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漢方薬(五苓散)でグリンパティックシステム(脳の洗浄)が改善する??

前回の天気痛気象病の記事の中で、低気圧に伴う頭痛漢方薬五苓散が効果的であると書きました。

漢方薬には、病気を治す仕組み(メカニズム)が分からないものが多いのですが……
五苓散は珍しくメカニズムが解明している漢方薬です。

五苓散は気圧センサーである内耳の前庭(ぜんてい)のアクアポリン(水の通り道)を改善して、むくみを取ります。
また、脳のグリア細胞であるアストロサイトアクアポリン4を改善することで頭痛を緩和する可能性も指摘されています。
アストロサイトやアクアポリン4というと、前々回の記事で解説したグリンパティックシステムを構成する中心的存在です。

そうすると、五苓散がグリンパティックシステムを改善するのではないか、と私は個人的に考えるようになりました。
前回、天気痛・気象病の記事を書いたのは私自身が悩んでいて……
たまたま、梅雨の時期に入ったタイミングだったから、その記事を投稿したのです。
この偶然に私自身が驚いたこともあり、今回の記事を書きました。


1.グリンパティックシステムとは何か?

脳には長らくリンパ管が存在しないと考えられていました。
しかし、近年の研究によって、脳にも独自の老廃物排出システムが存在することが明らかになりました。

グリンパティックシステムは、脳内に蓄積した代謝老廃物を排出するための循環システムです。
分かりやすく言い換えると、脳のゴミを洗い流すシステムです。
2012年に報告され、脳科学の世界に大きな衝撃を与えました。
名前は「グリア細胞」と「リンパシステム」を組み合わせた造語です。

全身の臓器には老廃物を回収するリンパ管があります。
しかし、脳には長らくリンパ管が存在しないと考えられていたため、脳はどのように老廃物を処理しているのかが大きな謎でした。
グリンパティックシステムの発見によって、脳にも独自の排出システムが存在することが明らかになったのです。

グリンパティックシステムは次の流れで循環します。

  • 脳脊髄液動脈周囲腔から脳内へ流入

  • 脳間質液との交換

  • 老廃物回収

  • 静脈周囲腔から排出

この働きは覚醒時より睡眠時に活発になることが知られています。

2.グリンパティックシステムを支えるアクアポリン4

アクアポリン4水分子だけを選択的に通過させる膜タンパク質です。
アクアポリンとは「水の通り道」を意味し、その中でもアクアポリン4は脳で最も重要な水チャネルとして知られています。
特にアストロサイトの足突起に高密度で存在しており、血管周囲腔と脳組織の間で水分の移動を仲介しています。

グリンパティックシステムでは、脳脊髄液が脳組織内へ流入し、老廃物を回収して再び排出経路へ戻る必要があります。
この流体交換を効率的に行うために不可欠なのがアクアポリン4です。

動物実験では、アクアポリン4を欠損させたマウスではアミロイドβの排出能力が大きく低下することが示されています。
さらに、加齢アルツハイマー病では、アクアポリン4の配置異常が起こることも報告されています。
正常な脳では血管周囲に整然と並んでいるアクアポリン4が、老化によって散在すると流体循環の効率が低下し、老廃物の蓄積を招く可能性があります。

3.五苓散について

五苓散は次の5種類の生薬で構成されています。

  • 沢瀉(たくしゃ)

  • 猪苓(ちょれい)

  • 茯苓(ぶくりょう)

  • 白朮(びゃくじゅつ)

  • 桂皮(けいひ)

天気痛・気象病による頭痛だけでなく、浮腫(むくみ)、めまいなどに広く使用されている代表的な利水剤です。

① 沢瀉

オモダカ科植物の地下茎
水を排出する(中心的役割)

② 猪苓

キノコの菌核
利尿を補強する

③ 茯苓

キノコの菌核
利水と睡眠補助

④ 白朮

キク科植物の根茎
水を作らせない

⑤ 桂皮

シナモンの樹皮
水を動かす

五苓散は従来、「水を抜く薬」として考えられていました。
しかし、近年では単純な利尿薬ではなく、アクアポリンを調節することで水分分布を正常化する薬と考えられるようになっています。 

4.五苓散はグリンパティックシステムを改善するのか?

実は、五苓散はアクアポリン4を抑制すると研究報告されています。
そうすると、グリンパティックシステムをむしろ改悪するようにも考えられそうです。
実際にはそのような単純な仕組みではありません。

病的な状態ではアクアポリン4が過剰発現したり、本来の位置から乖離したりします。
近年の研究では、アクアポリン4の量だけでなく血管周囲のアストロサイトの足突起への配置が重要であることが分かっています。

例えば、脳浮腫ではアクアポリン4が異常増加します。
その結果、水分移動が乱れ、神経機能障害を引き起こします。
五苓散は異常なアクアポリン4発現を抑え、脳内の水分恒常性を回復させている可能性があります。

ただし、現時点(2026年6月)では「五苓散がグリンパティックシステムを改善する」と証明した研究は見当たりません。
グリンパティックシステムの研究がデンマーク中心で、漢方薬を使う研究をしていないかもしれません。
私がたまたま、グリンパティックシステムの記事と五苓散に触れた記事を続けて書いたから、偶然に思いついたとも言われそうです。

しかし、次の研究結果は報告されています。

  • 五苓散がアクアポリン4を調節する

  • アクアポリン4がグリンパティックシステムの中心となる水の通り道である

  • アクアポリン4の排水機能が良くなれば、グリンパティックシステムが改善する

「五苓散 → アクアポリン4調節 → 脳内水循環正常化 → グリンパティック機能改善」
という仮説は成立すると私は考えています。
近い将来、「五苓散がグリンパティックシステムを改善すると証明した研究が発表される」と私は予測しています。

(テイラックという名前ですが、中身は五苓散です)

本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません。
体調に不安がある場合は、医師等の専門家にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は6月29日(月)午前10時です。
アンチエイジングの新成分として先月発表されたS1PC(エスワンピーシー)の解説をしたいと考えています。
先月の研究発表ですので、最新情報になります。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。

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