数値停滞と体制変更を越えて。挑戦から生まれた新機能『AIじぶん分析』の誕生秘話 / アウェアファイをつくる人々 vol.3
みなさん、こんにちは! 私たちは、最先端のAIテクノロジーと、科学的エビデンスに基づいた認知行動療法などを掛け合わせ、メンタルヘルスの新しい実践を模索しているスタートアップ、株式会社Awarefy(アウェアファイ)です。
「アウェアファイをつくる人々」連載の第三回でフォーカスをあてるのは、CTOの退任・事業責任者の交代が相次いだ7月以降、これまでにないスピードで新機能を連続リリースしたアプリ「アウェアファイ」チーム。その舞台裏で、新事業責任者の小田愛莉と共にチームの中核となってプロジェクトを推進したPdMの横井誠己と、プロダクトデザインリードの村上隆紀が、怒涛の2ヶ月を振り返ります。
2人を中心としたアプリチームがリリースした新機能「AIじぶん分析」については、こちらのプレスリリースをご覧ください。
参加者プロフィール
横井 誠己(Masaki Yokoi)
アウェアファイ プロダクト開発チーム所属
プロダクトマネージャー
株式会社オプトにてデータアナリストとして顧客データ分析・CRM戦略設計に従事。その後、ユーザーライク株式会社にてC向けお花のサブスク事業のグロースや法人事業の立ち上げを担当。2025年2月、AIメンタルパートナーアプリ「アウェアファイ」のプロダクトマネージャーとして入社。データ分析や顧客インタビューによる事業課題の特定と改善施策の企画・実行が得意で、プロダクトディスカバリーからデリバリーまで事業成長に必要なことに幅広く従事。
村上 隆紀(Ryuki Murakami)
アウェアファイ プロダクト開発チーム所属
プロダクトデザインリード
株式会社ビズリーチにて、「ビズリーチ・キャンパス」のデザイナーとして、iOS・Android・Webアプリ、LPなどのデザインを担当。
2022年6月、AIメンタルパートナーアプリ アウェアファイの1人目デザイナーとして入社。 Flutter ネイティブアプリ「アウェアファイ」のプロダクトデザインをはじめ、プロダクトの仮説設計からFlutter実装まで、デザイナーの枠を超えてプロダクト開発に従事。
シリーズAで直面した「数値の再現性」問題と、汎用型生成AIの脅威
ー アウェアファイの中でも、りゅーさん(村上)の入社は2022年と今いるチームメンバーの中でもかなり早く※ 、反対によこぴさん(横井)は2025年2月と入社から半年が過ぎたところですね。
※アウェアファイアプリのリリースが2020年
村上:これまでPdMは、現・事業責任者の小田さん1名だったので、2名になってどんな風に役割分担していくのだろうと見ていました。よこぴは入社直後、SQLを駆使してアプリの数値分析をされていたような?
