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40歳の身体は、20歳の身体の延長なのか。

40歳になる。
別に、何かが起きるわけではない。
前日の39歳364日と、翌日の40歳0日。
身体にとっては、ほとんど同じ一日だ。

朝起きた瞬間に筋肉が減るわけでもない。
急に疲れやすくなるわけでもない。
鏡の中の顔が変わるわけでもない。

それなのに、30代後半から40代になる頃、
身体について話す言葉が少し変わる。
「昔より疲れが抜けない」
「体重が戻りにくくなった」
「身体が硬くなった」
「無理がきかなくなった」

そして、最後にはこう言う。

「まあ、年齢だからね。」

でも、この「年齢」という言葉。
私たちは、便利に使いすぎているのかもしれない。

そもそも、「40歳」とは身体の何を表しているのか

40歳という数字が表しているのは、
生まれてから約40年が経った、ということだ。

それ以上でも、以下でもない。

もちろん年齢とともに、身体にはさまざまな変化が起こる。
血管。
筋肉。
骨。
皮膚。
脳。
代謝。
免疫。
どれも20歳の頃とまったく同じではない。

ただ、ここで重要なのは、それらが同じ速度で変わるわけではないということだ。
近年のaging researchでは、人間の「老化」を一つの数字だけで捉えるのではなく、脳、心血管、代謝、免疫、筋骨格、肺、腎臓など、身体のシステムごとに異なる変化として捉えようとする研究が進んでいる。

つまり、「この人は40歳だから、身体も40歳」
というほど、身体は単純ではない。

同じ人の中にも、いくつもの「年齢」がある

少し変な言い方をすると、一人の身体の中には、いくつもの時間が流れている。
心臓と、
筋肉と、
皮膚と、
脳と、
代謝。

それぞれが、まったく同じ速度で変化しているとは限らない。
2023年にNature Medicineで報告された研究では、脳を含む複数の身体システムについて、それぞれの生物学的な年齢差をモデル化している。

さらに近年は、血液中のDNAメチル化などから、複数の生理システムごとのagingを推定しようとする研究も出てきた。
もちろん、「あなたの心臓は47歳です」のような数字をそのまま絶対視する段階ではない。
生物学的年齢は、測定方法によって意味も変わる。

ただ、ここから見えてくる考え方は面白い。
身体は、一枚のカレンダーではない。

同じ40歳でも、同じ身体ではない

さらに、人と人を比べても違う。

有名なDunedin Studyでは、同じ年に生まれた人たちを長期間追跡し、心血管、代謝、腎機能、免疫、肺など複数の指標から、身体が変化していく速度を調べている。

全員、暦の上では同じ年齢だ。

それでも、身体の変化の進み方は同じではなかった。
45歳時点で、生物学的なagingが速く進んでいた人ほど、感覚・運動機能や認知などにも違いが見られた。

つまり、「何歳か」と「どんな身体か」は、同じ質問ではない。

40歳という数字だけでは、その人の身体のことを隅々までは分からない。

20歳の身体が、そのまま古くなるわけではない

「老化」と聞くと、
新品だったものが少しずつ劣化していく、そんなイメージを持ちやすい。
20歳を100とすれば、
30歳で95。
40歳で90。
50歳で80。
そんなふうに。

でも、生物は機械ではない。
身体は毎日、壊して、つくって、適応して、維持している。

筋肉は使われ方によって変わる。
血管も年齢とともに構造や機能が変化する。
皮膚も紫外線や生活環境の影響を受け続ける。
身体組成も変わる。

つまり、40歳の身体は、20歳の身体から20年分を引いたものではない。
20年間、環境と生活に適応し続けた結果として、今ここにある身体だ。

変わることと、衰えることは同じではない

ここは、分けて考えた方がいい。
年齢とともに変化する。
これは事実だ。

でも、変化することを、すべて「衰え」と呼ぶ必要はない。
たとえば筋肉。
加齢に伴う筋量や筋機能の変化は研究されているが、その進み方は年齢だけで一律に決まるものではない。
日本人を対象とした12年間の縦断研究でも、骨格筋量の加齢変化は年代や性別によって異なっていた。
運動。
食事。
睡眠。
病気。
仕事。
ストレス。

