聞いてみた! セガサターン30周年記念アルバム『BURNING RANGERS - SEGASATURN 30th Anniv. Album -』Part2 ─by 佐伯 憲司─
WAVE MASTER/SOUND! SHOCK SERIESよりリリースされたセガサターン30周年記念アルバム第3弾『BURNING RANGERS - SEGASATURN 30th Anniv. Album -』(以下バーニングレンジャー30周年祝賀盤)。CDの発売から約1年が経ち、2025年11月15日より、各種音楽配信サービスにて配信も開始された。
インタビューPart2ではセガサウンドチームの幡谷尚史氏、盟友・光吉猛修氏、さらにボーナストラックアレンジ2曲を手掛けた水野健治氏に「バーニングレンジャー」のサウンドから30周年祝賀盤の気になったトラックについてさらに深くお伺いしていきます。
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定価 ¥3,630(税抜価格 ¥3,300)
発売日:2024年11月22日
発売・販売元:株式会社ウェーブマスター
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「Burning Hearts ~炎のANGEL~」が生まれるまでを振り返る
──さて、ここから30周年記念盤の収録トラックについて改めてお話を伺っていこうと思います。まず「Burning Hearts ~炎のANGEL~」(以下Burning Hearts)。ライナーノーツの幡谷さんのコメントには、「We Are Burning Rangers」に続いて2曲目に制作されたという話が書かれていて、制作にあたってディレクターの大島(直人)さんにキーワードを伝えられたと書かれていますが、具体的にどんな言葉だったんでしょうか?
幡谷 オープニングムービーに入っている3つの言葉ほぼそのままですね。「一秒を感じ取れること」、「命を大切にすること」、「女神を味方につけること」という。
──ああ! あのオープニングムービーやマニュアルに書かれていたあの3つだったんですね。TMS(現トムス・エンタテインメント)制作のオープニングアニメーションの中に、日本語の文言がドーンと入っているのがとても印象的だったのですが、あれはかなり早い段階で大島さんの頭の中にあったものなんですね。

──それで「Burning Hearts」があのような仕上がりになったんですね。
幡谷 歌詞をよく読むと、サビなんかもヒーローものではおなじみな感じのことを言ってるんですよね。
──その源泉というか、元になったヒーローものって具体的にはどのような作品ですか?
幡谷 それこそ、僕らが子供の頃に見てたアニメの主題歌の構成要素的な……例えば歌詞が”飛び立て”とか命令口調なのは、例えば「巨人の星」とか「バビル2世」とかいろんなヒーローもののフレーバーですよね。なんかこう第三者が後押ししてくれるような感じで。
──あのテイストなんだ! それがたまらなくいいんですよね。ヒーローソングらしい直球のサビの歌詞が。……歌詞でいうと、“アクアマリンの空”っていうフレーズもすごく印象に残っています。
幡谷 そこもよく言われるんですけどね、(ササキ)トモコさんが考えてくれたものなんですよ。世界観とか……イメージ、色とか情景の表現って全部トモコさんがやってくれてるんで。
──なるほど。なかなか出てこない色の言葉が入っていて、それでいてパッと情景に色がつく印象的なフレーズです。
幡谷 想像の世界もあると思うんですけど、やっぱりある程度進んだ先の未来観みたいなところで、そういうフレーズがいっぱい入っていったんです。そこに大島さんのチェックをいただいて進行していました。
──どんな風に?
