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青葉坂46は、坂道の世代交代を変えるのか――「育ててから配属する」新戦略

青葉坂46という取り組みが発表された。

現時点で分かっていることはシンプルだ。合同オーディションを行い、合格者はすぐに乃木坂46、櫻坂46、日向坂46へ配属されるのではなく、「青葉坂46」として1年間活動する。その後、それぞれの坂道グループへ配属される。

言ってしまえば、これだけである。

それでも、この仕組みはかなり面白い。

普通に考えれば、各グループで新しい期を募集すればいい。あるいは、以前のように合同オーディションを実施して、そのまま各グループへ配属する方法もある。それなのに、今回はわざわざ「青葉坂46」という名前を与え、一年間の独立した活動期間まで用意した。

なぜ、こんな回り道をするのだろう。

そこには、坂道グループがこれまでの勝ち方を少しずつ変えようとしている姿が見える。

坂道は弱くなったのではなく、「今まで通り」では足りなくなった

まず前提として、坂道グループの競争力がなくなったわけではない。

乃木坂46はいまも大きなブランドを持っている。長年積み重ねてきた歴史があり、「乃木坂」という名前自体に市場でのプレゼンスがある。櫻坂、日向坂もプレゼンスが存在する。

一方で、アイドル市場全体を見れば、状況は明らかに変わった。

かつてのように坂道の楽曲が常に世の中の中心で流行しているわけではない。新しいアイドルグループが次々に登場し、SNSを起点に一気に認知を広げるグループも増えた。

乃木坂にはまだ大きなブランド資産がある。しかし、櫻坂46や日向坂46まで含めて考えれば、各グループ単体でマスの認知やブームを作り続けることは、以前より難しくなっているように見える。

