【エッセイしりとり】イマココって、どこ?
Kindle出版のサポートをしていると、「イマココ」という言葉によく出会う。
コロナ前から、この言葉を語る人をたくさん見てきた。本もずいぶん読んだ。
「過去でも未来でもなく、今を感じよう」
そう言われるたびに、わたしはわからなくなる。
「イマココを感じよう」と思った瞬間、もう思考が始まっている。感じようとすること自体が、すでにイマココから離れているような気がする。
言葉にした瞬間、その「今」はもう過去だ。
ずっと考えているけれど、いまだにわからない。
でも、ひとつだけ、「もしかして、これなのかな」と思うことがある。
それは高校野球の現場だ。
わたしは長い子育て期間のうち、16年間、野球少年のお世話をしていた。練習にも試合にも付き添い、全国の球場へ何度も足を運んだ。
そこで繰り返し見てきたのは、「今この一瞬」にすべてが凝縮されているシーンだ。
バッターが構える。
キャッチャーがサインを出す。
投手が振りかぶり、指先からボールが離れる。
バットが白球を捉える。
カーン。
高く打ち上がった白いボールを、一塁手も二塁手も三塁手も、外野も審判も、ベンチも応援席も見上げている。
誰ひとり、よそ見をしていない。
何百もの視線が、空中を走るたったひとつの白球に吸い寄せられている。
そのときだけ、時間の流れが変わる。
ボールの縫い目まで見えそうなほど、ゆっくり回転している。
入るのか?
落ちるのか?
捕るのか?
ほんの数秒。
球場にいる全員が、同じものを見ている。
あの瞬間だけは、全員が同じ「今」にいる。
ボールを追いかけている野球少年たちは、イマココをつないで生きているように見えた。少なくとも、グラウンドの上では。
では、わたしはどうだ。
朝、湯気の立つコーヒーを手にしているのに、頭の中では午後の予定を考えている。
歩いているときは明日の仕事を考え、食事をしながら昨日のやり取りを思い返す。
体はちゃんと目の前の生活をしているのに、頭の中はずいぶん忙しい。
昨日へ戻ったかと思えば、まだ来てもいない明日へ先回りしている。
高校野球のあの数秒のように、目も耳も意識もひとつのものに集まる時間が、わたしの日常のどこにあるのだろう。
探してみるが、やっぱり、よくわからない。
イマココって、どこ?
もしかしたら、イマココは探すものではなく、夢中になっているうちに通り過ぎてしまうものなのかもしれない。
あとから振り返って、
「あれがそうだったのかな」
と気づくくらいのものなのかもしれない。
でも、それさえ、わたしにはわからない。
だから教えてほしい。
あなたが「イマココ」にいたと感じた瞬間はありますか?
あるいは、
イマココを見つける小さなヒントを持っていたら、ぜひ教えてください。
===編集後記===
「エッセイしりとり」に寄せて
まことさんからバトンを受け取りました。
人間になりたい→「い」
主催はマイキーさん
マイキーさん、素敵な企画をありがとうございます。普段、noteではKindleノウハウを発信しているので、自由なお題で書けることがとても楽しかったです。
書き終わったら、次にバトンを渡したい人を最大3人まで指名できるということで、仲良しのnote仲間につなぎます。
きみこ★人生ナビゲーターさん
レジェンド(有田匠佑)@生成AIでゲーム制作超入門絶賛発売中さん
レコ recorderさん
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