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内面と向き合い願いを開花させるマネーワーク

ソース原理をどう捉え、組織運営や個人の生き方に活かしていけば良いのか?
翻訳者の青野英明と嘉村賢州とともに、ソース原理を日本で広げる活動を進め、探求を続けている但馬が出版後の反響やティール組織との関係を問うシリーズの4回目。今回はマネーワークについて掘り下げます。
前回の記事はこちら。


ソース原理はマネーワークから導き出された

ーーここからはマネーワークについて掘り下げていきたいと思います。書籍「すべてはひとりから始まる」ではマネーワークに関する記述は少ないものの、ソース原理にとってマネーワークは非常に重要なパートだと理解しています。なぜマネーワークが大切なのか?について、まずはお二人におうかがいできればと思います。

青野:まず、2022年8月に著者のトム・ニクソンと過ごして1番驚いたのは、この書籍を書こうと思った理由をたずねた時に「マネーワークなんだ」と話していたことです。トム自身はマネーマークがきっかけで人生が大きく変わったことから、書籍をつくりはじめたものの、マネーワークを文章化するにあたっては非常に苦労したそうです。マネーワークに関する記述を何度も推敲し、最後に書き加えたくらいトムにとっては重要なパートだったということです。

ここでマネーワークの背景についてお話しましょう。ソース原理とマネーワークの提唱者であるピーターカーニックは、かつて不動産投資コンサルタントをしていました。仕事をする中で経済的に不合理な選択をするクライアントに出会い、疑問を抱いていたそうです。

条件の良い物件を紹介しているのに、あえて利回りの悪い物件を選択するクライアントがいました。当初はファイナンシャルリテラシーの問題かと思ったものの、過去に不動産投資で成功はしているし、経済学のこともわかっている。なぜこんな不合理な選択を?と疑問に思い、他のチームに聞いたところ、同じような現象が多く起こっているといいます。それがきっかけとなり、お金にまつわる調査を始めたそうです。

調査のスタート時は「どういう時にあなたはお金が欲しいと思いますか?」など、いろんな質問をなげかけたものの、 期待した答えには至らず、7年間ほどは雲を掴むような状態だったと言います。

ある日40人ほどを集めた調査の際に、ピーターは間違って「あなたにとってお金とはなんですか?」と質問しました。その場にいた40人から出てきたのは、「お金とは自由である」「お金とは権力だ」「お金とは友達関係を引き裂くもの」「お金は不自由だ」など、全く異なる回答だったのです。その時に「これこそがお金の本質だ」と直感したそうです。

ピーターはそれらの調査から「人はお金に自我を投影している」と考えました。
「投影」とはユング心理学で、人が自分の内側にあるイメージを外側の何かに映して認識することを言います。

例えば雨の日に気分が落ちるのは、雨に人の気分を盛り下げる成分が入ってるわけではありません。私たちは自分の内側にある、ネガティブなイメージを雨に投影しているだけ。それと同じことがお金にも起きているのだと、ピーターは気づいたのです。

「お金への投影」に気づいたことから生まれたのが、マネーワークです。「あなたにとってお金とはなんですか?」と問うことで、その人の現体験など、内側に秘められた姿があらわになっていくことがわかりました。

参考に「お金は友達関係を切り裂くものだ」と答えた人を例にしましょう。
彼は幼少期にお金が原因で、唯一無二の親友と喧嘩してしまいました。 親友と喧嘩したことが辛いので、彼の内にある自我は自分の心を守るため、「お金は人と人を切り裂く」とラベルを貼ります。「僕は悪くない、お金が悪いんだ」と、短絡的にお金に投影することで自分の心を安全圏に持っていくのです。同時に「お金は人間関係を切り裂く」という事例が、脳内に蓄積されていきます。

確証バイアスといって、人は自分の考えや仮説に合うような情報だけを集め、考えや仮説に合わない情報は無視しようとする傾向があります。お金がきっかけで友達同士が仲良くなったという真逆の経験もありましたが、人間はフラグが立ってないことは忘れていきます。 人と人を切り裂く事例が内側に刻まれ、それが現実としか思えなくなっていくのです。

