心理的安全性は「無理ゲー」
沢渡あまねです。今日は最近はやりの(?)「心理的安全性」について一席。
1.コーチング研修や「1on1」をただ繰り返してもダメ
「心理的安全性」
もはや組織の流行語のような様相を呈しているこの言葉。ぶっちゃけ食傷気味、「もういいよ」って人もいるのではないでしょうか。
健全な組織運営のために、心理的安全性が高い状態を保つことが重要。その点は理解しますし、僕も大事だと思っています。一方で……
・心理的安全性を連呼するだけ
・管理職(マネージャー)にコーチング研修を施しているから大丈夫
・「1on1」(これまた流行語の様相)を繰り返せばOK
そのような組織も。
断言します。
心理的安全性を、標語の連呼や研修や1on1だけで高めようとするのは「無理ゲー」です。
もっといえば、現場の管理職だけで、自分たち(中の人たち)だけで職場の心理的安全性が高まるなんて思わない方がいい。
考えてもみてください。
どんなに経営や人事が「心理的安全性」を強調し、管理職のコーチングスキル高めたり、1on1などを習慣化したりしても、やはり評価者/被評価者の関係性や社内のパワーバランス(強い部署、そうでない部署など)がある中では「言いにくい」「言えない」こともあるのですよ。
にんげんだもの。
これは、コーチングスキルの話や、当事者の言語化能力だけの話ではありません。
組織の必然です。
ともすれば、現場の管理職が「うまくいかない」と悩んでしまって気の毒(かわいそう)ですらあります。
2.真の心理的安全性には「サードプレイス」「外部のメンター」が不可欠
僕は(全国500以上の組織を見てきて)、確信しています。
組織には、社内や部内では言いにくい悩みや問題・課題を打ち明けられる「サードプレイス」(第三の場所)が絶対必要だと。
さらには、出来れば利害関係のない、外部のメンターがいた方が良いと。
社内の会議室などいつもの景色では、周りの目も気になってなかなか言いたいことが言えなかったり、「いつもの空気」「日常の景色」が災いしてオープンな心持ちになれなかったり、未来に目が向かなかったりもします。
私たちは良く顧客と、社外の合宿施設やコワーキングスペースなどで管理職合宿(日帰り)や業務検討会などをしますが、社内の会議室とは違う景色で、普段はしない会話や対話がうまれたり、未来に目が向いて組織の問題や課題をオープンに議論できたり、などポジティブな変化を目にしています。
サードプレイスがなぜ重要か。つまりはそういうことです。
組織やチームの中の人たちだけでは、言いにくいこともたくさんあります。
僕たちも社外メンターとしてさまざまな企業に寄り添っていますが、職位に関わらず(役員、本部長であっても)
「上司(またはメンバー)には言いにくいのですが……」
「会社の人には相談しにくいのですが……」
「〇〇部の人には言えないのですが……」
このような前置きをして、本音を語る人も少なくありません。
また、外部のメンターなど伴走してくれる第三者との対話を通じて、自分たちだけでは気づかない「意外な」強みや可能性に気づき、そこから確信やチャレンジが生まれるシーンも僕たちは頻繁に見てきています(そして、その瞬間がたまらなく嬉しいんだよね!)。
僕はそれでいい、そして、それはきわめて健全だと思っています。
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ちくわを食べながら和やかな雰囲気で1on1を行う、「ちく1on1」をやってみている管理職の方もいます。
3.「鎧を脱げる場」のデザインを
子どもだってそうでしょう。
親には言えないけれども、親友には打ち明けられる本音があったりする訳で、だからといって親がすべて悪いわけではないのです。
距離が近しいからこそ言いにくい、言えない、あるいは気づけない良さや可能性もたくさんあるのです。組織とは、人間社会とはそういうものです。
それにもかかわらず、コーチング研修や1on1の繰り返しだけで、かつ中の人たちだけで「心理的安全性」を高めようととするのは、やはり無理があります。すべてを押し付けられる管理職もかわいそう。
(ポジティブすぎる課長の下で、弱音を言えなくて苦しんでいるメンバーもいます。そのくだりは書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』『チームプレーの天才』でも綴りました)
普段と景色を変えることで、外部の人が話を聞いてくれることで、肩の力を抜き、悩みや葛藤そして意外な喜びをさらけだすことができる。
それでいいではないですか。
真に心理的安全性を高い環境を作るには、「鎧を脱げる場」のデザインこそが大事なのではないでしょうか。
そして鎧を脱げる場は、社内のいつもの景色、いつものメンバーだけでは創りにくいのです。
心理的安全性を組織の中だけで、管理職とメンバーとの関係性だけで無理に高めようとすると、コントロールしたい欲求が強すぎになり、ともすれば「見た目が明るい独裁国家、監視社会」のような状態に陥ります。
僕たちは東北工業大学の下總良則先生(ウサ先生)と共同(共創)で、『共創デザイン』なる考え方を研究し提唱しています。
組織や個が共創で成果を出すためのマネジメントや能力を体系化したものですが、その中で「場のデザイン」「動機のデザイン」を定義しています。
(詳しくは『チームプレーの天才』をお読みください)

人々が安心して鎧を脱げる、サードプレイスをデザインする。外部メンターの力も借りて心理的安全性を担保する。
それは「体験のデザイン」「動機のデザイン」および小項目で適宜している「場創り力」「場使い力」が当てはまります。
もちろん、コーチング能力の育成やリスぺクティング行動、ヘルプシーキング行動の醸成なども不可欠で、それらは「能力のデザイン」に該当します。
是非、共創デザインの考え方と照らし合わせて、真の心理的安全性の確保および組織としてよりよいパフォーマンスを発揮できるようにするための振り返りをしてみてください(「振り返りのデザイン」)。
手引書は以下です。また、ご質問、ご相談は直近では2026年4月17日(金)夜の品川・天王洲のトークライブで喜んでお受けします。
4.おしまいにズバリ
心理的安全性創出の本質は、「(管理職やリーダーが)自分たちだけでなんとかできる」「自分たちだけでうまくやれている」という慢心や傲りを捨てることに尽きる。僕はそう思います。
油断せず、慢心せず、普段とは景色を変えてよりよい組織、よりよいチームを目指していきましょう。
ひとりで抱えるべからず。
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