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日向坂は独立すべきか②|坂道とカワラボは、なぜ同じアイドル運営でもここまで違うのか

こちらは連作第2回目となります
是非第1回からご覧ください



複数のアイドルグループを、一つの会社で運営する。
それ自体は、珍しいことではない。

管理機能や制作体制を共通化できる。営業先や取引先との関係も共有できる。蓄積したノウハウを、新しいグループへ展開することもできる。

一つの法人が複数のグループを持つ「1法人Nグループ」の構造には、明確な合理性がある。

実際、KAWAII LAB.、いわゆるカワラボは、複数グループを一つのプロジェクトの中で展開しながら、大きな存在感を生み出している。

一方、櫻坂46と日向坂46も、同じSeed & Flower合同会社の中で運営されている。

同じ1法人Nグループでありながら、カワラボではグループ間の相乗効果が見えやすく、坂道グループでは相対比較や資源競合が起きやすいように感じられる。

この違いは、どこから生まれるのだろうか。

1法人Nグループであること自体に、正解も不正解もない

最初に確認しておきたいのは、1法人1グループと1法人Nグループのどちらかが、常に優れているわけではないということだ。

一つの会社が複数ブランドを運営することは、一般企業でもよくある。

アパレル企業が、価格帯や年齢層の異なる複数ブランドを展開する。食品会社が、用途や顧客層の違う商品ブランドを持つ。自動車会社が、同じ技術基盤を使いながら複数の車種やブランドを展開する。

複数ブランドを同じ会社に置くことで、開発、営業、管理、調達、流通などを共有しながら、それぞれ異なる顧客へ商品を届けることができる。

アイドル事業でも、基本的な考え方は変わらない。

複数のグループを運営することで、制作体制、ライブ運営、メディア営業、ファンクラブ、物販、スタッフの知見を共有できる。あるグループで得た成功体験を、別のグループへ生かすこともできる。

問題になるのは、同じ会社に何組いるかではない。

そのグループ同士が、どの程度似ているのか。顧客を奪い合うのか、それとも新しい顧客を連れてくるのか。そして、共通運営によって生まれた価値が、会社の内部だけでなく、グループやファンへ還元されているのか。

1法人Nグループが機能するかどうかは、この設計によって変わる。

坂道グループは、違って見えても事業構造が近い

乃木坂46、櫻坂46、日向坂46には、それぞれ明確なブランドの違いがある。

楽曲の雰囲気、衣装、パフォーマンス、番組内での振る舞い、ファンが抱く印象は異なる。各グループにしかない歴史や物語もある。

しかし、事業構造という視点で見ると、共通する部分は多い。

新しいメンバーを定期的に迎え、卒業したメンバーと入れ替わりながらグループを継続していく。若い女性を中心とした大人数のグループであり、シングル、ライブ、冠番組、ファンクラブ、ミート&グリートなどを主要な接点としている。

活動地域で明確に市場を分けているわけでもない。

かつての48グループには、東京、大阪、名古屋、福岡といった地域による区分があった。地域が違えば、地元メディアや劇場、顧客基盤もある程度分けられる。

坂道グループは、基本的に同じ全国市場で活動している。

ブランドの表現は違っていても、顧客層、商品構成、活動地域、メンバーの年齢帯、ファンが使う時間や予算は重なりやすい。

そのため、ファンから同じ軸で比較されやすい。

どちらの楽曲が話題になっているか。どちらのライブが盛り上がっているか。どちらのメンバーがテレビに出演しているか。どちらのグループが、いま運営から強く押されているように見えるか。

本来は異なる魅力を持つグループでも、事業構造が近いことで、同じ市場の中に並べられやすくなる。

継続型グループは、時間とともに差別化が難しくなる

坂道グループには、メンバーが卒業しても、新しい世代を迎えながらグループを続けていくという特徴がある。

これは長くブランドを存続させるうえで大きな強みである。

一方で、ブランドを差別化し続ける難しさも生む。

グループの立ち上げ時には、初期メンバーの個性や関係性、楽曲の方向性によって、明確な違いを作りやすい。

しかし、メンバーが入れ替わるたびに、グループを象徴していた人物や関係性も変化する。新しい世代が加入する際には、それぞれ似た年齢帯、似た芸能経験、似た成長過程を持つメンバーが集まりやすい。