こういった投影の果てに「現実としか思えなくなったもの」が、人間を不合理・不条理な行動へと駆り立てます。

ただ投影自体は悪いものではなく、私たちがものごとを認識するのに必要な行為です。 大切なのは、自分が投影をしていることに意識的になれるかどうか、です。

投影の存在を自分で自覚的になれている場合には、投影とそれにまつわる反応を選択できるようになります。

お金がきっかけで人間関係に亀裂が入った場合、「お金苦手なんです」という人もいれば、「お金を持っていればいじめられない」「 ビジネスではお金を稼ぐことが何より大事だ」という人もいます。こんな2人が出会うと、当然衝突しますよね。

この場合にお互いが「これは僕の投影なんだけどね」「そういう人も世の中にいるんですね。私は真逆だったんで」と言えたら、もめ事は起こりにくくなります。

他人とコラボレーションする場合だけでなく、 自分が自分の内側とどうコラボレーションするか?という場合にも、投影の扱い方はとても大切です。


なぜマネーなのか?

青野:「なぜお金なのですか?」という問いも非常に多いので、ここでお答えしておきますね。

まず世の中にはタブーといって、人前で口にするのがはばかられる事柄があります。お金とセクシャルは最たるもので、古今東西どこでもオープンに話すことがはばかられる事柄です。

タブーというのは吉本隆明さんの言葉でいうと良極性を持っている状態、つまりブレーキとアクセルを両方踏んでいる状態で、心身に大きなストレスがかかります。 人前でお金の話をしないこともストレスがかかるし、話すのもストレスがかかる。なぜなら、それは自我の投影だからです。

投影に意識的になり、タブーにしていることを軽やかに話せるようになると、人はアクセルとブレーキのどちらも状況に応じて意図的に使えるようになる。ビーターは投資の専門家だったことから、「お金」が入口となったということです。

嘉村:マネーワークは別の表現として「取り戻しワーク」とも言われます。

自己否定していた部分や自分の嫌いな部分、過去に封印したものなど、自分が今まで置き去りにしてきたものを取り戻し、「自分の全体性を取り戻すワーク」です。
マネーワークでは冒頭はお金を切り口にしていきますが、その投影に自覚的になるとお金を切り口にせずとも取り戻していくことができるようになります。

ワークでは幼い頃に抱いていた無敵感や好奇心の塊、全身全力での愛情表現など、子どものようなとらわれのない感覚を取り戻していきます。そうすることで、自分の情熱を大事にしつつ純粋にビジョンと繋がり、仲間と共鳴しながら仕事ができるようになっていく。

取り戻しのワークを行う際にはさまざまなアプローチがありますが、“お金から入る”ことも重要です。マネーワークを考案したピーター・カーニックは、究極的にはソース原理の詳細を知らなくとも、 取り戻しワークさえやっていれば、自然とクリエイティブ・フィールドがまわっていくよとさえ語っています。
マネーワークは非常に大事なパートだということをまず入り口で理解していただくと、その後も流れやすいのかなと思います。


ーーマネーワークでは“投影”に自覚的になりワークを通じて思い込みを外し、本来の自分を取り戻していくステップを進みます。投影は生身の弱い自分を守るために、本来の自分とは異なる強さを演じることによって生じます。しかしながらその“投影”は、自分をも束縛するものになりえます。

つまりマネーワークは、自分を守るために築いた「もう1人の自分=投影」を認知し、統合に向けて取り戻していくプロセスですが、このプロセスにおいて重要な点はなんでしょうか?

青野:まず自我というのは、必死に自分を守ろうとしてきたものです。

お金のせいにすることで、自分の安定や保身が保たれてきたわけです。だから「これは悪いものだ」と捉えることもまた、エゴに縛られている状態なんですね。

靴で例えるならば、これまでの歩みを様々なものから守ってきてくれたけど、もうこの靴は窮屈すぎて足が痛い。だから新しい靴に履き替えましょうと、守ってきてくれたものへの意味付けを変えていくのが「取り戻しワーク」です。

方法としては、まず声に出すこと。例えば「お金は人間関係を切り裂くものだ」という言葉であれば、 自分がその投影の主なので「私は人間関係を切り裂く」と声に出してみます。声に出すと、子どもの頃からのさまざまなエピソードが沸き上がってきます。その瞬間に思い出す人もいれば、じわじわっと思い出す人も。
体は言葉に反応して、さまざまな反応が起こり、感覚が取り戻されていきます。

