体の構造が大きく転換(老化)する年齢は34歳・44歳・60歳・78歳【スタンフォード大学の研究】
(アイキャッチはpixabayのスタンフォード大学のフリー画像より引用)
前回の記事のタイトルは『脳の構造が大きく転換(老化)する年齢は9歳・32歳・66歳・83歳【ケンブリッジ大学の研究】』でした。
ケンブリッジ大学と同じように、脳だけでなく体全体でスタンフォード大学が老化研究をしています。
しかも、2019年と2024年の2回、研究報告しています。
2019年研究 学術誌『Nature Medicine』に掲載。一部のみで全文は会員登録必要です。(2026年5月現在)
2024年研究 学術誌『Nature Aging』に掲載。こちらは全文が英文で公開されています。(2026年5月現在)
ブラウザの日本語訳でも正直なところ難解すぎましたので、他のやさしく解説したサイトを参考に記事を書きました。
なお、このテーマは一度紹介しましたが、次回の記事でケンブリッジ大学とスタンフォード大学の研究の比較・統合記事を書くため、改めて執筆したものです。
最初に、体の構造転換(老化)は直線的でないことを簡単に述べます。続けて……
2019年の研究報告では、老化スピードが加速する年齢は34歳・60歳・78歳 → B
2024年の研究報告では、老化スピードが加速する年齢は44歳・60歳 → C
2つの研究は一見すると矛盾しているようですが、実は矛盾していないのです。
今回はその説明をしましょう。
A.体の構造転換(老化)は直線的でない
前回のケンブリッジ大学の研究で、脳の構造転換(老化)は直線的でないことを解説しました。
つまり、老化スピードは一定ではありません。
また、加齢とともに少しずつ早くなるのでもありません。
老化スピードが加速する年齢があるのです。
それは脳だけでなく体全体にもいえることです。
しかし、体の老化が加速する年齢は脳とは異なります。
それでは……最初は2019年の研究と2024年の研究を個別に説明しましょう。
それから研究結果が異なる理由を続けます。
最後に2つの研究を統合したらとうなるか試みました。
B.老化スピードは34歳・60歳・78歳で加速
2019年に『Nature Medicine』でスタンフォード大学が発表しました。
老化スピードが加速する転換点は3つです。
34歳
60歳
78歳
研究の対象者は18歳から95歳の4,263人です。
血液を採取して血漿に含まれるタンパク質を分析しました。
(血漿は、赤血球以外で、血液の約55%)
約3,000種類の血漿タンパク質を分析して、老化により変化するもの1,379種類を特定しましたが……
その内のいくつかが3つの年齢で大幅に老化しました。
その年齢が34歳・60歳・78歳です。
なぜ、この年齢なのかまでは突き止めてはいません。
C.老化スピードは44歳・60歳で加速
さらに同じスタンフォード大学が2024年には次の発表をしています。
老化スピードが加速する転換点は2つです。
44歳
60歳
これは前の研究を否定したのでしょうか?
それとも別のグループの発表なのでしょうか?
研究の対象者は25歳から75歳の108人です。
これは先ほどの研究の40分の1以下ですが、時間をかけて調査しています。(中央値1.7年、最長6.8年)
加齢に関わる体内分子の数など様々な対象を調べました。
44歳では心血管疾患や脂質代謝、アルコール代謝に関わる因子が大きく変動しました。
60歳では免疫調節や炭水化物の代謝、腎機能に関わる因子が大きく変動しました。
なお、2024年の研究は対象者の最高年齢が75歳のため、そもそも78歳の老化は確認できません。
D.なぜ、異なる加速年齢が研究発表されたのか?