幡谷 例えば、先ほど(Part1)も言いましたけれど、このCDにも収録した「Burning Hearts ~炎のANGEL~ -Demo Ver.-」(以下Demo Ver.)に入っていた“進化に疲れた街”という歌詞も、テクノロジーが結構行き過ぎて、疲弊してるようなちょっとネガティブな感じだったんですよ。それをポップにポジティブに“進化にきらめく街”にしたところとか。
あと、“追い風受けて”っていう歌詞も結構言われたんです。それには多分当時、「そこは女神を味方につけてるんだし、運を自ら引き込むみたいなニュアンスもあるので、あってもいいんじゃないかな?」みたいなことを大島さんに言ったような気がしますが……残りましたね。
──女神を味方につけるために風をとりこむことで運気を上げる的なイメージ。
幡谷 そういう言葉の持つ意味っていうものは、きちっと大島さんにチェックされました。「女神を味方につけること」から副題の「炎のangel」につながっています。
──言葉の持つ響きと、言葉の意味のすり合わせを大島さんもこだわってらっしゃったという。この歌詞はいい意味で印象に残る、刺さるんですよね。
幡谷 そこはトモコさんのパートだと思います。連名にしていますが、僕が詞で自分の部分を残してるのはサビのメロディと連動してるところのみです。
──ゲーム内でもバーニングレンジャーの装備で白がすごくインパクトがあって、火災現場は炎の赤や緑が印象に残りましたし。サウンドもいろんな音色の中でもブラスがとても目立ってかっこいいですよね。
幡谷 僕はブラスが一番かっこいいと思っている人なんで。起承転結がはっきりした構成になっていると思いますし、コード感やシンコペーションも日本的だと思います。自分にとっても心地よい構成ですね。
──30周年祝賀盤と製品に同梱されていた8cmCD版と聴き比べてみたんですが、リマスターされたことで、各パートがはっきりくっきり、しかも広がりのある空間に配置されていて、聴きごたえが増しました。8cmCD版やサターンの本体で聞いていたときは、ちょっと高域寄りのサウンドバランスだったと感じたのですが、リマスターされたことで音域も音場も広がった感じがして、聴きやすくなったなと。

幡谷 そうですね。
──それと、私にとっては30周年祝賀盤の「Karaoke」でより楽曲を聴きこむことができて、さらに満足度が上がりました。昨今オフボーカルトラックはなかなか入れてもらえないことも多くなって寂しい思いをしていたので、あれはうれしかった。
幡谷 DISC2は、ボーナスディスク的なものですね。各ミックス違いのバーションやアレンジ違いなども含めて、これまでレコーディングしてきたものはマルチトラック(各トラックのバラのデータ)が利用できるので、Remixの素材としても使えますし、カラオケデータも用意できました。
「Burning Hearts」Demo Ver.が収録された意図とは?
──流れで-Demo Ver.-についてもうちょっとお伺いしたいのですが、このDemo Ver.はあくまでソニックチーム内で聴かせるデモ曲として幡谷さんが打ち込みされて、光吉さんの仮ボーカルも収録されたもので、最終的にオケもボーカルも差し替える前提で作られたものだったと。
幡谷 そうです。主題歌の英語版が先収録だったので、ニューヨークの一緒にいつも組んでいるプロダクション、BEAT ON BEATのKOSUGIさん(ATSUSHI “SUSHI” KOSUGIさん)にミュージシャンのアサインとスタジオの手配を頼んで、全部一旦デモの素材をA-DATに収録し、向こうのMLTレコーダーに移して立ち上げてから、ドラマーのOmar Hakim氏をはじめ、各パートを名だたるミュージシャンのみなさんに、トラックごとにアレンジをしながら生演奏に置き換えていくという工程になりました。
その過程で生楽器を主体にしてニュアンスやノリが変わっていったところがあるんですよね。「Burning Hearts」だったら、16分の細かいフレーズとかノリもあったんですが、ロックの8ビートを基本に差し替えていったことで少しずつ雰囲気が変わっていきました。多分そこにDemo Ver.とのギャップがあるんですよね。
──Demo Ver.と聞き比べるとノリが違うな、と思ったのはそういう理由なんですね。
幡谷 今聞きくらべると、Demo Ver.はフレーズが連続的に流れたりする作りにしてあるところが30周年祝賀盤のRemixではっきり聴けるようになっています。それから、生に差し変わっていく過程でみんなが弾ける、人がプレイできるパッセージに直していったので、打ち込みノリが生楽器ノリに変わっている感じですね。その後、日本の(セガ)デジタルスタジオでさらに差し替えの作業をしました。差し替えたら、(元のバージョンとの)ギャップがあるという話もよくされたんですよ。「前のほうがよかった」とか。
──幡谷さんがDemo Ver.について“パッションがある”ってライナーに書かれていたと思うんですけれど、先ほどおっしゃられていたように各フレーズがつながっている感じがドライブ感というか、スピード感を生んでいるような印象があります。テンポを速めるだけでなく、こうして生み出すスピード感もあるんだなという感覚が味わえたというか。
改めてお伺いしますが、差し替えを前提に作られたDemo Ver.をCDや配信向けに収録するのは、どのように判断されて収録に至ったのかが知りたかったんです。アルバムに収録されるとなると、当初の制作目的と違う用途になりませんか?
