【DOLLS】Ep.7 頬にグリッター
『唯、いい加減にしなよ。変な男と付き合うなら一人の方がマシだって』
『そんな適当に付き合ってて楽しい?』
『誰でもいいの?自分がすり減るだけだよ』
もう顔も思い出せない友達が言ってた。
友達はどっか行っちゃうし、家に帰っても誰もいないけど、スマホを開くと男の子たちが順番待ちしてる。
唯が一番って言ってくれる人が好き。
唯じゃなきゃ嫌って言ってくれる人が好き。
早く来て、いますぐ来てって言ってくれる人が好き。
嘘吐きでもいい。だって、本当のことなんて自分でも時々わからなくなる。
私は、一人ぼっちなんて嫌。
もう、嫌って言えるようになったの。
もう一度言うね。
一人ぼっちなんて、絶対に嫌。
渋谷・宮下パーク
17時23分
「レイ、ごめんね」
今日も唯が突然いなくなった。
今月に入って、もう何度目だ?
青いクリームソーダを1人で啜った。
こういう時、どうしたらいいのかわからない。
怒るのか?喧嘩したりする?
普通は、どうするんだろう。
中高は男子校だし、女の子の友達なんていたことがない。そもそも友達らしい友達自体、大和以外にいたことがない。
……情けないな、俺。
どうしたいんだろう。
笹塚
25時12分
「来ちゃった」
夜中に唯からの鬼電で起こされた。
寝起きにすごいハイテンションで捲し立てられ、気がついたら家のドアを叩かれてた。
「……急に何。寝てたんだけど」
俺は突然灯った部屋の明かりに、焦点が合わないまま顔を顰めた。
「まだ早いよ!飲み行こうレイ!」
「何言ってんの。俺寝るよ。明日バイトだし」
「やだやだレイ起きて!メイクしてあげるから!遊び行こ!」
俺が頭まで被った布団を、唯が引き剥がす。一瞬で寝惚けた頭に強烈な怒りが走った。
「……何なんだよ、遊ぼうとか帰るとか」
勝手に声が大きくなっていく。
「そっちの都合で振り回すなよ!疲れる!」
その時、初めて唯の顔を見た。
血の気の引いた顔。肩が小さく震えている。
「……ごめん」
それは、聞いたことがないくらい小さな声だった。
「嫌いにならないで」
唯は、指先まで震えていた。
「ごめん、嫌いにならないで。ごめん」
目を凝らすと、腕や肩に擦り傷と鮮やかな赤い痣があった。唯のメイクは所々剥げて滲み、シルバーのラメが頬にまで飛び散っていた。
「唯」
「ごめんね。ごめん……」
うわ言のように繰り返す唯の手を握った。
「唯、どうしたの」
大きく見開いたままの唯の目から涙が溢れる。
「ごめんね……」
唯は、それしか言わなかった。
翌朝シャワーを浴びて部屋に戻ると、唯は起きて窓の外を見てた。
俺に気づくと、口を開きかけて、止まった。
しばらく、沈黙が落ちる。
「……俺バイト行くけど、居たかったら居ていいから」
唯は何も言わなかった。
「5時に戻る。帰るなら鍵、ポストに入れといて」
俺は唯の顔を見ないまま部屋を出た。
笹塚
17時26分
「レイ、おかえり!」
ドアを開けると、いつもの唯がいた。
いつも通り緩く巻いた髪を纏めて、目元にはシルバーのラメが光っていた。
「ごめんね、昨日。飲み過ぎちゃって」
唯は俺の顔を見ないで言った。
「もうしないから」
そう言って、唯はバッグを掴んで立ち上がる。
「待って、唯。それじゃ、わかんない」
唯は黙ったままだ。
「……その痣、何」
「何でもない」
「男にやられたの」
「……レイに関係ない」
「関係あるよ」
唯の言葉を遮った。
「唯が楽しいなら良いよ。でも昨日みたいな顔するなら俺はいやだ」
唯の視線が、ほんの一瞬揺れた。
「……大袈裟だって、レイ。昨日は酔ってちょっと喧嘩しただけなの。ほんとごめん」
唯は、まだ目を合わせようとしなかった。
「行くね」
「どこに」
「……どこでもいいじゃん」
背中を向けた唯の腕を咄嗟に掴んだ。
「だから、良くないって言ってんだろ」
「離して!」
唯の高い声が響いた。
また、沈黙。
「レイ、唯の何なの」
落ちてきたその言葉に、俺は思わず口を閉ざした。
「……レイから連絡くれたことないじゃん」
震えた声で、唯が続ける。
「レイは唯じゃなくても良いんでしょ!ほっといて!」
唯が部屋を出て行った。
追いかけようとして、やめた。
何を言えばいいのかわからなかった。
スマホを開く。
ゆぃ×口 💖🎀💅>
レイ今日ひま?
ゆぃ×口 💖🎀💅>
これレイに似合いそう!
ゆぃ×口 💖🎀💅>
今から行っていい?
ゆぃ×口 💖🎀💅>
今日𝓞𝓐𝓚いくよね?👑🎧🩷
画面を上へ送る。
また唯。
その前も、唯。
ずっと、唯だった。
メッセージを打つ。
<R E I ❷⓿⓿⓿
唯、今どこ?
既読は、つかなかった。
