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「再発防止に努めます」の中身は何だ──盗撮教員・懲役8年判決から考える、本当に効く抑止とは

教員グループによる盗撮・児童への性加害事件で、横浜市立小の元教諭に懲役8年の判決が言い渡された(名古屋地裁、6月15日)。報道によれば、被告はグループの中心となって活動し、裁判官は「不同意わいせつの態様は悪質」「教員の立場を悪用し、児童からの信頼や未熟さに乗じた」と厳しく断じた。検察の求刑は懲役10年。これまでにグループの元教員ら7人が起訴され、すでに3人が実刑、2人が執行猶予付きの有罪となっている。

許しがたい事件です。ここで書きたいのは事件そのものへの論評ではなく、こうした不祥事のたびに必ず出てくる、あの決まり文句についてです。

「再発防止に取り組みます」――で、実際に何を?

学校でも企業でも、不祥事が起きると「再発防止に努めます」というコメントが出ます。聞くたびに、では実際のところ、何をやっているのだろうといつも思います。

想像するに、その中身の多くは、研修やセミナーのようなもので「道徳」を説き、「被害者の痛み」を訴える、という類いのものではないでしょうか。

そして率直に言えば、この手法はおそらくほとんど効果がないと私は考えています。

なぜ「道徳」「被害者の痛み」では止まらないのか

今回のような加害に及ぶ人間が、「人の痛みを知らないから」やっているとは限りません。むしろ、痛みを与えていることを分かったうえで、自分の欲求を優先している。そういう相手に「被害者はこんなに苦しんでいます」と語りかけても、響くとは思えません。道徳の説諭で行動が変わるなら、そもそも事件は起きていない。

研修で頭を下げ、神妙にうなずいて見せることはできます。けれど、それは「分かったふり」のスキルが上がるだけで、実際の抑止にはつながりにくい。これが、形ばかりの再発防止策に対する私の率直な見方です。

効くのは「合理性への訴え」―刑法でいう一般予防

では何が効くのか。

洗脳のような手法は、現在は非合法であり倫理的にも許されません。それを採れない以上、残る最も現実的で効果的な方法は、「割に合わない」という事実を、徹底して突きつけることだと思います。

今回の判決でいえば、懲役8年。グループのうちすでに3人が実刑です。これは、人生を棒に振る、という言葉では足りないほどの代償です。長期にわたって社会から隔離され、職も信用も家族も失う。刑務所の中でも、児童を狙った受刑者はとりわけ厳しい目を向けられやすく、出所後の人生も含めて、「普通の暮らし」のほぼすべてを失います。
なによりも、「あんたがた、あんがたが一番大好きな子どもを見ることもできないし、合法的な性的欲求を満たす手段も失うのだよ」。すこし、過激かもしれないが言わせてもらおう。

この「失うものの大きさ」を、感情ではなく冷徹な損得勘定として提示すること。刑法でいう、いわゆる一般予防です。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、人を踏みとどまらせるのは、究極的にはこの「割に合わなさ」の自覚、本人なりの合理性に訴える(ほかの人から見て不合理でも、本人から見て合理的であれば良い)だと思うのです。だとすれば、再発防止策も、道徳の朗読ではなく、こうした帰結を具体的に、繰り返し知らしめることに振り向けるべきではないか。

薬物予防にも同じことが言える

同じことは、薬物の予防教育にも当てはまると、私は弁護士になる前から思っていて、今も変わりません。

「ダメ。ゼッタイ。」というスローガンよりも、薬物がどれほど悲惨な末路をもたらすか、その現実を直視させる方がはるかに効くはずです。最も重い中毒患者の実際の姿――施錠され、目隠しもないトイレが床にあり、監視カメラ付きの独房で過ごすような、精神科病棟の現実――を見せること。きれいに整えられた啓発ポスターより、こうした「これが行き着く先だ」という映像の方が、よほど人を立ち止まらせると思います。

要するに、抑止の本質は、理想を説くことではなく、現実の帰結を突きつけることで本人なりの合理的行動に訴えかけることにある、というのが私の考えです。

もちろん、これがすべてではない

念のため付け加えると、この「合理性への訴え」一本で全部が解決するとは思っていません。

そもそも衝動性が強く、損得勘定が働かない加害者には、厳罰の周知だけでは届かないという指摘はあります。だからこそ、再犯リスクの高い者の治療的アプローチ(性加害者プログラムなど)や、そもそも子どもに加害できる立場を与えない仕組み(採用時のチェックや環境設計)も、並行して必要でしょう。「割に合わない」と知らしめる抑止と、それでも止まらない者への手当てとは、両輪です。

それでも――。形だけの「再発防止研修」に予算と時間を注ぐくらいなら、まず**「これをやれば人生が終わる」という現実を、正面から、繰り返し突きつける**方がよほど効く。今回の懲役8年という判決を見て、改めてそう思いました。
※なお、私は、将来、必ず、基本的人権の問題と倫理の問題をクリアする合法的な洗脳が実現すると信じていますが、これはまたの機会に。


本記事は、報道された刑事事件を題材に、刑事弁護に携わる筆者の私見を述べたものです。なお、性被害・薬物依存などのテーマはセンシティブな問題を含みます。当事者として悩みを抱えている方は、専門の相談窓口や医療機関のサポートにつながることをおすすめします。



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