見出し画像

【ひとり旅日記 Day.4】初めての静岡 ~MOA美術館と佐野美術館~

ひとり旅4日目。
東京を離れ、静岡で2つの私立美術館を巡ります。



これまで縁のなかった静岡


実はわたし、これまで静岡県は新幹線で通過したことしかなかったため、今回が初上陸。

静岡県で訪れたい美術館の候補は二つありました。

MOA美術館秋野不矩美術館です。

MOA美術館は「一度は行ってみたい美術館」のような特集で何度となく目にしており、単純に美術館自体に興味があったから。

秋野不矩美術館は、わたしが秋野不矩(あきのふく|日本画家|1908-2001)が好きだからという理由。


1日で両方回るのは難しそうということで、悩んだ結果、アクセスの面でMOA美術館をとりました。(秋野不矩美術館は行くのが大変そうで…)


【熱海】MOA美術館

この日は土曜日ということもあり、こだまの自由席はかなり混んでいました。

絶景が楽しめることで有名なMOA美術館は、熱海駅からバスで走ること数分、坂をぐねぐねと上った先にあります。

エントランス


チケットを買って中に入ると、青く照らされたエスカレーターが、かなり先までずっと続いています。

カラフルなドームの天井は撮影スポット


エスカレーターを上りきると、いったん外に出て階段を上ります。

この日も暑かった…


この高台からの眺望こそが、MOA美術館が「一度は行ってみたい」と言われるゆえん。

階段から海を望む
えっと、海…?


本当なら水平線が見えるはずの映えスポットなのですが、この日は「どこが海でどこが空…?」という感じ。

お天気はいいのに、こんな日もあるんですね。

やっぱり見えない


こちらでは、デジタル北斎漫画&The Great Waveという企画展が開催されていました。(2026年7月10日〜9月1日)


『北斎漫画』を美術館でを観るのは久しぶり。
以前見た時にも、そして今回も感じたのが「本」を美術館で展示することの難しさです。

浮世絵なら壁に掛けて一堂に展示できるし、巻物でもある程度広げて展示ができます。
でも本は、見開いたページだけしか”本物”を展示できません。それ以外のページはニセモノ(パネル展示)にならざるをえない。

『北斎漫画』15巻はそれぞれ展示できるけれど、開かれたページ以外は全部拡大印刷されたパネルと解説を読むことになります。

前日に訪れた東洋文庫ミュージアムは、一つのテーマでたくさんの本を紹介するというやり方でこの問題をクリアしていましたが、北斎漫画に絞ってしまうとそれも難しい…

そんな中でも、《富岳三十六景》のこの絵に描かれたこの人物は、北斎漫画のこれと同じポーズですよ、と浮世絵作品と結びつけたりして工夫がこらされていました。


ただ、企画展のタイトルである”デジタル北斎漫画”は、「えっ、これだけ…?」とちょっと拍子抜けしてしまいました。(個人の感想です)


一番印象に残ったのは展示ケースかもしれない。
尋常じゃなく透明度の高いガラスが使われていて、映り込みもないので、本当に展示品をダイレクトに見ているような錯覚に陥ります。
感動的なぐらい見やすいけど、無意識に頭をぶつけそうになることもあり、ちょっとキケン(笑)


この日は夏休みかつ土曜日ということで家族連れも多く、館内は終始ワイワイにぎやかでした。



見終わった後は、バスの時間までカフェでひと休み。

アイスカフェラテ
相変わらず水平線は見えないけど
雲があるのでそこが空だとわかる


この、空と海があいまいに白く溶け合った感じも悪くないかも。


【三島】佐野美術館

熱海での宿泊は予算的にパス。
Geminiからは三島か沼津を提案され、近いとう理由で宿泊地に三島を選んだのですが、旅のプランを練る時に「都合よく三島駅の近くに美術館あったりなんてしないかな~」と調べところ、三島駅からバスで10分ほどのところに佐野美術館という私立美術館があるではありませんか!
これも何かのご縁と行ってみることにしました。

三島駅からバスで佐野美術館へ向かう途中、国道1号線という道路標識が見えて、
「わたし今、東海道を旅してるんだな」
と実感して嬉しくなりました。



佐野美術館は三島市出身の実業家・佐野隆一(1889-1977)が、長年収集してきた美術品を中心に創設された私立美術館。


こちらで開催されていたのは、さのびコレクション 旅する昔ばなし(2026年7月4日〜8月30日)


展示室は撮影不可でした。


第1展示室のテーマが「あこがれの地を旅する」

ご当地を描いた《三島宿風俗絵屏風》に始まり、屏風や山水図など名所の風景画が並ぶほか、当時の旅の必携品である印籠・矢立・煙草入などの小物も展示されていました。


一番きゅんときたのは、矢立(やたて)。

矢立は、筆と墨壺が一体化した携帯用筆記用具のこと。
それがまあ、ことごとくおしゃれ!

