【海外競馬】ここが変だよ、グランドナショナル【競馬場訪問レポ】
先週4月5日、グランドナショナルを観にエイントリー競馬場を訪れました。
楽しいは楽しかったのですが、異様に疲れて翌6日(日)完全にダウンしていたので、失敗(?)談を記録しておこうと思います。
会場となるエイントリーがロンドンからするとやや辺境に所在するのと、平地の大レースに比べると日本人の関心が高くないのとで、事前情報が豊富だったわけではないのですが、それでも知名度はあるので、通常の訪問記としての役割は、先人たちのそれに譲ろうと思っています。
治安
昨夏に英国に赴任し、生活が安定した秋以降、パリロンシャンの凱旋門賞を皮切りに、英チャンピオンS、チェルトナムGCといったほとんど全ての主要なレースイベントに参戦してきました。それらと比較したときのグランドナショナルのもっとも大きな特徴は観客の素行です。
他の欧州のGI開催日同様、みんなスーツやドレスで着飾っているので、見た目は華やかですが、酒の飲み過ぎか、倒れて痙攣されてる方や、頭から相当量の血を流して治療を受けてる方が散見されました。いずれも医療スタッフの方が淡々と対応していたのでまあ何とかなったのではと思っていますが、日本で似たような事象に出くわした経験が少ないので、結構な衝撃でした。
帰りの電車でも、話を聞くとどうも席を予約してなさそうな集団が、たまたま予約者が現れなかった予約席を勝手に占領したり、客席で電子タバコぷかぷかしたりしていて、これに関してはなんなら不快でした。
以前のポストでも紹介したとおり、貴族文化の残る欧州競馬とはいえども、本質的には同じ人間なので、マナーの程度はたかが知れています。日本人が多少騒いだくらいで、いちいち気にするのは同じ日本人くらいではないでしょうか。「まあ堅いこと言わずにこの日くらいハメ外して楽しもうや」というのが現地のスタンスっぽいので、(常識の範囲で)恥じらいを捨てるくらいでちょうどいいと思います。
導線・視界
パドック→コース→表彰式の導線も、これまで訪れた競馬場の中ではもっとも不便なものでした。ゴール前のエリアにスタンドが4つほど並んでいるのですが、スタンドAとスタンドBとの間の通路は別のスタンドCの入場権を持っている人さえ入ることができないようで、ゴール前エリアで見て、パドックに戻るためには、かつて後先考えずに増築されたのであろうスタンドエリアを大きく迂回して400mほどを歩く必要があります。こんなのをレースのあるたびに革靴で往復していれば当然足が疲れるわけです。
こればかりは欧州の(特に障害競走主体の)競馬場の宿命でもありますが、導線が洗練されていたアスコットとの比較は不憫だとしても、例えばチェルトナムと比較してもお粗末な導線のように思います。多くの観客を集めることは当然予見できるのだから、例えば歩道橋を設けて、客に上からパレードリングを見る機会を与えることでスポットを分散させるなど、もう一工夫があってもいいような気がしますね。

高さの話をしましたが、競馬場現地観戦でもっとも大切といえるコースでの視界についても、思うところがあります。私は基本的に単騎で観戦しているので、パドックから戻ってもするすると人混みをかき分けて前の方に出ることができますが、グループで観に行くと基本的に後ろの方で見ることになると思います。
欧州の競馬場はコース前の立ち見エリアに極端な傾斜をつけて、後ろの客がちゃんとレースを楽しめるように工夫されていることが多いのですが、エイントリー競馬場は割とフラットなつくりになっていました。ゴール200m手前くらいの地点に小高い丘みたいなエリアが設けられてはいるのですが、数万人規模で客が詰めかけていることを考慮すると十分なものであるとは評価できません。
このように、安い(といっても1万円はくだりませんが……)チケットで表彰式もレースも、と欲張ることは不可能なので、何かを諦めることが肝要です。