横井:ですです。前職の経験をかってもらってアサインされたのですが、結果として最初にアプリの現状を定量的に把握できてよかったですね。その後、Chat GPTをはじめとする汎用生成AIの社会浸透などの外的環境も影響してでアプリの一部数値が停滞するようになり、これまで通りのロードマップではやばいぞ、となって。数カ月後に事業責任者もかわって、入社後は怒涛のように物事が動いていきました。
村上:これまで作ってきたアプリの機能たちは、それこそリリース時から有料プランに加入してくださっている超ロイヤルユーザーさんがいてくださったりと、届いてほしい人たちに一定届いている実感はありました。ただ、今年に入ってから、日常的に生成AIを使う人が大きく増えて、その価値が揺らぎました。
横井:アウェアファイの提供しているAIメンタルパートナーのファイさんは、チャットの返答時に、心理の専門家として正しいとされる振る舞いを取るようチューニングされています。開発チームに心理士(武井)がいることもあり、その傾聴と寄り添いのバランスの取れた振る舞いには自信がありました。ただ、2025年に入ってChat GPTのモデルがアップデートされたタイミングで、これまで味気なかった汎用生成AIの回答が、一気に情緒的に、ユーザーに寄り添うような返事をしてくるようになったんです。そのことによって、ファイさんに「ただ話を聞いてもらいたい」だけのユーザーさんが離れていってしまったんです。
武井のインタビューはこちらから
村上:アウェアファイには、AIとのチャット機能だけでなく、認知行動療法をはじめとした心理学に基づく多数のソリューションが搭載されています。それは、「話を聞いてもらう」ためだけではないアウェアファイの強みでした。ただ、その機能を使いこなそうとすると、ユーザーさん側に一定のリテラシーや労力が必要で、僕達も課題に感じていました。そのため、事前知識などがなくても心理学に基づくソリューションが受け取れるようにしたいと思い、2025年7月に一度、ファイさんの仕組みをアップデートしました。それによって、わざわざ自分で探しに行かなくても、ファイさんとのチャットの中で、おすすめのソリューションが提案されるようになったんです。
横井:ただ、それでもやはりチャットでの体験に依存していることに代わりはなく、どうしても表層の部分で汎用生成AIと比べられてしまうんですよね。「アウェアファイのユーザーさんが求めていること」かつ「汎用生成AIがやってこないこと」の交わる点を見つけださなければいけない。そこで、事業責任者の小田さんと、僕とりゅーさん、そして心理士の武井さんの4名で「UVP※ プロジェクト」を立ち上げたんです。アウェアファイの真のUVPを、あらためて自分たちの手で浮かび上がらせるぞという意思での命名です。そのプロジェクトの結果できたものが、今回リリースした機能「AIじぶん分析」シリーズです。
※UVP(Unique Value Proposition):顧客に対する独自の価値提案を指す言葉で、アウェアファイの今回のプロジェクトでは、「汎用生成AIでは代替できない、アウェアファイだけが提案できる顧客への価値提案」という意味で用いた
村上:まずは今提供できている価値と足りない価値を整理するために、既存ユーザーさんへのインタビューを徹底的に行いました。あの時はじめて、よこぴのすごさを体感した記憶があります。「数名に聞いたらいいよね」でなんとなく済ませるのではなく、アポイントの数とスピードが圧倒的だったんです。僕自身もチームも、高い熱量で手を抜かずにサービスづくりをしてきた自負はありましたが、よこぴの妥協しない姿勢を間近で見て驚かされました。
横井:そう思ってくれてたんですね!僕はユーザーさんの声と数値に徹底的に向き合って、ファクトを積み重ねてサービスづくりをしていく、ということを信念にしているので、嬉しいです。りゅーさんは「デザイナーを越境してPdMまでやっている人」という印象だったので、UVPプロジェクトが始まってがっつり一緒に働けてワクワクしました!

ー 二人はすっかり相棒というイメージが社内でも定着していますが、最初からそのタッグはうまくいきましたか?
村上:ひとくちにプロダクト開発といっても、会社やフェーズによってかなり仕事の進め方が違います。これまでアウェアファイは、PMFを目指してトップダウンでモノづくりをしてきた時のカルチャーが強く残っていました。僕はほぼ0→1に近い時からこのチームにいるので、客観的に状況を見られなくなっていた部分もありました。よこぴにはもどかしさを感じさせてしまった部分もあったのかなと思います。
横井:たしかに、入社してプロダクト開発のサイクルに入る中で、アウェアファイは「数値やファクトを集めて施策の確度を上げる」というよりも、どちらかというとクリエイティブに、一球入魂でプロダクトをつくっていくスタイルだなと感じました。
村上:たしかに、ビジョンドリブンで大きなリリースをドンと行うことが多かった。24年のリブランディング、ファイさん登場なんかはまさにそうですね。当時はそれで各種数値も大きく動いていたので、良くも悪くも成功体験になっていました。非連続的な成長を続けることはとても重要ですが、成功確率が読みにくいことが課題でした。
横井:会社としても、24年末にシリーズAの調達を終えて、経営からも事業数値の再現性が求められるようになってきていました。魂を込めた大型リリースはもちろん素晴らしいのですが、仕込みに数ヶ月単位で時間がかかる。しかも、もちろん当たるかは分からない。今のフェーズでそのような開発を行うのは、外した時の損失が大きすぎると思いました。場合によっては取り返しがつかなくなるかもしれない。
村上:そこで、UVPプロジェクトでは新たに事業責任者となった小田さん指揮のもと、「アウェアファイの真の価値」の仮説検証期間を9月までの2ヶ月と定めて、怒涛の開発とリリースを進めることになりました。
横井:さっきりゅーさんはヤキモキさせたのではと言ってくれましたが、ディスカッションがスムーズだったので本当に助かっていました。二人とも得意領域は違いますが、目的思考が強いという共通点があるんですよね。違和感があればすぐに集まって、すりあわせながら「新しい今のチームならではのやり方」を見つけていきました。

AIじぶん分析プロジェクト始動。汎用生成AIに真似できない、アウェアファイのサービス価値とはなにか?