だから、これは「坂道がもうダメだから変える」という話ではない。

むしろ、まだ競争力が残っている今のうちに、これまでとは違う勝ち方を作ろうとしている。

青葉坂46から感じるのは、そんな静かな危機感である。

「○期生募集」だけでは、新人の登場そのものがニュースになりにくい

従来の坂道では、それぞれのグループが新しい期を募集してきた。

乃木坂の6期生、櫻坂の4期生、日向坂の5期生、といった形である。

もちろん、それ自体はファンにとって大きなニュースだ。しかし坂道の外にいる人からすると、「また新しい期が入る」という出来事にも見える。

青葉坂はそこを変えた。

新しい期を入れるのではなく、

新しいグループが一年間だけ誕生する。

この違いだけで、ニュースの作り方が大きく変わる。

なぜ一年なのか。なぜその後に配属するのか。どんなメンバーが集まるのか。

通常の期別募集にはなかった問いが生まれる。

私がこの記事を書きながら運営側の狙いを考えているように、青葉坂という少し奇妙な仕組み自体が話題を生む。

これも、従来型の新人募集では得にくかった果実の一つだと思う。

下積みをなくすのではなく、下積みを表舞台にする

これまで坂道に加入した新人には、ある種の「下積み期間」が存在していた。

加入直後は期別活動が中心になる。期別曲があり、期別ライブがあり、少しずつ本体の活動へ入っていく。

ただ、その期間は少し中途半端でもある。

グループには所属している。しかし、グループ全体の中心にいるわけではない。

先輩がいて、すでに強いファンダムがあり、そこへ後輩として入っていく。

当然、新人は「乃木坂の新人」「櫻坂の新人」として見られる。最初から一人のアイドルとして立つというより、まずは先輩たちの中で後輩として振る舞うことになる。

青葉坂では、この順序が変わる。

新人だけで一つのグループを作る以上、最初から自分たちが主役になる。

自分で喋り、自分でパフォーマンスをし、自分で関係性を作り、自分自身の魅力でファンを獲得しなければならない。

つまり青葉坂は、

下積み期間を短くするというより、これまで裏側にあった成長期間そのものをコンテンツとして表に出す仕組み

なのかもしれない。

「後輩」になる前に、一人のアイドルとして立つ

この一年間には、もう一つ意味があるように思う。

従来の新人は、配属された瞬間から「後輩」になる。

先輩の横で緊張し、先輩から学び、少しずつグループへ馴染んでいく。それ自体は坂道の美しい成長物語でもある。

ただし、それは同時に、最初から組織の中で与えられた役割を背負うことでもある。

青葉坂には、少なくとも最初の一年間は、その役割がない。

新人しかいないからこそ、一人ひとりが「後輩としての自分」ではなく、一人のアイドルとしての自分を最初から表現することになる。

これは、いまのインフルエンサー的なファン形成とも相性がいい。

従来の坂道は、

グループを好きになる → 新人を見つける → 個人を好きになる

という順番が強かった。

青葉坂では、

個人を好きになる → 青葉坂を追う → その人と一緒に配属先のグループへ入っていく

という逆向きの導線も作れる。

グループへの帰属より先に、個人への帰属を作る。

これまでの坂道とは少し違う新人の育ち方になる可能性がある。

新人を育ててからファンを付けるのではなく、ファンを付けてから投入する

ここは青葉坂の大きな可能性だと思う。

これまで新人は、既存グループのファンに見つけてもらう必要があった。

すでに一推しがいる人が新人を見る。新人はまず二推し、三推しになる。その後、既存の一推しが卒業したり、本人が強烈な個性を見せたりすることで、一推しへ変わっていく。

つまり、新人は既存ファンダムの中で少しずつシェアを取っていく構造だった。

青葉坂なら、そこから外れられる。

「乃木坂の新人」ではなく、「青葉坂の○○」として最初から出会う。

青葉坂の中で一推しになったメンバーが、そのまま乃木坂、櫻坂、日向坂へ入ってくる。

そのとき、その人は新人でありながら、すでに自分のファンを持っている。

新人を育ててからファンを付けるのではなく、ファンを付けてから新人として投入する。

これが実現すれば、坂道の世代交代の形も変わるかもしれない。

世代交代を「運営が進めるもの」から「ファンが後押しするもの」へ

坂道の世代交代には、難しさがある。

グループの持続性を考えれば、新しい世代を前に出さなければならない。一方で、絶対的な人気を持つエースがいるなら、その人を簡単に下げることもできない。

だから新人をセンターやフロントに抜擢すると、

「まだ早い」
「運営に押されている」

という見方が生まれやすい。

未熟な新人を前に出し、その役割を背負わせることで成長させる。

これまでの坂道には、そういう世代交代の物語があった。

しかし青葉坂を経て、すでに人気やパフォーマンス経験を持ったメンバーが入ってくれば話は変わる。

「次世代だから前に出した」のではなく、

すでにファンから支持されているから前に出る。

世代交代を組織側の都合だけではなく、ファンの支持によって進めることができる。

これはかなり大きい。

絶対的エースへの依存が強いほど、その人が抜けた瞬間の落差も大きくなる。

だからこそ、配属前から競争力のある個人を育てておくことには意味がある。

青葉坂は、既存の序列を壊すほど強い新人を外で作り、その状態でグループへ投入する「劇薬」にもなり得る。

なぜ第四の坂ではなく、なぜ研修生でもないのか

ここまで考えると、「なぜ青葉坂という形なのか」も見えてくる。

まず、普通に第四の坂を作る方法もあった。

しかし今、新しい坂道グループを一つ増やすだけでは、以前ほど目新しくない。

さらに、乃木坂、櫻坂、日向坂という既存ブランドとのカニバリも起きる。

競争環境が激しくなる中で、同じモデルのグループをもう一つ増やすこと自体に、以前ほど大きな意味があるとは思えない。

では、合同オーディション後に「研修生」として一年間活動させればいいのか。

それも違う。

研修生という名前には、どうしても「配属までの待機期間」という意味が付く。

ファンにとっても、正式なブランドとして応援する対象になりにくい。

そして配属された瞬間、研修生という存在は役割を終える。