ピーターは、「取り戻しのワークは玉ねぎの皮を剥くようなワークだよ」と言ってますね。

なぜ「取り戻し」か?というと、子どもの頃の自分を迎えに行ってあげる感覚なんですね。例えば、5歳の時に友達とお金の貸し借りで揉めてしまった。当時の自分はお金の整理をする代わりに、辛かった自分を心の奥底に閉じ込め鍵をかけてしまいます。蓋をして閉じ込めることによって、自我は心の痛みが2度と発生しないようにしていたのです。

取り戻しのワークを通して心の鍵をあけ、5歳から今に至るまで1人ぼっちで寂しい思いをしてきた、子どもの頃の自分を抱きしめてあげる。「5歳の時は確かに辛い思いをしたよね。でも、もう大丈夫だよ」と、意味付けを変えていくのが取り戻しです。ここでも声にだしていきます。英語で言うとreclaim。

その時に重要なのは、声に出して自分の体に効いていくという身体感覚です。喉が痛い、背中が重い、手足がしびれる、頭が締め付けられるなど、身体感覚にフォーカスしていくことが特に大切です。


マネーワークによって生じる変化

ーーピーター・カーニックは長きに渡ってソース原理に取り組んでいたものの、30年間ビジネスフィールドに広がらなかったそうですね。

青野:ピーターは1995年頃からずっとマネーワークに取り組んできました。マネーワークを受けに来ていた人の中でも、とりわけ創業者に共通の傾向が見られることがわかったのが2010年頃。その共通の傾向から導き出されたのがソース原理でした。

マネーワークを受けた人は、自分のエゴに依らずに純粋に、自分自身の願いにソーシングできるようになります。自身の投影を等身大にすることによって、ピュアに「感じる・考える・実行する」が可能になる。ピーターはこれをマネーワークを通じて目の当たりにしたのです。

「感じる・考える」の部分にフィルターをかけるのが、投影=プロジェクションです。マネーワークで投影を明らかにすることで、「感じる・考える」がクリアになり、自分の内側の世界/イメージをピュアに外側に描けるようになるのです。

マネーワークの受講生の中には自ら会社を創業し、ソースとして世界を変化させている人たちがいました。ソース原理の講座がスタートしたのが2013年頃から。2018年頃までピーターはマネーワークとソースワークを2本柱で動かしていました。

ピーターでも当初は「他人を変えてやろう」「どうすれば世の中に広がるんだろう」と「マネーワーク受けるべきだ」と思っていたそうです。 その頃はなかなか広がらなかったそうです。ある時から「マネーワークやソースワークが必要な次の世代の人たちに、自分がターゲットとなるように動けばいいんだ」と考えを変えたそうです。そこから世界に広がった感覚があるよ、とピーターは教えてくれました。


マネーワークへの抵抗感と難しさ

ーービジネスパーソンにマネーワークについて話す際、「お金を取り扱うからこその難しさ」があるかと思います。
本人はビジョンと繋がっているつもりだけれど、話を聞いていくと、どうやら自分のエゴがたち現れている。内省を促しても「もう十分内省しているから」「コーチつけてるから」と、抵抗感がある。こうした時のアプローチ法というか、マネーワークの重要さを伝える時にお二人が感じる障害について教えてください。

嘉村: 私も全く同じことを感じてますね。
自分が変わるつもりがなく、「問題の起こってるシステムに自分がいるかもしれない」という気づきがない人は、サポートが難しいなと思いますね。

立ち上げたきっかけや衝動、プロジェクトの背景にあるストーリー、当初の衝動からの進捗度合い、そして組織コンディション・・これらに耳を澄ませると、絶対に何かしら葛藤やうまくいってない部分が出てきます。

その時にジャッジするのではなく、純粋なソースの声に耳を傾けていく。すると当初の思いとは異なる、アウターゲームの罠にはまっていたことに気づきます。その時に「もしかしたら、マネーワークやソースワークをやり直す時期に来てるのかもしれませんね」と、そっと差し出すことはできるのかなと思います。