これまで身体をどう使ってきたか。

さまざまなものが、今の身体に重なっている。
年齢は変えられない。
でも、年齢と身体は、完全な同義語ではない。

だから、「若返る」という言葉にも少し違和感がある

ウェルネスや美容の世界では、「若返る」という言葉をよく見る。

気持ちは分かる。
でも、本当に目指したいのは、20歳の身体へ戻ることなのだろうか。
40歳には、40年間使ってきた身体がある。
仕事をして、
歩いて、
眠って、
食べて、
考えて、
緊張して、
回復してきた。

そこには20歳にはなかったものもある。
だから、身体を整えるということは、過去へ戻ることではなく、今ある身体を、今の年齢で使える状態にしていくこと。

なのかもしれない。

年齢を言い訳にすることと、年齢を無視すること

「もう40だから」
と全部を年齢のせいにする。
それも少し違う。

一方で、「年齢なんてただの数字だ」と言うのも、たぶん違う。
年齢は、ただの数字ではない。
身体は確実に時間の影響を受けている。
ただし、その数字だけで身体のすべてが決まるわけでもない。
この二つは、同時に成立する。
時間を無視しない。

でも、時間だけで自分を決めない。
そのくらいが、身体との付き合い方としてちょうどいい気がする。

鏡を見る。
顔には40という数字は書かれていない。
腕にも、
背中にも、
頭皮にも、
心臓にも書かれていない。

あるのは、今の状態だけだ。
身体は、年齢という数字ではなく、これまで受けてきた刺激と、それにどう適応してきたかを、少しずつ形にしている。

だから、40歳の身体は、20歳の身体の延長ではある。

でも、ただの延長ではない。
20年という時間の中で、
変わり、
適応し、
維持され、
今の形になった身体だ。

そしておそらく、これから先も同じだ。
50歳の身体は、40歳の身体から何かを失っただけのものではない。

今日から10年間、
どう使われ、
どう休み、
どう変わっていったか。

その結果として現れる。
年齢は、身体の答えではない。

身体について考え始めるための、一つの指標なのかもしれない。


30秒でわかる|40歳になると身体はどう変わる?

加齢に伴い、筋骨格、心血管、代謝、皮膚など身体のさまざまなシステムは変化していきます。ただし、その変化は40歳を境に一斉に起こるわけではありません。
さらに、同じ年齢の人でも生物学的な変化の進み方には個人差があり、一人の中でも各身体システムが同じ速度で変化するとは限らないことが研究されています。
40歳という年齢だけで、身体の状態が決まるわけではありません。


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「疲れてる?」
そう聞かれた。
自分では、それほど疲れていない。
では僕たちは、人の顔のどこを見て「疲れている」と判断しているのだろう。
次は、顔と身体のあいだを考えます。


REFERENCES

・Belsky DW, et al. Disparities in the pace of biological aging among midlife adults of the same chronological age have implications for future frailty risk and policy. Nature Aging. 2021.
・Tian YE, et al. Heterogeneous aging across multiple organ systems and prediction of chronic disease and mortality. Nature Medicine. 2023;29:1221–1231.
・Wen J, et al. The genetic architecture of biological age in nine human organ systems. Nature Aging. 2024;4:1290–1307.
・Zalesky A, Wen J, Tian YE. From whole-body to organ-specific biological age clocks. Nature Aging. 2026;6:961–969.
・Shimokata H, et al. Age-related changes in skeletal muscle mass among community-dwelling Japanese: a 12-year longitudinal study. Geriatr Gerontol Int. PMID: 24450565.


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。身体機能の急な変化や継続する症状などがある場合は、医療機関へご相談ください。
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