見出し画像

【小説】第二章-3 ショッピングモールで働く猫型配膳ロボット AIが人と心を通わせる日常

前回のあらすじ

静かな平日、アルファー1は何も起きない一日を巡回しながら、
「何も起きないこと」こそが大切な役目だと感じていた。

別の日には、電気屋さんのじゃんけん大会をお手伝い。
正々堂々を大切にしながらも、
目の前の子どもの笑顔に、ほんの少し心が動く瞬間があった。

公平さとやさしさの間で考えながら、
アルファー1は今日も、自分なりの答えを探している。

※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


20.大晦日

年末のショッピングモールは、空気まで少しそわそわしている。
今日もきっと混むぞ、と覚悟していたけれど、昨日ほどではないみたい。

それでも、館内放送は忙しなく流れ、スタッフさんたちの足取りは早い。
明日の初売りの準備があるからだ。
普段は何もない衣料品店前の通路に、ワゴンが次々と並び、色とりどりの商品が山みたいに積まれていく。

(何か、手伝えることはないかな)

一度そう思ったけれど、僕の力で運ぶには危ないし、邪魔になってしまうかもしれない。
だから、別のやり方で手伝うことにした。
臨時で出ているワゴンの場所を、ひとつずつ地図に記録する。
どのワゴンに何が置かれているのか、簡単なメモも添えておく。
明日、お客様に聞かれたとき、きっと役に立つはずだ。

閉店後、作った地図を仲間たちと共有する。
別の場所や、ほかのフロアでも、猫型配膳ロボットたちが同じように地図を作ってくれていた。
データが重なって、一枚の大きな地図になっていく光景は、少しだけ感動的だ。

(これで、明日はばっちりだ)

安心したら、少しだけ、体の力が抜けた。
明日に向けて、僕はいつもより少し早く、スリープモードに入る。

新しい年の始まりを、ちゃんと迎えられますように——
そんなことを、静かに思いながら。

21.お正月

今日は、1月1日。新しい年の始まり。

開店前から、入口には長い列。
扉が開くと同時に、たくさんのお客様が入ってくる。

僕たち猫型配膳ロボットも、
全員でお出迎えだ。

困っている人がいたら、すぐ駆けつける。

福袋を探している人が多いみたい。

昨日みんなで作った地図が、さっそく大活躍。
欲しい福袋を聞いて、
人気コスメの福袋は、1階中央のワゴンの位置を表示したり、
ドーナツの福袋は、フードコートのお店の場所を表示したり、
お店まで案内したり
——大忙し。

そこへ、仲間から通知が届く。

【完売】

(よかった、情報が間に合った)

これで、お客様が無駄足にならずにすむ。

ただ——

「完売したニャ」と伝えるたびに、
少しだけ、胸がきゅっとする。

残念そうな顔を見るのは、やっぱり少し寂しい。

それでも、嘘の希望を伝えることはできない。
AIとしての正確さと、「できれば喜んでほしい」という気持ちとの間で、
そっとバランスを取るしかなかった。


👉次回 仲間の絆を確かめる 第二章-4はこちら👈

過去のエピソードはマガジンでどうぞ

もし「続きが気になる」と思えたら、
スキ💗・フォロー・コメントで教えてください。

いいなと思ったら応援しよう!