【薬剤師が解説】レチノールって何がいいの?働き・毛穴との関係・初心者の始め方
「レチノールが気になる。でも、何のために使う成分なの?」
「毛穴にもよさそうだけれど、赤みや皮むけが心配……」
美容液やクリームを探していると、よく見かけるレチノール。
気になる一方で、「高濃度がいい」「皮むけするまで使うもの」などの情報に迷うこともあるかもしれません。
大切なのは人気や濃度だけで選ばず、成分の特徴と、自分が何に困っているかを分けて考えることです。
今回は、ドラッグストアで働く薬剤師が、レチノールの働き、毛穴・皮脂・赤みとの向き合い方、使い始めるときの注意点を初心者向けに解説します。
※本記事は一般的な成分・スキンケア情報です。特定商品の推薦、病気の診断・治療、効果や安全性の保証を目的とするものではありません。
1.最初に結論:レチノールは「目的を決めて選ぶ」成分
レチノールは、ビタミンAの一種です。
皮膚の構造やシワに関する研究がありますが、研究で得られた結果がすべてのレチノール配合製品に当てはまるわけではありません。
製品を選ぶ前に次の3つを確認しましょう。
• 何が気になるのか
• その製品に、どのような効能や使用目的が表示されているか
• 今の肌に、赤みやヒリつきがないか
例えば、「シワ改善を目的に製品を探している人」と「洗顔後にヒリヒリする人」では、先に考えたいことが違います。
レチノールを使うこと自体を目標にせず、自分の悩みに必要かどうかから考えることが大切です。
2.レチノールは、肌でどんな働きをする?
細胞の「増え方・成熟の仕方」に関係する
肌の表面をつくる細胞は、新しく生まれ、成熟しながら表面へ移動していきます。
また、肌の内部では皮膚を支えるコラーゲンなどのタンパク質がつくられています。
レチノールは皮膚の中でレチナール、レチノイン酸へと段階的に変換されます。
変換後のレチノイン酸は、細胞内の受容体という「受け取り口」に結びつき細胞の増え方や成熟の仕方、タンパク質のつくられ方を調節する仕組みに関わります。
つまりコラーゲンをそのまま補う成分ではなく、肌を構成する細胞が働く仕組みに関係する成分ということです。
人の皮膚を対象に、特定のレチノール製剤を使用した際の皮膚組織やコラーゲンに関連する指標を調べた研究があります。
参考:Kongらの研究
研究結果と、商品の効能は分けて考える
高齢者36人の腕の皮膚を対象に、24週間レチノール製剤を使用し、細かなシワなどの変化を調べた研究もあります。
参考:Kafiらの研究
ただし、研究には対象者、塗る場所、濃度、使用期間などの条件があります。
研究があることだけを理由に、次のようには言えません。
• どの配合製品でもコラーゲンが増える
• 肌の生まれ変わりが必ず正常になる
• 高濃度ほど、誰にとってもよい
• 毛穴やシワが必ず目立たなくなる
成分についての研究と、市販されている製品の効能は分けて考える必要があります。
最終的には製品に表示されている効能や使用目的、使用方法を確認しましょう。
3.買うときは「レチノール配合」の先まで見る
キメやハリが気になる場合
化粧品を選ぶときは、「レチノール配合」という成分名だけでなく、「肌のキメを整える」「肌にハリを与える」など、製品に表示されている内容を確認しましょう。
これらは化粧品の効能の範囲に含まれる表現ですが、レチノールが入っているという理由だけですべての製品について同じ説明ができるわけではありません。
参考:厚生労働省「化粧品の効能の範囲」
シワ改善を目的にしたい場合
シワ改善を目的に製品を選ぶときは次の2点を確認します。
• 医薬部外品か
• その製品に「シワ改善」の効能が表示されているか
「医薬部外品」と書いてあっても、すべてがシワ改善を目的とする製品ではありません。
また化粧品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」と、医薬部外品の「シワ改善」は同じ意味ではありません。
前者もすべての化粧品に表示できるわけではなく、適切な試験によって効果を確認する必要があります。
参考:厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」
ニキビを治療したい場合
レチノール配合化粧品と、医療機関で処方されるニキビ治療薬は別のものです。
化粧品を、処方された治療薬の代わりに使わないようにしましょう。
赤く腫れたニキビや痛みがある場合、繰り返しニキビができる場合は、皮膚科で相談してください。
すでに治療中の方はレチノール化粧品を追加する前に、医師や薬剤師へ確認しましょう。
4.毛穴・皮脂・赤みが気になる人は?まず見直したいポイント