その結果、長期的にはブランド同士の境界が近づく可能性がある。

もちろん、運営は楽曲や衣装、ライブ演出によって違いを作ろうとする。

それでも、メンバー構成や商品モデルが似ていれば、ファンやメディアから見た代替可能性は高まりやすい。

ある番組や広告に対して、「必ずこのグループでなければならない」という理由が弱くなると、同じ会社の別グループを提案する余地が生まれる。

会社としては柔軟な営業ができる。

しかし、一つのグループから見れば、自分たちが別のグループで置き換えられる可能性が高まる。

カワラボは、似ていることを隠していない

カワラボにも、グループ間の共通性はある。

「かわいい」という大きなテーマを掲げ、明るく色彩豊かなビジュアルを用い、SNSを通じて広がりやすい楽曲や振り付けを展開している。

さらに、複数グループでメンバーカラーの仕組みが共有されている。

赤、青、黄色、緑といった同じ色のメンバーが、それぞれのグループに存在する。

一見すると、グループ同士の違いを曖昧にする仕組みにも見える。

しかし私は、むしろ逆なのではないかと思う。

カワラボは、複数グループを同じプロジェクトの中で展開する以上、ある程度似て見えることは避けられないと最初から引き受けている。

共通性を隠そうとせず、「KAWAII LAB.」という上位ブランドやメンバーカラーによって、あえて分かりやすく見せている。

そのうえで、各グループのメンバー構成、年齢感、歩んできた経歴、楽曲の方向性、関係性、グループとしての物語を変えているように見える。

同じ色を担当するメンバーであっても、人物像や立ち位置は異なる。似た衣装や明るい世界観を持ちながらも、深く知るほどグループごとの違いが見えてくる。

つまりカワラボは、共通性を消すのではなく、共通性の上で差別化する設計を取っているのではないか。

共通性は、顧客獲得の装置になる

ライトな層にとって、最初から複数グループの細かな違いを理解することは難しい。

まずは「カワラボのグループ」「かわいい楽曲」「SNSでよく見るアイドル」といった大きなまとまりで認知される。

この段階では、グループ間の共通性が役に立つ。

あるグループの楽曲をきっかけにKAWAII LAB.という存在を知れば、別のグループの動画や楽曲にも触れやすくなる。メンバーカラーや共通企画があれば、知らないグループでも理解の入口を作りやすい。

横断的なライブ、SNS上での共演、楽曲交換、色別の企画、複数グループによるユニットは、この入口をさらに広げる。

あるグループへの関心が、そのまま上位ブランドへの関心へつながり、そこから別のグループへ移動していく。

ここで重要なのは、元々好きだったグループをやめて、別のグループへ乗り換える必要がないことだ。

SNSの投稿や楽曲を少し見るだけなら、大きな追加負担はない。最初に一つのグループを好きになった後も、別のグループを同時に楽しむことができる。

カワラボの横断施策は、ファンのスイッチングよりも、複数グループを同時に楽しむマルチホームを促しているように見える。

差別化は、ファンを定着させる装置になる

入口では、カワラボという共通ブランドが機能する。

しかし、ファンが深く関わるようになると、今度はグループごとの違いが重要になる。

メンバー同士の関係性、グループが結成された経緯、過去の経験、楽曲に込められた感情、ライブでの空気。

こうした違いが、それぞれのグループへのロイヤリティを作る。

言い換えると、カワラボでは、

共通性が顧客獲得の装置になり、差別化が顧客定着の装置になっている。

入口は共有しながら、深く入った後の物語は分けている。

これは、1法人Nグループの構造を、会社側の効率だけでなく、ファン側の体験価値へ変える設計とも言える。

一つのグループが注目されれば、KAWAII LAB.という上位ブランドの認知も高まる。上位ブランドの認知が高まれば、後から登場するグループの顧客獲得コストも下がる。

個別グループの成功が上位ブランドへ戻り、その上位ブランドが別のグループを押し上げる。

複数グループを持つことが、市場の奪い合いだけではなく、市場を広げる仕組みとして働いている。

坂道の横断施策は、同じ効果を生むのか

櫻坂46と日向坂46にも、共同イベントやグループを横断した施策は存在する。

過去には、欅坂46、櫻坂46、日向坂46の歴史的なつながりを背景にした合同イベントも行われてきた。

そのため、「外部から見えるシナジーがまったくない」と言うのは正確ではない。

ただし、その横断施策が、カワラボと同じような効果を生んでいるかは、別に考える必要がある。

カワラボでは、SNS上の短い動画や楽曲を入口に、追加負担の小さい形で別グループへ触れられる。複数グループを同時に楽しむことが比較的容易である。

一方、坂道グループのファン活動は、CD、ミート&グリート、ファンクラブ、ライブ、グッズなど、時間と金銭の負担が比較的大きい。

ファンが使える時間と予算は有限である。

そのため、別のグループに興味を持ったとき、それが純粋な追加消費になるとは限らない。元々応援していたグループへ使っていた時間や予算を、別のグループへ振り替える可能性がある。