ヘッダーの写真は、グランドナショナルの最終直線のもので、勝ったNick Rockettと昨年覇者I Am Maximusの叩き合いの場面ですが、このシーンを見るために1つ前のレースの表彰式、グランドナショナルのパドック及びレース後の表彰式は全て放棄しました。
荷物
英国の競馬場は、あまり大きな荷物を会場に持ち込むことはできません(日本の競馬場がどうだったかあまり覚えてないので、実はどこもそうなのかもしれません)。
その上でエイントリー競馬場にはクロークのようなものがないため、グランドナショナル観戦がてらビートルズの聖地やフットボールスタジアムの観光も、と欲張ると一泊以上分の荷物をどこか別の場所に預ける必要が出てきます。
そこで私は、Radical Storageというサービスを利用しようと考えていました。Uberのように、荷物を預かる余力のある施設と、荷物を預けたい客とを繋ぐプラットフォームで、丸一日預けて5GBP+手数料と英国基準では格安のものになります。日本人旅行者のバイブル『地球の歩き方』でもインストールが推奨されてるアプリで、このたび初めて利用したのですが、これが失敗でした。
当初の予定では、9時半にリバプールでの拠点駅周辺で荷物を預け、10時の開門に間に合うように電車に乗る予定でしたが、予約していた施設が開いておらず、連絡先として記されていた電話番号も無効なものになっていました。
急いで別の場所を予約したものの、そちらは店員がRadical Storageのことを知らず、こちらでも荷物を預かってもらえませんでした。
どうしても11時までには入場して、コースウォークに参加したかったので、しぶしぶ駅にあるレフトラゲージというサービスに切り替えました。1日15GBPとやや割高ですが、その分信頼できるサービスですので、もし万一エイントリー競馬場を訪れる際には、時間節約の観点からそちらを利用することをおすすめします。
Radical Storageの名誉のために付言すると、プラットフォーマーとしての対応は割と丁寧でした。クレームを入れたらものの数分で返金対応してくれたのは、この国のこの手のサービスとしては拍子抜けなくらい親切なものです。ただ今回の事案を踏まえると、再び利用することはないですね。
なお、電車の遅延や、駅の微妙な混雑、前に並んでいた人のチケットトラブル等で入場は11時ギリギリになってしまいましたが、入場直後から必死にコースウォークの開始場所を聞いて回り、何とか滑り込むことができました。ちなみに11時過ぎてからコースウォーク始めてる人もいたのでそんな焦らなくてよかったのかも知れません笑
その後行われるグランドナショナルで実際に使われるコースの一部が養生されていて、その上を実際に歩くことができたり、著名な障害物を説明展示付きで間近で見ることができたりと、このコースウォークがこの日もっとも楽しいイベントだったと思います。

余談
色々文句はありましたが、総じてグランドナショナルは楽しいイベントだったと思います。アスコットと違って何度もリピートしたいな、という魅力は感じませんでしたが、「一生に一度、グランドナショナルを観てみたい!」という方には、ぜひそうすべきだ、とおすすめできます。
完全に余談ですが、エイントリーからリバプール中心部に帰る電車を待っている際、駅員と冗談交じりの会話をしていたら、老夫婦が来て、女性の方が私に「日本人?」と日本語で聞いてきました。何で日本語しゃべれるんだと色々聞いてみたところ、どうも静岡県の藤枝東高校で2年間英語を教えていたらしいです。
残念ながら、私は藤枝東のOBでも何でもないですし、そもそも英語で難しいことを話せるほどの語彙もないので、「将来フットボーラーになるべき人は、やはりアメリカ方言ではなく、オーセンティックなイングリッシュを学ぶ必要があるんですね」と浅い冗談を飛ばすだけにとどまってしまいましたが、世界には意外と日本に縁がある方もいるんだなと、感じたエピソードでした。
次はニューマーケット競馬場を訪れ、英国三冠の初戦、2000ギニーを観戦する予定です。
