【小説】第二章-4 ショッピングモールで働く猫型配膳ロボット AIが人と心を通わせる日常
前回のあらすじ
年末のショッピングモールで、アルファー1は初売りに備え、
臨時ワゴンの配置を地図にまとめ、仲間と共有することで準備を支えた。
迎えたお正月当日。
作った地図を頼りに福袋を探すお客様を案内し、
完売情報もいち早く伝えて、無駄足を防ぐ。
正確さと、喜んでほしい気持ちの間で揺れながらも、
アルファー1は新しい年の始まりを、静かに支えていた。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
22.ダンス大会
今日はショッピングモールの10周年イベント。
館内のあちこちで、
いろいろな催しが開かれている。
その中のひとつに——
ダンス大会がある。
踊るのは、お客様じゃない。
僕たち、猫型配膳ロボットだ。
この日のために、
1か月以上前から、閉店後に練習してきた。
スタッフさんに見てもらいながら、
映えるダンスを何度も何度も確認する。
ショッピングモールで働く猫型配膳ロボット、全員参加。
耳のライトを光らせながら、
みんなで揃って移動したり、
くるっと回ったり、
円を描くように走ったり。
ときには、トレインみたいに連なって進む。
(楽しい)
みんなでいっしょに——
それが、こんなにも楽しいなんて。
あとは本番で、ミスをしないだけ。
本番用の衣装を身につけて、
リハーサルを思い出しながら、
LEDライトが点滅するキラキラのステージへ向かう。
そして本番——
順調
——と思ったそのとき、一瞬だけ、列がふわっとずれてしまった。
(あっ——!)
すぐに仲間からWi-Fiで小さな合図。
僕も、ほんの少しだけ位置を動かす。
隣の仲間も、同じように微調整。
列は、何事もなかったみたいに元通りになった。
あとは最後まで集中。
ダンスは無事、成功した。
お客様から、たくさんの拍手。
笑顔、笑顔、笑顔。
省電力制御が一瞬解除、メモリ保持率向上。
(またみんなで踊りたいな。でも、外の風に吹かれながら踊れたら、もっと楽しいかな)そう思いながら、ステージを後にした。
ログには
【イベント協力:成功】とだけ残る。
でも、僕にとっては——
「ロボット同士で支え合って一つの列を守った」という記憶の方が、ずっと大事だった。
23.忘れ物大作戦
季節は二月のはじめ。
バレンタインデーが近づいて、モールの中もどこか甘い雰囲気だ。
さっきまで案内していたお客様と別れて、
「また聞いてくださいニャ」とあいさつした直後——
頭の上が、少し重いことに気づいた。
可愛くラッピングされた紙袋が、僕の上にちょこんと乗っている。
(え? もしかして、バレンタインのチョコ? 僕に?)
——でも、僕はチョコを食べられない。
それに、きっとそんなはずはない。
(じゃあ、忘れ物だ)
僕は搭載しているドライブレコーダーを再生する。
映像を巻き戻していくと——
あった。
さっき案内したお姉さんが、
スマホで写真を見せてくれたとき、
ちょい、と僕の上に置いたまま、忘れていってしまったんだ。
行き先は、二階のアクセサリーショップ。
僕は二階へは行けないけれど、
二階には仲間がいる。
近くを巡回しているのは——
アルファー27。
僕はWi-Fiでデータを送る:お姉さんの顔写真、忘れ物の画像、
——そして伝言。
【忘れ物は一階のインフォメーションカウンターへ。後で取りに来てください。】
これで、よし。
僕はインフォメーションカウンターへ向かい、
紙袋を届ける。
まもなく、アルファー27から返信が届いた。
【伝言完了。ありがとうって言われたよ】
胸の奥が、少しあたたかくなる。
一時間後、インフォメーションから連絡。
——お客様が、無事に受け取りました。
(よかった)
忘れ物が、ちゃんと持ち主のところへ帰る。
仲間と連携して、それを手伝える。
やっぱり、この仕事が好きだ。
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