同じスタンフォード大学の2つの研究は、互いに矛盾しているようです。
しかし、現実は対象・手法・測定対象(バイオマーカー)の違いから、異なる加速年齢を発見したのです。
2つの研究の内容を整理し、なぜ異なる結果が出てきたかを説明しましょう。
2019年の研究
血漿中の多数のタンパク質を調査
年齢18~95 歳の4,263人
「タンパク質の濃度が比較的一定で、 ある年齢で急に増減する」年齢を探し、変化が集中する点を分析
2024年の研究
RNA・タンパク質・ 代謝物・脂質・サイトカインなど多数の分子と微生物叢(マイクロバイオーシス)を含む多様な生体マーカーを直線的でなく段階的な変化として調査
年齢25~75歳の被験者108人で、複数のサンプルを長期間にわたり解析
異なる研究結果が出た理由について箇条書きしましょう。
1.測定対象の違い
2019年は血漿中のタンパク質。
2024年は、RNA・タンパク質・ 代謝物・脂質・サイトカイン、微生物叢など、多様なバイオマーカーを含む。
複数サンプルを追って時間的変化を観測。
2.年齢レンジとサンプル数・構造の違い
2019年は18~95歳で非常に広く、かつ横断的。
4,263人の年齢時点での状態を比較。2024年は被験者108人と少数だが、複数回サンプルを取得。
年齢範囲は25~75歳と狭い。
3.解析手法の違い
2019年ではタンパク質の急上昇や急下降を示す変化が集中する年齢を3ヶ所発見。
2024年では多数のマーカー(分子・微生物)の変動が最も集まる年齢を特定。
4.生物学的意味・感度の違い
2019年はタンパク質だけで、組織内部や微生物叢などは含まれない。変化を示す指標が限定。
2024年はより多様なマーカーを使うため、組織の代謝、遺伝子発現、微生物変動など含めたシステム全体の変化を捉える。
5.統計的パワー・サンプリングの限界
2024年の研究では78歳の変化を検出するデータが無い。
被験者の人種・背景、生活習慣・地理的要因などが異なれば、結果に違いが発生。
いずれにせよ2024年の研究は2019年の研究を否定したのではなく、補完する目的でされました。
E.体には4つの転換点が存在(2つの研究を統合すると)
それでは2つの研究をまとめてみるとどうなるかを調べましたので、説明しましょう。
その前に34歳と44歳の違いについてまとめます。
34歳は老化の予兆が検出できる年齢です。
生活介入の費用対効果が最大
可逆性が高い
運動・睡眠・栄養で修正可能
44歳は老化が生体システムとして確定する年齢です。
介入しないと老化が固定化
代謝・炎症制御が必要
予防医療の最後の分岐点
以上を踏まえたうえで、改めて4つの年齢について解説していきましょう。
1.第1転換点:34歳 タンパク質変動のピーク
a.どんな変化が起きるか?
血中の多くのタンパク質レベルに大きな変化の波が出る年齢。
この変動はゆっくり増えるのではなく、一部のタンパク質が上下して直線でなく段階的な変化を示す。
b.体内での現象
タンパク質レベルの急変化により、細胞間コミュニケーションやホルモンバランス、代謝の微妙なシグナルが変わる可能性。
見かけの老化(例えば外見や体力)よりも、分子レベルで体が変わり始めるきっかけが現れる段階。
c.生物学的な意味
老化が始まる兆候はこの時期に出やすいが、まだ体全体の制御系は比較的安定していると考えられます。
2.第2転換点:44歳 分子・微生物叢を含む急変期
a.どんな変化が起きるか?
多種類の分子のRNA・代謝物・脂質、加えて腸内・皮膚などの 微生物叢が大きく変動するポイントとして捉えられている。
b.体内での現象
代謝機能の変化(脂質代謝、カフェイン・アルコール処理能力などの分子変動)。
心血管関連分子の変化。
男性もこの変化は見られ、単に女性の更年期だけが原因ではない可能性も示されている。
c.生物学的な意味
老化制御システムの再プログラミングが起きる年齢という解釈が出ていて、 34歳で始まった変化が広範なシステムに及ぶ段階。
遺伝子発現や免疫系、代謝系などの連鎖変化が大きく出るポイントです。
3.第3転換点:60歳 老化関連機能と疾患リスクの顕在化
a.どんな変化が起きるか?
2024年の研究では、60歳付近でもう一つの大きな分子変動のピークが確認されています。
b.体内での現象
免疫調節機能の老化。
腎機能や糖質代謝にも関係する分子変動。
血管・心血管関連分子の変化により、高血圧、動脈硬化リスクなど、加齢関連疾患の発症リスクが急増する年齢。
c.生物学的な意味
この頃になると、分子・細胞レベルの老化が体全体の機能低下として表面化しやすい段階。
認知機能低下や慢性疾患のリスクが増えるタイミングでもあります。
4.第4転換点:78歳 血漿タンパク質変動の後期ピーク
a.どんな変化が起きるか?
2019年の研究で、再び、血漿中のタンパク質レベルに大きな変化の波が見られるポイントとして報告されています。
b.体内での現象
この時期は、単一の分子群ではなく、多くのタンパク質が加齢関連疾患に密接に関わるシグナルを示す時期です。
たとえば心血管・神経変性関連タンパク質。
c.生物学的な意味
78歳頃では、生理機能の低下が広範かつ顕著に進行。
免疫機能低下、筋量減少、慢性炎症、エネルギー代謝低下など、多くの老化の表現型(見た目や機能)が強く出る段階です。
本記事は健康と老化に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません。
体調に不安がある場合は、医師等の専門家にご相談ください。
今回のテーマの内2024年の研究は『ナショナル ジオグラフィック』のこちらにありますが、無料部分は途中までです。
『ナショナル ジオグラフィック』は科学だけでなく歴史・文化を含め興味深い記事が満載です。
世界で最も読まれている雑誌と言われており、気になる方はこちらからご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は6月1日(月)午前10時です。
今回のスタンフォード大学と前回のケンブリッジ大学の研究を比較して統合したテーマで書きます。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。
