日々是分岐─セガサターン名作「街」の総監督が語るサウンドノベル回顧録・第二十八回「サウンドノベルの断片」
セガサターンの名作「街」の総監督を務めた麻野一哉氏自らが、当時の開発の裏話を回顧録として綴っていく連載コラム「日々是分岐」。
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第二十八回目は開発周辺の話題について麻野氏が振り返ります。ぜひご覧ください。
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今回も、前回に引き続き、断片をつづる。
29. タイトル
「弟切草」というタイトルが決まったのは、かなり後の方だった。それまでは、『館物語』という安易な名前を仮称にしてきた。前にも書いたが、弟切草という植物の存在は三鷹の書店で知り、「復讐」という花言葉とセットでシナリオに反映した。長坂(秀佳)さんたちが合流したあとも、この題材は面白いということでそのまま使うことになった。しかし、この名前をタイトルにしようという意識はまったくなく、いつかタイトルを決めないといけないと心の隅に思いながら、ずっと先延ばしにしていた。ところがある日、中村(光一)社長が「タイトルは『弟切草』でどうだろう?」と提案してきたのだ。
それを聞いて、すぐに思い浮かべたのが、「お線香」だった。そのころより少し前、「青雲」という線香のCMがテレビでよく流れていた。森田公一が、「青雲、それはキミが見た光……」と歌っていたCMだ。スーパーファミコンのカセットのパッケージはファミコンよりかなり大きい。あのサイズの箱に、「弟切草」と書いてあったら、ぱっと見、線香に見えないか。そう思ったのだ。なので、麻野は社長にこう返事をした。「線香っぽいなあ」。
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