幡谷 これはミツ君(幡谷さんは光吉さんをこう呼ぶ)にも「入れていい?」って聞いたよね(仮歌ということを考慮して)。
光吉 聞かれましたね。僕的には、自分の歌というよりも、オケに注目してもらいたくて。僕は一番最初にDemo Ver.の「Burning Hearts」を聴いた時に、とてもいい曲だなと思ったんです。オケのドライブ感とか、NYレコーディングされたものより少しBPMが早いのかな? それが聴いていてものすごく気持ちよかった。NYでレコーディングしてきたものは、それはそれでクオリティも高かったんですが、僕はちょっともったりしてるというか、こんなロックなナンバーだったっけ? みたいな感じを当時感じていたんです。
だから、Demo Ver.は僕の歌のクオリティはさておき、オケを聞いてほしいなと思っていたんですよ。今回の記念のアルバムに入ることに関しては、仮に僕の歌がぐちゃぐちゃだったとしても、まあそれはそれでネタになるし、どっちかというとオケの“最初の幡谷尚史のほとばしり”を、みんなに聴いてほしいなっていうのはありました。
──あの年代だからこそのノリみたいなものってありますよね?
光吉 そうですね。ハタちゃん(光吉さんは幡谷さんをこう呼ぶ)あれでしょ? Demo Ver.には当時はプロデューサーだった中(裕司)さんに通そう(承認してもらおう)という気持ちが当然入っているわけじゃないですか。
──それもあのバージョンの目的のひとつですものね。
幡谷 今回、僕がDemo Ver.を入れたのは、往生際が悪いからですね。当時、ミツ君が言ってくれた同じような印象を僕も持っていたんですけれども、じゃあ、自分のものに自信があるんだったらその通りに仕上げればいいじゃない? という話なんですよ。でも、Demo Ver.のノリ、打ち込み然としたこのノリで最後まで突き通せるかどうか、当時はそこまで自信が持てなかったんですよね。
打ち込みのノリだけだとやっぱり素人寄りじゃないか? と思っていたし、結局初めて聞く人にとって、一番先に聞いたものが多分馴染むと思うので、当時感じたこの感覚を信じきるにはちょっと不安があった。Demo Ver.はそういう存在だったんですが、やっぱり当初持っていたものがくすぶっていたから、こうやって入れてると。ほかの人の共感を理由にね。いいわけにね。そういうところはありましたし。
──このDemo Ver.はコンピューターを使うからこそできてしまうノリみたいなものもあって、それはそれで貴重というか尊いなと。
幡谷 その考えは尊いですけど、多分、それを言い訳に使っちゃうとカッコ悪い、っていう意識も当時はあったんですよね。
──こういう言い方をしていいのかどうかわからないんですけれど、このバージョンの制作過程で生まれる中間生成物みたいなものの不安定さみたいなものが僕は逆に愛しいと思ってしまうんですよね。
幡谷 「きみしね(きみのためなら死ねる)」(ニンテンドーDS:2004年発売)なんかはその典型ですけれどね。「きみしね」の場合、本当にいい加減なものなんで、普通のサウンドクリエイターは絶対出したくないようなものなんですけど、僕はあのラフさで割と出せちゃうんで、それが当たったっていうのもありますよね。そういう気楽さっていうのが同業者に割と評判良くないっていうか、そういう感覚があるんですよ。ちょっと気配を感じたりするわけです。それも逆にわかるんです(笑)。
──あのノリは理屈では出てこないと思います。
幡谷 それは特にそうですね。意図を持つ音楽っていう意味ではその意図にかなっていればいいので。
──Demo Ver.について、こんなに話をすることになるとは思わなかったんですが、僕はアルバムに入れていただいて、ただひたすらありがたいです。
「Burning Hearts」をここまで歌い続けられた理由とは?
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