが現れる。ホグワーツの4寮のピンと紙の王冠がランダムで入っているみたいで、僕に来たのはなんとスリザリン(笑)。えー、僕は青が好きだからレイブンクローがいいのに!

アフタヌーンティーは紅茶も食べ物も美味しかった。メニューには「モリー・ウィーズリーのサンドイッチ」とか「ハグリッドのパンプキンパッチ」とか、ハリーポッターの世界に結びつけた説明が書いてあって、読みながら食べるのも楽しい。ロンドンで供されるアフタヌーンティーに比べると少しだけ寂しい感じはするものの、ハリーポッターの世界観で飲み食いできるんだから、値段相当の価値はあると思った。でもね、シャンペンは明らかに安っぽい味で、通常のアフタヌーンティーを選ぶべきだったと後悔した。


うん、ハリーポッターのスタジオツアー、結構よかった。シアトルに帰ったらまた全シリーズを通しで観て、今回のスタジオツアーを思い出すことにしよう。
13:45過ぎに帰りのバスが出て、ホテルに戻ったのは15時半頃。エレベーターの横にはまだ温水トラブルのことが貼り出されていたけど、部屋で試してみるとちゃんとお湯が出る! よかったー。また壊れてしまわないうちに、すぐにシャワーを浴びておいた。
今夜のディナーは21時と遅いので、それまでも予定が満載だ。
17:45くらいにホテルを出て、まずSloane Square駅に向かった。この近くで、『エバー・アフター・ガーデン(Ever After Garden)』という、がんのチャリティーイベントが開催されている。白く輝く花がたくさん植えられていて、まるで夢の中の世界のような美しさ。でもただ綺麗というだけの場所だけじゃなくて、どこか厳粛な空気が漂っていた。がんのチャリティーに寄付をした数だけ花が植えられるので、この花の多くは、がんで亡くなった寄付者の家族や友人に捧げられたものなんだろう。僕も6年前に母をがんで亡くしたので、オンラインで寄付をしておけばよかったなぁ。母のことを想いながら、優しく輝く花々をしばらく見ていた。

この後は歩いて20分ほどのところにある、『バンクシー・リミットレス(Banksy Limitless)』という場所で、19時入場のチケット(£23.99=$32.08)を買っておいた。ここは名前の通り、アーティストのバンクシーのことを深く掘り下げてあるギャラリー。入ってすぐのところには、バンクシーが今までどんな活動をしてきたかをまとめた年表があって、これは最高に面白かった。今までバンクシーのアートはちょこちょことしか見たことがなかったけど、こうしてまとめてあるのを見ると、いかに彼が現代の世界や政治を皮肉っているかがよくわかる。多くの作品が展示してあったし、没入型アートっぽい部屋や、映える写真が撮れる場所もあって、期待していたよりもずっと楽しめた。







バンクシー・リミットレスを出た後は、まだ夕食の予約までには時間があったので、カーナビー・ストリート(Carnaby Street)へ。ここはクリスマスのイルミネーションという意味から言っても、僕がロンドンで一番好きな場所の一つ。毎年とても変わったイルミネーションで楽しませてくれる。今年のは綺麗だけど、この通りにしてはちょっと地味な感じかな?

さて、いよいよ待ちに待ったHumble Chicken 3.0というミシュラン2つ星レストランでのディナー。13席しかないレストランなので、予約を取るのが本当に困難。予約が取れた時には飛び上がって喜んだもの。

ここには3年前にも来たことがあるけど、その時にはミシュランの星はなく、ビブ・グルマンだけだった。クリエイティブな焼き鳥がとても美味しかったなぁ。その後この店は高級志向のレストランへと進化して、ミシュランの1つ星を獲得した翌年には2つ星に昇格。日本生まれのシェフAngelo Sato氏が、どんな料理を出してくれるのか、本当に楽しみだった。


(一番右がシェフのAngelo Sato氏)
3年前にはアラカルトがあったけど、今では16コースのおまかせ料理のみ。値段の方は、2つ星にしてはちょっと高めかもしれない£235で、酒とワインのペアリングが£135からある。ここまで来たんだからフル体験しないわけにはいかないので、ペアリングもお願いすることにした。
結果、もう最高・最高・最高!! 独創的な料理の数々は、ただ奇をてらったものじゃなくて、ちゃんと実質のある素晴らしい味のものばかり。一つひとつメモを取っておけばよかったけど、今回は没入型で楽しもうと思っていたので、細かいところはあまり覚えていないというのが現実。素晴らしいペアリングのせいで、とてもいい気持になっていたし。なので、今回は写真だけでご紹介。

Sake: Junmai Bodaimoto ‘Evolution’, Tsuji Honten
Okayama, Japan (最初の6皿とペアリング)






Wine: ‘Benje’ Blanco, Envínate Wines
Tenerife, Spain 2023

Wine: ‘Alkemi’ Xinomavro, Markovitis Winery
Naoussa, Greece 2023


Sake: Te To Te, Tsuchida Sake Brewery
Gunma, Japan

Wine: ‘Au Quartier’ Marsannay, Gautheron D’Agnost
Burgundy, France 2023

Sake: Yuzu Awa, The Sparkling Sake Brewery
UK


Chocolate & Caviar
Passion Fruit
Black Sesame
最初から最後まで素晴らしい記憶しかないけど、特に覚えているのは5品目の“Old Town 97”という題目の料理。卵の殻の中のものをスプーンですくって食べると、エビの旨味を凝縮したものが口の中いっぱいに広がって、唸りながら踊りだしたくなるくらい感動した。この次の料理が「エビの残り」という題目なので、これはエビの頭あたりを使った料理だったんだろう。
またデザートの中の一品として、キャビアをチョコレートサバヨンの中にディップして食べるものがあった。そんなの絶対に合わないんじゃないかと思っていたけど、キャビアの塩味がチョコレートサバヨンの甘さを際立てていて、いわば塩キャラメルのような味になっている。僕は甘じょっぱいデザートは好みじゃないとはいえ、このコンビネーションには度肝を抜かれた。自由な発想、すごいなぁ。

料理も最高に楽しんだけど、キッチンでの仕事を目の前で見られるというのも大きなポイント。シェフは自分でも料理をしながら、常に客の進行状況に気を配っていて、スタッフたちに的確な指示を出していた。あれは本当にカッコいいと思った。
ここでのディナーは、今回の旅行の中では文句なしに1番だし、ここまで感動できた料理は6年前のGuy Savoyでのランチが最後かな? Humble Chicken 3.0がミシュラン2つ星というのは完全に納得できるし、近々3つ星を獲得するのは確実だと思う。星がもう1つ増えると値段はたぶん倍くらいになってしまうと思うので、まだ少しはお手軽な(とはいってもサービス料込で£425.50) 2つ星の時に来れてよかった。でも3つ星になった時には、また絶対に訪れたい店だな。
この旅行最後のディナーで、こんなに感動することができてよかった。やっぱり僕は、美味しいものが本当に心から好きだ。料理に感動できる時、全身で幸せを感じられる。こんな体験をさせてくれたHumble Chicken 3.0のスタッフの全員に、心から感謝したい。
宙に浮いたような幸せな気分のままホテルに戻り、荷造りは明日の朝にすることにして、すぐにベッドに入った。
今日の歩数: 20,034
