#08|寄り添い型支援と正論型支援
支援には、それぞれ支援者の「型」がある。
私は、相手の話をまず聞く。
たとえ「それは違うんじゃないか」と思っても、いったん受け止める。
相手を否定せず、その人がどう感じているのかを考える。
それが、私の考える「寄り添い型支援」だ。
一方で、私の先輩は少し違う。
事実は事実として、淡々と伝える。
「それは違う」と思ったら、はっきり伝える。
いわば「正論型支援」。
私とは、かなり違う。
正直、このやり方はあまり好きではない。
相談に来る人は、何かしらの不安を抱えている。
そんな人に対して、
「それは事実ではありません」
と、はっきり伝える。
それでスッキリする人もいるだろう。
でも、私はもう少し別の伝え方があってもいいんじゃないかと思っている。
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「それは妄想です」
ある日、娘の精神疾患について相談に来た高齢の父親がいた。
その方は私とも関わりがあり、娘さんは先輩が関わっていたため、2人で話を聞くことになった。
娘さんの状態は、私が想像していた以上に悪かった。
「誰かに見られている」
「盗聴されている」
「アメリカの大統領から仕事を任されている」
そんな話が次々と出てきた。
もちろん、精神疾患による妄想のようなものだと思う。
ただ、父親も少し引っ張られているようだった。
大部分は妄想だと思っている。
でも、全部がそうだとは思いたくない。
そんな話しぶりだった。
私は、父親が娘さんの状態をある程度理解しているのであれば、すべてを否定する必要はないと思っていた。
まずは父親の気持ちを聞きながら、どうやって医療につなげていくかを考えていけばいい。
そう思っていた。
しかし、先輩は違った。
話に出てきた事柄をひとつひとつ、
「それは現実にはあり得ないことです」
と説明していった。
そして、今聞いた話はすべて娘さんの妄想だと言い切った。
すると、父親の表情が変わった。
「そうかもしれないけど、妄想だっていう証拠はあるの?」
私はすかさず話に入った。
「そんな証拠があるわけではありません。娘さんは本気でそう思って行動しているのであれば、それ自体を否定するつもりはありません。ただ、お父さんも理解されているように、現実的には考えにくい言動もあります。精神疾患が疑われるので、一度精神科にかかってもらうのがいいと思います。どうやって本人を医療につなげていくか、一緒に考えさせてください」
少し強引に話を進めた。
その後は先輩も空気を読んだのか、話し合いはスムーズに終わった。
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どちらが正しいのか
その後も、その父親とは関わりが続いた。
そして、相談はいつも私のところに来るようになった。
だからといって、先輩のやり方が間違っていたとは思わない。
事実をはっきり伝えてもらったほうが、気持ちが整理できる人もいる。
曖昧にされるより、
「それは違います」
と言ってもらったほうがいい人だっている。
ただ、私自身はやっぱり、寄り添うことを大切にしたい。
保健師という仕事もそうだし、対人支援において、相手の気持ちを考えることは大切だと思っている。
寄り添い型支援が絶対に正しい。
私は、どこかでそう思っていた。
でも今、その考え方の壁にぶつかっている。
寄り添うことは、本当にいつでも本人のためになるのだろうか。
この「寄り添い型支援の限界」については、また次回書こうと思う。