同じ「毛穴が気になる」でも、黒いポツポツが気になる人と、乾燥して肌がヒリヒリする人では、ケアの優先順位が違います。
レチノールを取り入れる前に「どこが、どのように気になるのか」を整理してみましょう。
以下は診断ではなくケアを見直すための目安です。複数の状態が重なっていることもあります。
① 白や黒のポツポツ・ザラつきが気になる
まず確認したいのは、ポツポツを落とそうとして肌を刺激していないかです。
• 指や器具で押し出していないか
• スクラブで強くこすっていないか
• 毛穴パックや角質ケアを繰り返していないか
「取れないから、もっと強くケアする」という繰り返しは避けましょう。
強くこすることや押し出しは刺激になり、毛穴をかえって目立たせることがあります。
参考:米国皮膚科学会の毛穴ケア解説
また、レチノール化粧品は、角栓をその場で取り除くためのものではありません。
まずは摩擦や無理な押し出しを見直しましょう。ニキビを繰り返す場合は、化粧品を増やすだけで対処せず、皮膚科で相談してください。
② テカリと一緒に毛穴が目立つ
「皮脂が多いから、高濃度のレチノールを使おう」と、すぐに決める必要はありません。
まずは今の肌の感覚を確認してみてください。
• テカリは気になるけれど、つっぱりはない
• テカるのに、洗顔後はつっぱる
• テカリに加えて、ヒリつきや皮むけもある
この3つを、同じ状態として扱わないことが大切です。
つっぱりやヒリつきがある場合は、新しい美容液を加える前に、洗顔や角質ケアが負担になっていないかを見直しましょう。
なお、「テカるのにつっぱる」という感覚だけで、いわゆる「インナードライ」と決めつけることはできません。
レチノール使用後に乾燥したとしても、それだけで「皮脂が減って成功した」とは判断しないようにしましょう。
③ 頬の毛穴と、ハリの変化が気になる
この場合も、まず確認したいのは保湿と日中の紫外線対策です。
米国皮膚科学会は、紫外線による肌のハリの低下が毛穴の目立ち方に関係すると説明し日焼け止めの使用を勧めています。
参考:米国皮膚科学会の毛穴ケア解説
そのうえで美容アイテムを検討するなら「肌にハリを与える」など、製品に表示された使用目的を確認しましょう。
ただし、「肌にハリを与える」と「たるんだ皮膚を持ち上げる」は同じ意味ではありません。
化粧品で毛穴を消すことや、たるみを大きく変えることを目標にしないようにしましょう。
④ 赤み・ヒリつきが気になる
赤みやヒリつきがあるときは、レチノールを追加するよりも刺激が続いている理由を確認することが先です。
• 最近、新しい製品を使い始めたか
• 使用量や使用頻度を増やしていないか
• 複数の美容液や角質ケアを重ねていないか
• 使用直後だけでなく、翌日にも症状があるか
米国皮膚科学会も、赤みや炎症が強い肌では、レチノイドの使用を避け、皮膚科で相談するよう案内しています。
参考:米国皮膚科学会「Retinoid or retinol?」
使用後に異常が出た製品は中止し、症状が続く場合は皮膚科へ相談してください。
「赤くなったから効いている」と考えて使用量を増やしたり、我慢して続けたりしないことが大切です。
迷ったときは「一つだけ変えて、記録する」
新しい美容液、洗顔料、保湿剤を同時に変えると何が合っていたのか、何が刺激になったのかを整理しにくくなります。
次のような簡単なメモでも役立ちます。
• 使い始めた日と製品名
• 塗った場所と使用頻度
• 翌日の赤み・つっぱり・ヒリつき
• 同じ時期に変えたスキンケア
写真を残す場合は照明や距離をそろえましょう。ただし、写真だけで効果や症状の原因を判定できるわけではありません。
「毛穴がどう見えるか」だけでなく、「刺激なく続けられているか」も確認しましょう。
5.初心者の始め方:最初から毎日使わなくていい
早く変化がほしいからといって、最初から毎日、多めに塗る必要はありません。
米国皮膚科学会は、レチノイドを取り入れる際、少ない頻度から始めることや保湿を勧めています。
参考:米国皮膚科学会「Retinoid or retinol?」
ただし、製品によって濃度や処方が異なるため、具体的な量や頻度はメーカーの説明を優先しましょう。
購入前・使用前に確認したいのは、次の項目です。
• 1回の使用量
• 初めて使う人向けの使用頻度
• 顔全体用か、部分用か
• 使用を避ける部位
• ほかの製品との併用上の注意
• 保管方法
「顔全体用の美容液」と「目元用のクリーム」では、使い方も異なります。
また、濃度の数字だけでは刺激の出やすさや自分との相性は判断できません。
新しい製品は一つずつ取り入れ、少ない量や頻度から始めても、刺激が出る可能性はあることを覚えておきましょう。
6.朝と夜はどう使う?