ー UVPプロジェクトとしての様々な議論を経て 「AIを活用した自己理解ソリューション」というテーマが見えてきたんですよね。
村上:はい、そこから「じゃあ分析を出すならどんな種類の分析をしてもらえたら嬉しいだろう?」とブレストが始まって。他部署メンバーにもヒアリングしましたし、もう一度ユーザーインタビューも行いました。インタビューでは僕のつくった複数の分析画面のプロトタイプをお見せして、お金を払ってでも欲しいものをヒアリングしていきました。

横井:分析を出すといっても、一種類だけでは「自己理解を助けてもらえる」という価値が伝わりづらい可能性がありました。そのため、まずはユーザー自身の傾向やストレス・悩みの要因把握に繋がる情報を提供することを最小要件に設定し、「期限までに4種類の分析を出す」という目標を事業責任者の小田さんが設定してくれました。
村上:あとは、リリース目標を死守するための工夫として、エンジニアチームが裏側の設計を横展開しやすい分析種別かどうかも、チームでの意思決定の材料にしましたね。
横井:自分はファクトの積み上げを本当に大切にしているのですが、やはりスタートアップですから、様々なリソースの制約で妥協しなければいけないこともあります。でも、そんな時でも検証項目だけは絶対にブラしてはいけないと思っていて。今回は「分析の種類・数があること」が価値となるか確認したかったので、そこをぶらさず走り抜けられたことは良かったです!
ー エンジニアチームの開発スピードを担保するための工夫があったんですね。一方、その分デザイン面は工夫しないと4種類の分析が似たようなアウトプットに見えてしまいそうですが、苦労はありましたか?
村上:例えば「分析結果一覧」をリスト形式でただ出すだけだとドライで淡白に見えます。どうすればアプリに既存の世界観に沿いつつ、心地よく受け取っていただけるか。心理の専門家から見ても違和感がなく、ユーザーにも誤解を与えず、あわよくばSNSでのバイラルも狙えるような表現を探り続けました。特に最初の「強み分析」は何度も何度もデザインを作り直しましたが、納得できるものが出せず、振り返ってもかなりキツかったです。
横井:僕としては「最低限の検証ポイントは抑えられてるから出してもいいかな?」と思うようなデザインでも、デザイナーのりゅーさんや事業責任者の小田さんとしては納得できないクオリティだったということはありました。結果的に、小田さんが最初の予定リリース日をのばす、という意思決定をしてくれて、最終的に今の「70種類を超える強みアイテム」という表現が誕生しました。結果的に「強み分析」は、SNSでシェアされる数も一番多いので、粘っていただいて本当に良かったなと思いますね。

村上:そう言ってもらえてよかった!「強み分析」のリリース日は遅くなってしまったんですが、4種類の分析機能をすべて出し切る最終の目標スケジュールは守れたんですよ。初回にリソースを投下して横展可能な仕組みを作ることができたので、その後はとても効率的に回せたと思います。2ヶ月で4機能という、非常に短いサイクルでのデリバリーでしたが、PdM・デザイナー・エンジニアで密に連携できたからこそ乗り越えられたと感じました
ー そういえば、7月から全社として出社頻度も週2から週3に増やしましたね。在宅のメリットもたくさんありますが、週3の出社はどうでしたか?
