AIを使うほど、全員に「コンサル的な力」が必要になる
生成AIの普及によって、これまで一部の専門家しか使えなかった高度な知的支援が、多くのビジネスパーソンに開放されようとしている。
情報を集める。文章を作る。データを分析する。複雑な内容を整理する。別の選択肢を考える。
これまで外部の専門家や社内の一部人材に頼らなければ難しかった仕事を、今では誰もがAIに依頼できるようになりつつある。
ただし、AIを使えるようになることは、単に便利なアシスタントを手に入れることではない。
むしろ私たちは、AIを使うことで、これまでコンサルタントが担ってきた役割の一部を、自分自身で担うことを求められるようになるのではないか。
コンサルタントは、答えを知っているから価値があるわけではない
企業がコンサルティング会社に高いFeeを払うのは、コンサルタントがあらゆる業界の答えを知っているからではない。
クライアントが抱えている曖昧な問題を整理し、考えるべき問いへ変換できるからである。
クライアントの言葉を受け取り、本当に解くべき問題を定める。複雑な問題を論点へ分解し、仮説を置き、必要な情報を集める。分析結果を統合し、意思決定に使える形で提示する。
場合によっては、クライアント自身がまだ言語化できていない問題を見つけ、当初の依頼とは異なる問いを提示することもある。
コンサルティングの価値は、単に分析作業を代行することではない。
曖昧な状況から、考えるべき問いと、答えにたどり着くまでのプロセスを設計することにある。
AIは、すべての人に配られる「待機するコンサル」である
生成AIは、ある意味で、すべてのビジネスパーソンに配られるコンサルタントに近い。
質問をすれば情報を整理し、仮説を出し、分析を行い、文章や資料のたたき台まで作ってくれる。これまで専門家に依頼していた知的作業の一部を、低いコストで何度でも頼むことができる。
ただし、AIは基本的に待機している。
目の前の仕事を観察し、自ら問題を見つけ、勝手にプロジェクトを立ち上げてくれるわけではない。何を考えるべきか、どこまで調べるべきか、どの品質を求めるのかは、人間がAIへ伝えなければならない。
AIは、問いに対しては驚くほど多くの仕事をしてくれる。
一方で、どの問いを投げかけるかは、依然として人間側に委ねられている。
コンサルティングの関係が反転する
これまでのコンサルティングでは、クライアントは問題や違和感を持ち込み、コンサルタントがそれを構造化していた。
クライアントが曖昧に話しても、優秀なコンサルタントが背景をくみ取り、質問を重ね、本当に考えるべき論点へ変換してくれた。
ある意味では、クライアントは受動的であっても、コンサルティングサービスを受けることができた。
しかし、AIとの関係では、この構造が反転する。
ビジネスパーソン自身が問題を言語化し、論点を分解し、AIに作業を依頼する。返ってきた結果を確認し、不足があれば追加の問いを投げ、最終的に複数の出力を統合して判断する。
これまでコンサルタントがクライアントに対して用いてきた技術を、今度はビジネスパーソンがAIに対して用いることになる。
AIによって誰もがコンサルティングを受けられるようになると同時に、誰もがコンサルタントのように仕事を進めることを求められる。
AIに仕事をさせるには、仕事そのものを設計しなければならない
AIを業務で使うために必要なのは、単に上手なプロンプトを書くことではない。
何を解決したいのかを定める。問題を検討可能な単位へ分ける。暫定的な仮説を置く。必要な情報を定義し、適切な情報源から集める。AIの回答を検証し、何が言えて、何が言えないのかを判断する。
さらに、どこまでの品質を求めるのか、どの期限までに何を完成させるのか、AIに何を任せ、人間がどこを確認するのかという期待値も管理しなければならない。
これは、マネージャーが若手のコンサルタントへ仕事を依頼し、途中でレビューを行い、必要に応じて再分析を求めるプロセスに近い。
AIは強力な頭脳ではあるが、その頭脳をどの方向へ動かすかは、人間が設計する必要がある。
専門職の技術だったものが、一般的な仕事の能力になる
これまで、問題設定、構造化、仮説思考、情報収集、分析、検証、期待値管理といった能力は、コンサルタントの専門技能として語られることが多かった。
もちろん、事業会社の中にも同じ能力を持つ人はいる。曖昧な依頼を整理し、先回りして必要な情報を集め、相手の期待を確認しながら、意思決定できる成果物へ仕上げる人である。
そうした人は、これまでも「仕事ができる人」として評価されてきた。
AI時代には、この能力がより直接的に求められるようになる。
AIを使えば、調査や分析、文章化そのものは大きく効率化できる。しかし、それらの作業をどの順番で行い、どの問いを深掘りし、どの出力を採用するかは、自分で決めなければならない。
AIが高度になるほど、人間は単純作業から解放される。
その一方で、人間の仕事は、問いを立て、知的作業を設計し、成果を評価することへと純化していく。
AIは、ビジネスパーソンを知的作業の指揮者にする
AIによって、すべてのビジネスパーソンが職業としてのコンサルタントになるわけではない。
企業から独立し、クライアントへ助言する仕事に就くわけでもない。
しかし、自分の仕事を問いに変え、問題を構造化し、AIという知的資源を動かし、その成果を意思決定へつなげるという意味では、すべてのビジネスパーソンがコンサルタントのように働くことを求められる。
AIは、人間に答えを渡すだけの存在ではない。
AIという頭脳を手にした人間を、その頭脳を動かす側へと押し出す存在でもある。
これまでコンサルタントがクライアントに対して使ってきた技術を、これからはクライアントだったすべてのビジネスパーソンが、AIに対して使うようになる。
AI時代とは、コンサルタントがいなくなる時代ではない。
コンサルティングという仕事の進め方が、すべてのビジネスパーソンへ広がっていく時代なのだと思う。
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コンサル的な仕事の入口になる『問いを立てること』を、もう少し根本から考えています。
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