つまり、坂道グループにおける横断送客は、マルチホームを生むだけでなく、顧客の再配分を引き起こす可能性もある。

同じ会社に複数グループがあることで、ファンの裾野が広がる一方、近いターゲット間で需要を奪い合う構造も生まれる。

横断施策が存在するかどうかではなく、その施策が事業モデルとどのように結びついているかが重要になる。

シナジーは、誰に帰属しているのか

1法人Nグループのメリットを考えるとき、「シナジーがあるか」だけでは足りない。

そのシナジーが、誰の利益になっているのかを考える必要がある。

管理、法務、会計、契約、制作などを共通化すれば、会社全体のコストは下がる。営業先との関係を共有すれば、法人として案件を維持しやすくなる。

これは、会社側にとって明確なメリットである。

一方、ファンにとってのメリットは、合同イベント、相互出演、楽曲交換、横断企画など、実際に体験できる形になって初めて見える。

個別グループにとってのメリットも、別グループの成功が自分たちの認知や顧客獲得へ戻ってくることで初めて成立する。

カワラボでは、会社内部の共通基盤が、上位ブランド、横断企画、相互送客を通じて、グループやファンへ還元されているように見える。

一方、櫻坂46と日向坂46では、会社内部のコストシナジーは残っていても、それがファンから見える追加価値へ十分に変換されているのかは分かりにくい。

それでも、同じ法人内で生まれる相対比較や優先順位の影響は、ファンから見えてしまう。

どちらのグループに大型の企画が与えられたか。どちらのメンバーが継続的にメディアへ起用されているか。どちらのグループへ、いま経営資源が集中しているように感じられるか。

会社にはシナジーが残るが、ファンにはシナジーが見えない。

それでも、会社内の優先順位だけはファンに見えてしまう。

ここに、現在の1法人Nグループ構造が抱える難しさがある。

選択肢の多さは、経営責任を薄めることがある

一つの会社が複数グループを持つことは、経営に多くの選択肢を与える。

あるグループで取りにくい案件を、別のグループへ提案できる。一方の成長が鈍化しても、もう一方の成長で会社全体の業績を支えることができる。

会社全体から見れば、これは合理的なリスク分散である。

しかし、個別グループから見ると、その選択肢の多さが問題になることもある。

一つのグループしか持たない会社であれば、そのグループが停滞したとき、経営はそのグループをどう立て直すかを考えるしかない。

複数グループを持つ会社では、別のグループへ資源を振り向けることもできる。

法人全体の業績を守るという意味では正しい。

一方で、停滞しているグループに対し、どこまで時間と人材と予算を投入して再生するのかという責任は、曖昧になりやすい。

経営の選択肢が増えることで、個別グループを救うための選択肢は、むしろ減ることがある。

1法人Nグループの価値は、外へ還元されて初めて成立する

坂道グループとカワラボの違いは、単に法人の数ではない。

カワラボは、グループ間の共通性を上位ブランドとして見せ、その共通性を新しい顧客の入口に使っている。同時に、グループごとの人物、楽曲、物語を分けることで、ファンの定着先も作っている。

さらに、横断企画によって、複数グループを同じ会社で運営する意味を、ファンが体験できる形にしている。

一方、坂道グループは、ブランドとしては明確に分かれているが、事業構造と顧客層が近い。そのため、横断施策が相互送客になるだけでなく、ファンの時間や予算の再配分を生みやすい。

会社内部では、共通運営による効率が残る。

しかし、その効率がファンや個別グループの価値へ戻らなければ、1法人Nグループのメリットは会社側に偏る。

そして、類似したグループを一つの法人に置くことで生まれる比較、代替、優先順位の影響だけが、個別ブランドへ残っていく。

1法人Nグループが機能するためには、裏側を共通化するだけでは足りない。
共通運営によって生まれた価値を、個別グループとファンへ還元する設計が必要である。

櫻坂46と日向坂46の現在の関係は、この条件を満たしているのだろうか。

もし、外部から見える相乗効果が限定的であり、会社内部のコストシナジーだけが残っているのであれば、日向坂46は同じ法人にいることのデメリットを、より強く引き受けている可能性がある。

では、日向坂46のブランド価値をもう一度高めるためには、何を変えるべきなのか。

法人を完全に分ける必要があるのか。社内で責任範囲を分離すれば足りるのか。それとも、現在の体制のままでも再成長は可能なのか。

次回は、日向坂46のスピンアウトを一つの選択肢として、経営責任とリソース配分をどのように設計し直すべきかを考えてみたい。

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<おすすめ記事①>
カワラボ側の強さを、SNS時代の運営モデルとしてもう少し詳しく見たい方はこちら。

<おすすめ記事②>
比較の先にある坂道側の新しい勝ち方まで見てみたい方はこちらもぜひ。

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