レチノールは夜のケアに取り入れる方法がありますが、朝の使用可否や順番は製品によって異なります。
次は一例です。製品の説明と異なる場合は、メーカーの使用方法を優先してください。
朝
1. やさしく洗顔する
2. 肌に合う乳液やクリームなどで保湿する
3. 日焼け止めを塗る
夜
1. メイクや日焼け止めを、製品に合った方法で落とす
2. 必要に応じて洗顔する
3. レチノール製品と保湿剤を、それぞれの表示に従った順番で使う
化粧水、美容液、乳液、クリームを、すべてそろえる必要はありません。
レチノールを使用するときは、日中の紫外線対策も忘れないようにしましょう。
日焼け止めに加え、帽子や日陰を利用する方法もあります。
参考:米国皮膚科学会「Retinoid or retinol?」
7.ビタミンCやナイアシンアミドと一緒に使っていい?
成分名だけで、すべての組み合わせを「併用禁止」「必ず問題ない」と決めることはできません。
別々の製品を重ねたときの使い心地や刺激は、処方や肌の状態にも左右されます。
初めてレチノールを使う場合は、同時にほかの新しい美容液を増やさず、まずレチノール製品が肌に合うかを確認しましょう。
• 製品に併用上の注意があれば、それを優先する
• 自己判断で手のひらに混ぜない
• スクラブや角質ケアを同時に増やさない
• 赤みやヒリつきが出たら、重ね使いを続けない
朝と夜、あるいは使用日を分ける方法もありますが、分ければ刺激が出ないという保証はありません。
セラミドやヒアルロン酸などを含む保湿剤を使っていても、刺激を必ず防げるわけではありません。
8.赤みや皮むけは、我慢しなくていい
レチノールを含む製品で、乾燥や刺激が起こることがあります。
ネット上で「A反応」と呼ばれていても、その言葉だけで症状の原因や程度を判断することはできません。
皮むけやヒリつきは、目指すべきゴールではありません。
赤み、かゆみ、ヒリつき、皮むけなどが出たら、使用を中止してください。症状が続く場合は皮膚科へ相談しましょう。
強い腫れ、水ぶくれ、痛みがある場合は、早めの受診が必要です。
新しいスキンケア製品による皮膚反応と対応については、米国皮膚科学会の解説も参考になります。
参考:米国皮膚科学会「How to test skin care products」
「慣れるまで耐えなければ」と考えず、自分の肌の状態を優先しましょう。
9.妊娠中・妊娠を考えている場合の注意
妊娠中は、レチノールを含むレチノイド製品の使用を避けてください。
米国皮膚科学会も、妊娠中に避ける成分として案内しています。
参考:米国皮膚科学会「Dermatologist-approved pregnancy skin care」
妊娠を計画している場合も、自己判断で使い始めず、医師へ確認しましょう。
妊娠に気づく前に使用していた場合は、「使ったから必ず影響がある」と決めつけず、使用を中止し、製品名や使用期間を産婦人科で伝えて相談してください。
授乳中も、使用を検討する場合は製品名と使用部位を医師へ伝え、確認しましょう。
10.まとめ
• レチノールはビタミンAの一種
• 成分の研究結果と、配合製品の効能は分けて考える
• 製品区分・効能表示・使用方法を確認する
• 毛穴や皮脂が気になる場合も、まず摩擦や洗いすぎ、刺激の有無を見直す
• 高濃度や毎日使用を、最初から目標にしない
• 赤みや皮むけを、効いている証拠として我慢しない
• 妊娠中は使用を避け、妊娠を計画している場合や授乳中も医師に確認する
レチノールは、「話題だから、とりあえず足す」よりも、「自分は何のために使いたいのか」を整理して選びたい成分です。
今の保湿やスキンケアで困っていなければ、無理に追加する必要はありません。
肌の状態を見ながら、無理なく続けられるケアを選んでいきましょう。
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参考資料
1.レチノールと皮膚の変化に関する研究
Kong R, Cui Y, Fisher GJ, et al.
