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極小化したチワワ・短脚化したダックスフンド・短頭化したフレンチブルドッグ 自然選択ではなく人為選択

前回は三毛猫のような犬としてマール犬を紹介しました。

実は、猫の記事が2つでしたので、犬の記事も2つにする予定でした。
しかし、マール犬と同様に人為選択により極端化した犬種があるので、今回はそのことを書きます。

皆さんもご存じの犬種ですが、それはチワワダックスフンドフレンチブルドッグです。
私もチワワやダックスフンドは可愛いと思いますし、フレンチブルドッグを見ると吹き出しそうで……
そのような犬を見かけると、とても心がいやされます。しかし……


1.なぜ犬だけ形態がここまで変化するのか?

犬は同一種でありながら、非常に大きな形態差を示す動物です。
このような極端な多様性は、自然選択ではなく人為選択によって生じています。
(なお、本記事は人為選択の是非を問うものではありません)

人間が特定の見た目を好んで交配を繰り返した結果、特定の遺伝子変異が集積していきました。
その結果、発生過程や成長制御に関わる仕組みが変化し、通常の範囲を超えた形態が生まれています。

本記事では、極小化短肢化短頭化という3つの形態について説明します。
それぞれの遺伝的背景と生物学的な意味を見ていきます。

2.人為選択により生じた3つの形態

① 極小化:チワワにおける成長制御の変化

チワワのような極小犬種では、体の大きさは成長の仕組みによって決まります。

特に重要なのはIGF1という成長因子です。
IGF1=Insulin-like Growth Factor 1(インスリン様成長因子1)
成長ホルモン(GH)の作用を受けて分泌される全身性の成長促進因子です。
IGF1は骨や筋肉の細胞増殖を促進する働きを持っています。
これが強いほど体は大きく成長します。

しかし、チワワでは、このIGF1の働きが弱い傾向があります。
骨端軟骨の成長期間が短いのです。
つまり、骨の成長が早い段階で止まることで、体が小さくなります。
この現象は単なる小型化ではないのです。
発生の途中で成長が止まることを意味します。
そのため、成体でも子犬のような特徴が残ります。
このような特徴は、生物学的には幼形成熟と呼ばれる現象に近いものです。

② 短肢化:ダックスフンドにおける軟骨発生の変化

ダックスフンド短い脚は、骨の成長過程の変化によって生じています。

特に重要なのがFGF4という遺伝子です。
FGF4=Fibroblast Growth Factor 4(線維芽細胞増殖因子4)
四肢形成骨・軟骨の発達に関与します。
FGF4は本来、骨の発達を調整する役割を持っています。

しかし、ダックスフンドではこの遺伝子のレトロジーン(異常な逆転写コピー)が存在しています。
FGF4が2倍あるかのように働きが過剰になります。
過剰の影響により、軟骨細胞の分化が早まり増殖期間が短くなります。
その結果、骨が十分に伸びる前に成長が止まるのです。
これが脚が短くなる原因です。

この状態は、人間の軟骨異形成症と似た特徴を持っています。
また、この骨格は背骨にも負担をかけるため、椎間板ヘルニアのリスクが高くなります。

③ 短頭化:フレンチブルドッグにおける頭蓋形成の変化

フレンチブルドッグのような短頭種では、頭の形が大きく変化しています。
これは頭蓋骨の成長バランスが崩れているためです。

短頭化は1つの遺伝子では説明できず、複数遺伝子による多因子形質です。
通常、頭蓋骨は前後方向と横方向にバランスよく成長します。
しかし、短頭種では前後方向の成長が強く抑制されます。
その結果、顔が短く、横に広い形になります。
この変化には骨形成シグナルの時間的なズレが関係していると考えられています。

この構造的な変化により、鼻や喉の空間が狭くなります。
そのため、短頭種気道症候群が起こりやすくなります。
この状態では呼吸が苦しくなります。
さらに体温調節も難しくなります。
つまり短頭化は見た目の変化だけでなく、生理機能にも影響を与えています。

3.3つに共通する遺伝学的特徴

これら3つの形態は一見すると全く異なるように見えます。
しかし、生物学的には共通点があります。
いずれも成長や発生の過程が変化している点です。

チワワでは全身の成長が抑えられています
ダックスフンドでは骨の伸びが途中で止まります
フレンチブルドッグでは頭の成長バランスが崩れています

これらはすべて、細胞の増殖や分化のタイミングが変化した結果です。
つまり、発生の制御そのものが変わっていると言えます。

これらの特徴は自然に生まれたものではありません。
人間による選択交配によって作られました。
人間は特徴的な見た目を持つ個体を選び続けました。
そして、その特徴をより強める方向で交配を繰り返しました。
この過程で、極端な形態が徐々に固定されたのです。
その結果、自然界では不利な特徴でも維持されるようになりました。

自然選択では機能が重視されます。
しかし、人為選択では見た目が優先されます。
この違いが、形態と機能のズレを生み出しています。

犬の多様な姿は進化の結果であると同時に、人為的な設計の結果でもあります。
その背景にある遺伝学を理解することは、犬という動物をより深く理解することにつながると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は4月27日(月)午前10時です。
猫の記事2つの後に犬の記事を3つ書きましたので、もう1つ猫の記事を書きます。
福猫と呼ばれるのは、オスの三毛猫の他に金目銀目(金銀妖眼)という猫もいます。
片目が金色(黄色)で片目が銀色(青色)虹彩異色症(オッドアイ)の猫です。

少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。

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