青葉坂46という正式な名前を与えることで、一年間そのものにブランド価値を持たせられる。

さらに、その価値を配属後まで残すこともできる。

恒久的な第四の坂ほど重くない。
研修生ほど一時的でもない。

この中間に青葉坂を置いたこと自体が、この仕組みの面白さなのだと思う。

配属は、終了ではなく第一章のクライマックスになる

青葉坂として一年間活動した後、それぞれが三つの坂へ配属される。

普通の研修生なら、ここで物語は終わる。

しかし青葉坂なら、配属そのものを一つのクライマックスにできる。

同じ場所から始まったメンバーが、三つの坂へ別れていく。

そこで青葉坂としての第一章が終わり、それぞれの第二章が始まる。

そして重要なのは、青葉坂1期生だったという過去は消えないことである。

ここから先は、現時点で発表されている施策ではない。

ただ、この制度には明確な拡張性がある。

青葉坂1期生という「横の関係」が残ったら

現在の坂道は、グループ間の独立性がかなり強い。

乃木坂、櫻坂、日向坂は同じ坂道グループではあるが、それぞれ別のブランド、別のファンダム、別の物語を持っている。

コラボレーションはあっても、基本的には「別のグループがたまに交わる」という形だ。

青葉坂を経由した世代が生まれると、そこに新しい関係ができる。

例えば将来、

乃木坂に配属された青葉坂1期生、櫻坂に配属された青葉坂1期生、日向坂に配属された青葉坂1期生が再び集まる。

そのとき、それは突然作られた合同ユニットではない。

かつて同じグループだったメンバーの再集合

になる。

この違いは大きい。

運営都合で坂道選抜を作れば企画感が出る。

しかし「青葉坂1期生がもう一度集まる」なら、それ自体が物語の続きになる。

将来グループ横断のシナジーを出したいなら、まず若い世代に共通の過去を持たせておく。

青葉坂には、そんな長期的なオプションも見える。

シングル活動とは別の「第二レーン」を作れるかもしれない

坂道には、もう一つ構造的な制約がある。

CDシングルを中心に活動する以上、選抜発表、楽曲制作、プロモーション、ミート&グリートなど、一つのシングル活動には一定の期間が必要になる。

簡単にリリースサイクルを速くすることはできない。

また、坂道ではユニット活動やソロ音楽活動を常設的な事業の柱にはしていない。

人気のあるメンバーがいても、センターやフロントに固定し続ければ世代交代が進まない。

つまり、スターがいても、その価値をグループ本体の中だけで最大限使い続けることには限界がある。

もし将来、「青葉坂1期生」という活動レーンが残ればどうなるだろう。

乃木坂のシングル活動と並行して、青葉坂1期生として楽曲を出す。ライブをする。横断企画を行う。

そうすれば、本体の活動周期を変えなくても、坂道全体として市場に投下するコンテンツ量を増やせる。

しかも「人気メンバーだけを集めた特別ユニット」ではない。

青葉坂同期だから集まる。

この理由付けがあることで、既存グループの序列との摩擦も小さくできる。

青葉坂は、将来的には坂道のコンテンツ供給量を増やす「第二レーン」になる可能性も持っている。

世代交代とスター活用を、ゼロサムにしない

これはメンバーのキャリアにも関係する。

一つの坂だけで活動していると、キャリアとともに役割が変わっていく。

新人だった人が中堅になり、ベテランになり、後輩へチャンスを渡す側になる。

グループの持続性を考えれば、それは当然である。

しかし、その役割の変化と本人のタレント価値は、必ずしも同じではない。

人気がある。もっと見たいファンがいる。まだまだスターとして前に立てる。

それでも、本体の中では後輩へ席を渡さなければならない。

ここに青葉坂という別の軸が残れば、

各坂では世代交代を進めながら、青葉坂では引き続き中心として活動する

ということもできる。

世代交代=人気メンバーの露出減

という関係を弱められる。

同時に、本人にとっても意味がある。

各坂では「新人」「中堅」「ベテラン」という時系列の役割を背負っていく。

しかし青葉坂1期生という場所では、何年経っても「同じ時代を一緒に始めたメンバーの一人」でいられる。

役割としての自分ではなく、自分たち自身の物語を続けられる。

タレントのキャリアを一本線ではなく、複線化する。

そんな可能性も青葉坂にはある。

青葉坂が本当に成功したかは、一年後にはまだ分からない

もちろん、ここまでの後半部分は将来の仮説である。

現時点で発表されているのは、一年間青葉坂として活動し、その後三つの坂へ配属されるという仕組みまでだ。

それでも、この制度の面白さは、最低限の果実と大きなアップサイドを同時に持っていることだと思う。

一年間活動すれば、少なくとも新人は実戦経験を積める。下積み期間をコンテンツ化できる。一定の認知やファンを持った状態で各坂へ入れる。

これだけでも意味はある。

しかし、本当の成功はその先にある。

一年後、

「青葉坂、良かったよね」
「青葉坂1期生をまた見たい」

とファンが思うかどうか。

そこで青葉坂というブランド自体に市場ニーズが残れば、初めて横断ユニット、合同ライブ、楽曲、再集合企画といった次の選択肢が生まれる。

新人育成で終われば、青葉坂は新しい育成方式だった。

しかし配属後にもブランドが残れば、それは坂道全体の新しい仕組みになる。

坂道は、まだ強いうちに次の勝ち方を探している

青葉坂46は、新しい坂道を一つ増やしたという話ではない。

これまで各グループ内部で行っていた新人育成を外に出し、一年間の独立ブランドとして見せる。

そこで個人の魅力とファンを育て、即戦力として各坂へ投入する。

さらに、その一年間で生まれた関係性やブランドを、将来的なグループ横断の資産として残すこともできる。

坂道グループは、まだ大きなブランドである。

だからこそ、競争力を失ってから変えるのではなく、まだ強いうちに今までの勝ち方から少しずつ離れようとしているのかもしれない。

青葉坂がどこまで成功するのかは、まだ分からない。

ただ少なくとも、この一年間限定の不思議なグループには、坂道がこれからどう戦おうとしているのかを考えるためのヒントが、かなり詰まっているように思う。

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