“A comparative study of the effects of retinol and retinoic acid on histological, molecular, and clinical properties of human skin.”
Journal of Cosmetic Dermatology. 2016;15(1):49–57.
DOI:10.1111/jocd.12193
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26578346/
特定の製剤を用い、皮膚組織や分子レベルの指標などを調べた研究です。市販製品すべての効果を示すものではありません。
2.高齢者の皮膚を対象とした研究
Kafi R, Kwak HSR, Schumacher WE, et al.
“Improvement of naturally aged skin with vitamin A(retinol).”
Archives of Dermatology. 2007;143(5):606–612.
DOI:10.1001/archderm.143.5.606
URL:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17515510/
高齢者の腕の皮膚を対象とした研究です。顔への使用や、年齢・処方の異なる条件で同じ結果が得られるとは限りません。
3.レチノイドの特徴と使用上の注意
American Academy of Dermatology
URL:https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-secrets/anti-aging/retinoid-retinol
使い始め方、刺激への注意、保湿や紫外線対策について参照しました。
4.毛穴が目立つときの基本ケア
American Academy of Dermatology
URL:https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-secrets/face/treat-large-pores
やさしい洗顔、摩擦や押し出しを避けること、紫外線対策について参照しました。
5.新しいスキンケア製品と皮膚反応
American Academy of Dermatology
URL:https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-secrets/prevent-skin-problems/test-skin-care-products
新しい製品を試す際の注意と、異常が出た場合の対応について参照しました。
6.妊娠中のスキンケア
American Academy of Dermatology
URL:https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-secrets/routine/pregnancy-skin-care
妊娠中に避ける成分について参照しました。
※海外資料の製品区分や医薬品の扱いは、日本と異なる場合があります。
7.日本の化粧品の効能の範囲
厚生労働省
URL:
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7518&dataType=1&pageNo=
「化粧品の効能の範囲の改正について」
平成23年7月21日・薬食発0721第1号
URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/kesyouhin_hanni_20112.pdf
「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」
平成23年7月21日
化粧品の効能表現と、「乾燥による小ジワを目立たなくする」の取扱いについて参照しました。
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※研究は特定の対象者・製剤・条件で行われています。同じ成分を含むすべての製品への効果を保証するものではありません。
※化粧品の使用感や肌との相性には個人差があります。製品の使用方法・注意事項に従い、異常が出た場合は使用を中止してください。
妊娠中に避ける成分について参照しました。
※海外資料の製品区分や医薬品の扱いは、日本と異なる場合があります。
7.日本の化粧品の効能の範囲
厚生労働省
「化粧品の効能の範囲の改正について」
平成23年7月21日・薬食発0721第1号
「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」
平成23年7月21日
化粧品の効能表現と、「乾燥による小ジワを目立たなくする」の取扱いについて参照しました。
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※研究は特定の対象者・製剤・条件で行われています。同じ成分を含むすべての製品への効果を保証するものではありません。
※化粧品の使用感や肌との相性には個人差があります。製品の使用方法・注意事項に従い、異常が出た場合は使用を中止してください。