横井:そうそう、そのタイミングで席替えもして、りゅーさんとは通路を挟んで席が隣になったんです。開発チームで集まってアイディアを話したあと、そのままりゅーさんが自席で作業してくれて、出来たらすぐに同じモニターを覗き込む、みたいなことを繰り返しましたよね。
村上:MTG後に論点を持ち帰って、家で数日かけて一人で作る…をやっているとどんどん遅くなっちゃう感覚があります。ざっと作って対面で即議論、を繰り返せることは大きな価値がありました。ついつい一人で作っていると、「自分がほしいもの」にアウトプットが寄ってしまうこともあるんです。でも物理的に隣にチームメイトがいると、客観的な目線や情報を提供してもらいやすくて、バランスを取ることができて助かっています。

怒涛の二ヶ月が終わり、想定外の成果も…!次の道は?
ー さて、「AIじぶん分析」リリースからしばらく立ちましたが、検証結果はどうでしたか?
横井:良い面とうまくいかなかった面がありましたね。
村上:うまくいかなかった面からいきましょう。(笑)
横井:さっきもお話したように、仮説は「分析の種類・数が一定数あること自体が、予期的な価値につながるのではないか」ということだったんですね。その成果は、アプリに新規流入してくださったユーザーさんが、有料プランのトライアル体験をどれだけ実施してくれるか、そしてそこから、どれだけ実際に有料プランを購入してくださるかの数値に現れてくると考えました。
村上:結果としては、残念ながらそのような数値は期待していたようには動かなかったんです。既存ユーザーさんからはとても喜んでいただけて、一度離脱したユーザーさんがまた戻ってきてくださったりと、嬉しい反応はたくさんあったのですが。ただ、予想していなかった大きな成果がもう一つあって、それは僕たちアプリ開発チームと一緒に動いているマーケティングチームの方で追ってくれている数値なんです。
横井:動画広告のクリエイティブを「AIじぶん分析」リリースにあわせてがっつり訴求を寄せてくれていたんですが、なんとその成果が通常の2倍以上という驚異的な数値を叩き出したみたいなんです。これまでは「セルフで認知行動療法ができる」訴求や「AIにお悩み相談」といった訴求がメインだったのですが、そこに第三の柱が登場したということです。既存ユーザーとは異なるペルソナ、ニーズを持つ顧客層を切り拓いたとも言い換えることができます。
村上:マーケチームで良い成果が出たことは素直に嬉しいです。やってよかった、と一安心しています。ただ、よこぴと僕としては、この2ヶ月でやりきれなかった「ファクトの積み上げによる仮説検証」で成果を出すことにリベンジしたいんです。そこにターゲットを絞った「AIじぶん分析」UXの磨き込みを今まさに仕込み中で、9月末か10月前半には順次リリースできるはずです。楽しみにしていてください!
ー スタートアップにいると、困難な局面にぶつかることはこれからも何度もあると思います。今回二人をはじめとして、チームで逃げずに難局を乗り越えられた理由はなんですか?
村上:え、なんでだろう…「逃げる」という選択肢がそもそも僕たちの中になかった気がするんだけど…。
横井:そもそも、メンタルヘルスというドメインに関心があり、使命感を持ってアウェアファイにいる人たちって、みんな真面目なんですよ!誠実で、真面目で、手を抜かない。
村上:考えたことなかった!でも確かに言われてみればそうですね。よこぴも真面目だし。そして、泥くさい。
横井:MTGが終わっても話し足りなくて、会議室を出たところで立って話し続けてたりしますよね。(笑) これからもその姿勢はかえずに、ユーザーさんが真に求めていたものを世に生み出し、困りごとを解決する対価をきちんといただけるようなサービスを作っていきたいです。
村上:これまで数多くの事業が挑戦しては撤退しているメンタルヘルス領域でサービスを提供し続けることは、もちろん簡単ではないのですが、どんなプロジェクトでもよこぴとなら内省しあいながら励まし合って進める確信があります。次も一緒に挑戦していきたいです!

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