そうした場合ソース自身も、前ほど力を込められていないことは気づいているはずです。語り口などから周りにも伝わります。僕らはあまり操作的にはならず「何かあったらお手伝いします」くらいのスタンスで関わるしかないのかな、という感じがしますね。

「言ったものを、覚悟を持って走りきるんだ」といった、パワフルなモデルの成功例ではなく、愛を持って仕事をするという姿をたくさん作っていくのが大事かなと思います。

等身大で柔らかいリーダーが、適度に肩の力を抜いた状態で求心力と探究心を持ちながら、プロジェクトを展開している姿。こうした話題によって、ソースの好奇心が湧く可能性はあるので、周りから支援していくっていうのも1つかなと思いますね。


マネーワークが必要な人、必要ではない人

青野:マネーワークがその人に必要かどうかの判断基準は割とシンプルで、 「お金があってもなくても、愛してやまないことをやっているかどうか?」だと私は思っています。愛してやまないことをやり続けてる人には必ずしも必要ないと思います。

マネーワークを勧めたいのは、お金のためにやりたくないことをやってる人。マネーワークを受けた人は、お金というタガを外した上で「本当に自分が愛して止まないことは何か?」に気づき、実現できるのだと実感できます。

大切なのは「自分の人生で何をしたいのか?」。

すでに実現できている人には、マネーワークは今すぐには必要ないかなと思います。何かそこに引っ掛かりがあるのなら、マネワークを試してみればいい。私が尊敬してやまない吉福伸逸さんの言葉で「引っかかりは取っ掛かり」と。何か引っかかりがあるのなら、それは次への取っかかりになります。

文・構成: 高橋さやか/イメージ写真:熊倉聖子


【PROFILE】

嘉村 賢州(かむら・けんしゅう)

東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授。場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome’s vi代表理事。「未来の当たり前を今ここに」を合言葉に個人・集団・組織の可能性をひらく方法の研究開発・実践をおこなっている。解説書に『ティール組織』(英治出版)、共訳書に『自主経営組織のはじめ方』(英治出版)、共著書に『はじめてのファシリテーション』(昭和堂)などがある。


青野英明(あおの・ひであき)

青野税理士事務所代表 社会派税理士。
1978年茨城県生まれ。幼少より情熱的で人生の意味について考え続ける一風変わった子供だった。高校時代から徐々に人生の意味を見失い、勉強から逃げるように音楽活動にのめり込み、結果的に大学進学できず極貧生活を経験することとなる。バンドにメジャーデビュー話が舞い込むも、世の中の経済原理を知らない自分は、まるで猿回しの猿みたいだと愕然とする。まさにオカネの奴隷だったのだ。
この体験がキッカケとなり、「オカネと人の心の関係が人生の意味を開く鍵」だとの仮説とともに税理士として歩み始める事となる。その後、新宿区を拠点に企業顧問として支援活動を開始する。
2010年から地元茨城県へ戻り、自然界の流れと経営との融合に取り組むようになる。
自然界のデザインにそって自分らしい生き方を協創する事を支援するのが何よりの喜び。
個人と世界を会計でつなぎ自分らしさを取り戻す、超理性・実践智・流動系を重視した相互理解・メタ認知に熱量あり。
note(https://note.com/aonohideaki)も連載中。
2022年現在、ソース原理提唱者のピーター・カーニックに師事。ピーターが提唱しているMoney-WorkとSource-Workを日本語で日本に広げるべく活動中。


但馬武(たじま・たけし)
 

エンゲージメントコンサルタント。
fascinate株式会社代表取締役社長/一般社団法人RELEASE; 理事
パタゴニア日本支社にてダイレクトマーケティング部門統括を中心に19年勤務。2017年より地域活性化を展開するエーゼロ株式会社を経て、一般社団法人RELEASEに参画。;2018年に愛される企業「LOVABLE COMPANY」のためのブランド戦略を構築するfascinate株式会社を創業。ファンを作りファンと歩むブランドへの変容を顧客及びスタッフエンゲージメントの観点から組織づくり、事業構想、マーケティング戦略つくりに伴走型で支援している。

長野県立大学ソーシャルイノベーション創出センターアドバイザリー・メンバー
京都市ソーシャルイノベーション研究所 フェロー

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