波の音【シロクマ文芸部】ショートショート
波の音を聞きながら、浮き輪でぷかぷか浮かんでいたら、いつの間にか眠ってしまった。
目が覚めると、私は深海の暗闇に漂っていた。
くっ、苦しい……
……くは、なかった。
え、死んじゃったの? 私。
大丈夫、息してる。
真っ暗だよ。怖い……
あ、灯りが見える。
ぎょっ! チョウチンアンコウ⁉︎
怖い顔……知らんぷりしとこう。
チョンチョン。
誰かが私の肩をつついた。
恐る恐る振り向いた瞬間、
「ぎゃー!」
「毎度叫ばれとるねん。悲しなるわ〜」
チョウチンアンコウは悲しそうにつぶやいた。
グロいのに意外と繊細なんだ。
「暗くてなんも見えへんやろ。わいが照らしたるで」
「あ、ありがとうございます」
「優しいですね、おじさん」
「アホんだれ! わいはおばはんや!」
「す、すみません」
――オスメスの違いなんて知らんわ……
その時、大きな銀色の影が横切った。
え?
大きな銀色の身体をくねくねとくねらせ、赤い立て髪を揺らす魚が泳いでいく。
「わあー! 竜宮の遣いじゃん。すごいー! 綺麗!」
うっとりしている私に、竜宮の遣いが
「つかまれ」とジェスチャーした。
いいの?
私はその身体につかまり、一緒に海の中を泳ぐ。
ああ、千と千尋みたいだ。
千尋もこんな感じだったのかな。
私、ジブリの世界の住人になったみたい。
顔がニヤけてくる。
「イタッ」
誰かに頬を叩かれた気がした。
すると、さっきまで私がつかまっていた竜宮の遣いが、じりじりと焼け始めた。
えっ? どういうこと?
ここは海の中だよ?
なのに、どうしてどんどん焼けていくの?
え……でも、なんかごめん。
いい匂いかも。
そう、海なのに、川で獲れるウナギを焼いているような匂い……
「いい加減に起きなさい!」
びっくりして目を開けると、家族が砂浜で七輪を囲み、ウナギを焼いていた。
え、なに? こっちが夢?
「何をさっきからニヤけてるの!あんたって子は!」
「さっさと食べなさいよ! 全く。海で寝るバカがおるかい!」
「お母さん、目の前におるって」
呆れ顔の姉。
「危うく溺れかけたんだよ、あんた」
「竜乃宮さんってライフセーバーの人が助けてくれたんだよ。気を失ってるだけだから大丈夫だって。助かって良かったね」
「あんたの好きなウナギでも焼いたら、匂いで目を覚ますんじゃないかって、お父さんが言ってね。やってみたら、大成功だったわ!」
父は得意げにグッジョブのポーズをした。
浜辺を歩く人たちに白い目で見られても、父も母も姉も、まったく気にしていなかった。
波の音だけは心地よかった。
あとは、ジュー。
小牧幸助さんのお題『波の音』から始まるnoteに参加させていただきました。
いつもありがとうございます😊
#シロクマ文芸部 #波の音
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