三毛猫のような三色の毛を持つ犬。生物的には全く異なり、美しさには犠牲が!!
(アイキャッチ画像はマール+犬で検索したpixabayのフリー画像より引用)
前回は犬の血液型についての記事でした。
猫の血液型とはかなり異なりましたね。
今回も犬がテーマで、オスの三毛猫から連想ゲームのように書いてきましたので、三毛猫のような三色の毛を持つ犬の話をします。
1.三毛猫のような犬が存在する
犬の中にも、まるで三毛猫のように黒・茶・白の三色がまだらに混じる個体が存在します。
代表的なのがマールと呼ばれる毛色(模様)です。
ちなみにマールとは大理石のことで、大理石のまだら模様から付けられました。
マールという犬種があるのではありません。
犬種としてはボーダー・コリーに多いと言われています。
ダックスフンドにも多いので、たまに近所でも見かけますね。
マールにならない犬種(柴犬など)もあります。
しかし、三毛猫とマール犬は全く異なる現象です。
生物学的には全く異なる遺伝子と染色体によるメカニズムになります。
三毛猫は性染色体に依存した現象であるのに対し、犬のマールは全く別の遺伝子機構で生じます。
この違いを理解するには、まず犬の毛色の基本から見る必要があります。
2.犬の毛色を決める6つの遺伝子
犬の毛色は単一遺伝子ではなく、複数の遺伝子の組み合わせで決まります。
代表的なものは以下です。
① E遺伝子(Extension)
毛の色素の種類を決める
毛色の基本のメラニン色素を黒系か赤系か決定する。
② A遺伝子(Agouti)
模様を配置する
トライカラー(部位により黒・茶・白)
セーブル(毛先だけ黒)など
③ K遺伝子(K locus)
黒色素の強さを決める
④ B遺伝子(Brown)
黒色素の色合いを決める(茶色のようになる)
⑤ D遺伝子(Dilute)
色を薄める
黒色が薄まると灰色(薄い青色にも見える)
茶色が薄まるとイザベラ(薄茶色のこと)
⑥ S遺伝子(Spotting)
白い斑点を形成する
これらは色と模様の配置を作る設計図です。
しかし、ここに全く別の仕組みで作用する遺伝子があります。
3.M(マール)遺伝子とは何か?
別の遺伝子というのはマール遺伝子、略称でM遺伝子(Merle)です。
マール遺伝子は色素細胞(メラニン細胞・メラノサイト)を欠損させます。
マールは色を作るのではなく、色を壊す遺伝子といえるかもしれません。
具体的には、色素細胞の分布が不均一になることで、部分的に色が抜け、結果としてまだら模様になります。
実際には「黒と灰色の混合」「赤とクリーム色の混合」「ランダムなまだら」の組み合わせです。
つまり、マールは既存の毛色遺伝子に乱れを起こす遺伝子です。
なお、マール遺伝子は危険な遺伝子でもあります。
マール遺伝子の組み合わせはMmとMMが考えられますが、通常のマール(美しい斑)がMが1つのMmだけです。
Mが2つになると、ダブルマールという次のような重度の障害や特徴が発生します。
視覚障害(網膜の色素細胞の異常のため)
聴覚障害(内耳の色素細胞の異常のため)
全身ほぼ白色の毛
これは単なる毛色の問題ではなく、発生生物学的な異常です。
三毛猫の模様はX染色体上の色遺伝子とX染色体不活性化によって生まれます。
三毛猫はどの細胞でどのXが働くかがランダムで、結果としてモザイク模様になります。
マール犬は色素細胞そのものが欠損し、分布が不完全です。
見た目は似ていても、本質は全く異なります。
4.ダブルマールの問題は人為的選択によるもの
マール模様は非常に人気があります。
そのため、マール同士の交配が行われることがかつてありました。
しかし、マール同士の子犬は次の確率で生まれます。
25%:ダブルマール(重度障害)
50%:通常マール
25%:非マール(通常の毛色)
つまり、4匹に1匹の割合で生まれつき目も見えないし音も聞こえない子犬が誕生するという悲しい事実がありました。
現在ではマール同士で交配しません。
マールは犬の毛色遺伝子群の上に作用する色素細胞レベルの異常という特殊な存在です。
そして、重要な点は美しい模様と発生異常が表裏一体であることです。
三毛猫の模様は自然が作った偶然ですが、マールの極端な発現は人間が増幅したものです。
犬は猫と異なり、人間による選択で自然では生存適応できないような種類が多く存在しています。
今回は毛色の話でしたが、他にも人為選択による悲劇があります。
極端に体を小さくしたのがチワワ
極端に脚を短くしたのがダックスフンド
極端に顔を小さくしたのがフレンチブルドッグ
何世代、何十世代もの人為選択の結果、これらの犬種は固有の病気を抱えることになりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は4月23日(木)午前10時です。
チワワ・ダックスフンド・フレンチブルドッグについての記事です。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。