《提灯型矢立》《蝸牛蟻据文矢立》《魚びく矢立》《富士見西行象嵌矢立》《トンボに渦巻透彫矢立》《南蛮人矢立》…etc.

写真が無いのが残念ですが、これらの名前だけで、意匠に込められた遊び心が想像できるような気がしませんか?
美意識と遊び心と技巧が見事に融合していて、こういうのが「粋」というんだなと感心しました。



第2展示室は、親孝行と神仏のものがたり

メインとなる英一蝶《二十四孝図屏風》がとても興味深かった。

『二十四孝』とは、孝行が特に優れた人物24人を取り上げて後世の範とした中国の書物で、江戸時代には寺子屋の教材にも使われていたそう。
その書物を題材に、英一蝶が24人のそれぞれの孝行場面を屏風に描いています。


ただ、現代人の感覚で観てしまうと
「それはちょっと孝行というか…もっと別の方法考えようよ(ドン引き)」
となるものも混じっています。


特に印象に残ったのは呉猛という人物の故事。
蚊帳を買えないほどの貧しい暮らしで、夜寝る時に父親が蚊に刺されないように自分の着物を脱いでそれを着せ、自身は裸になって代わりに蚊に刺されまくったというお話。


前日の夜に読んでいた、三浦しおん『ぐるぐる♡博物館』の中に、風俗資料館と言う、日本で唯一のSM・フェティシズム専門図書館を訪ねる回があり、そこにたまたま蚊を題材にした絵が出て来たんですよ!

 次に出てきたのは、なんと伊藤晴雨の原画!何十枚もあって、色も塗られている。そのなかに、柱にくくりつけられた全裸の女性が、蚊にたかられて悶えている絵があった。
「地味にいやな責められかた!」

三浦しおん『ぐるぐる♡博物館』
実業之日本社


伊藤晴雨と言えば責め絵の大家。女性が縛られて吊るされている絵のイメージが強いのですが、蚊に責めさせるとは…

その印象が残った状態で二十四孝図を見たので、何だか妙にツボにはまるというか…
同じ「全裸で蚊に刺される」という行為が、片や孝行の範とされ、片やエロとフェティシズムの対象という対比。


故事の詳細がうろ覚えだったので、noteを書くにあたって調べてみると、呉猛は8歳の少年でした!

勝手に、老齢の父とその息子というイメージで絵を見ていたのですが、8歳の息子が「お父さん、蚊に刺されちゃうから僕の服着て」というのは子どもらしい発想で何ともいじらしい。
でも、父親何やってんだ!?って気持ちになります。

全裸になって蚊に刺されまくる8歳の我が子を見て「うちの子はなんて親孝行なんだ」と思いこそすれ、「かわいそうに、むしろおまえがわたしの服を着なさい」とはならないのが、「孝」を第一に置く中国古来の(儒教的な)倫理観なんですよね。

価値観と言うのは文化によっても違うし、時代によっても変化するもの。そういう考え方の変化という意味でもとても興味深い展示でした。


わたしが重度の“蚊引き寄せ体質“なためか、つい蚊にまつわる話を長々と書いてしまいましたが、第3展示室「源平のものがたり」の月岡芳年《月百姿》シリーズも美しくてすごくよかったです。


午前中に訪れたMOA美術館とは異なり、こちらはこじんまりした私立美術館でお客さんもわたしの他には数組。
静かで落ち着いた空間で、自分の興味のある展示を中心にじっくり見たり妄想を膨らませたりすることができて、いい時間を過ごせました。



帰りのバスの時間まで、お隣の庭園の写真を撮影。(入場無料)

あじさいも見納め
苔むした杭のところに
ピンポイントで日が差していた


この日もとにかく暑くて…
気力があれば、事前に調べていた本屋さんに行ったり、富士山の見えるスポットに行ったりしたかったのですが…う~ん、無理!

ホテルにチェックイン後は「もうどこにも行きたくない!」と生来の出不精ぶりを発揮し、夕食も近所のコンビニで買って部屋食にしました。
とことんグルメに縁のない旅です。


5日目は東海道をさらに西へ。
京都を経由して滋賀へ向かいます。

いいなと思ったら応援しよう!