【長編小説】 第10話:何百回も、同じ場所で 【転生したら、私が監修していた世界の神様でした】
転生したら、私が監修していた世界の神様でした
あらすじ
ゲームの監修者だった私が目を覚ますと、そこは自分が作り上げた世界だった。
しかも、私が世界を管理する神様?!
世界の運命は、私の『仕事』次第らしい。
第10話 何百回も、同じ場所で
「秘書さん」
「はい」
「昨日、私に何百回も繰り返してるって言ったよね」
「はい」
「具体的に、何をしてきたの?」
秘書は、しばらく黙っていた。
床に座り込んだままの姿勢で、板の光を見つめている。その横顔は、いつもの無表情とは違う、何かを堪えているような色をしていた。
「毎回、同じことをしてきました。
新しい神を迎える。仕事を説明する。999日を数える。
そして、静かに終わるのです」
淡々とした言葉だった。でも、その平坦さの中に、何百回分の重みが詰まっている気がした。
「新しい神って、私みたいな人が、何百回も来たってことだよね」
「はい。皆さん、最初は戸惑って、途中で慣れて、最後は諦めます」
「諦める?」
「999日という数字を、受け入れるということです。抗っても、変わらないと分かるので」
胸の奥が、ざわついた。
「じゃあ、みんな、崩壊を止められなかったってこと?」
「はい。誰も、止められませんでした」
秘書の声は、変わらず静かだった。でも、その静かさが、逆に痛かった。
「秘書さんは、それを何百回も見てきたんだよね」
「はい」
「毎回、悲しかった?」
秘書は、少し考えるような間を置いた。
「分かりません。悲しむという感覚も、繰り返すうちに、摩耗していった気がします」
「摩耗…か」
「最初の頃は、覚えています。誰かが消える瞬間、確かに、何か感じていました。でも、それが何十回、何百回と続くと」
言葉が、そこで止まった。
「続くと?」
「感じないふりをする方が、楽になりました」
その一言に、胸がぎゅっと締め付けられた。
楽になった、じゃなくて、楽になる方を選んだ。
そう言っているように聞こえた。
「秘書さん」
「はい」
「今回は、悲しい?」
秘書は、ゆっくりと顔を上げた。
その目に、今まで見たことのない色があった。
「分かりません。ただ……」
言葉を探すように、しばらく黙った。
「今回だけは、終わってほしくないと、なにか変わるのではないかと期待している自分がいます」
窓のない空間に、また微かな風の気配がした。
「それって」
「初めての感覚です。だから、戸惑っています」
初めて、という言葉。何百回も繰り返してきたはずの秘書が、初めてと言う。それ自体が、もう普通じゃなかった。
板の隅、数字が動いた。
987。
さっきよりも、少しだけ、動きが穏やかになっている気がした。
「秘書さん」
「はい」
「一緒に、止めよう」
言ってから、自分でも驚いた。何を根拠に、そんなことを言えるのか分からなかった。
でも、言葉にした瞬間、それが一番したいことだと分かった。
秘書は、長い間、何も言わなかった。
やがて、消え入りそうな声で、答えた。
「……はい」
その返事は、今まで気持ちを露わにしなかった彼女から発せられた、確かな意思表示だった。
あとがき
読んでくださりありがとうございます!
スキもありがとうございます!励みになってます💞
この物語も佳境に入って参りました…
この先どうなっていくんでしょうか??!!
あともう少し、最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
次の話↓
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