見出し画像

磯野貴志のAM2研黎明記・第4回【サターン版バーチャコップ開発史その3】東京おもちゃショー出展とメディア展開


『Beep21』による往年の名作の開発者自身による回顧録シリーズ。セガサターン版「バーチャコップ」を担当していた磯野貴志氏が30年前の当時開発秘話を明かします。ぜひご覧ください。

【磯野 貴志(いその たかし)1967年5月12日生】東京都出身。1991年、武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科在学中にアルバイトとしてセガに入社。翌1992年に新卒として正式入社。1994年暮れ、入社3年目にしてセガサターン版「バーチャコップ」のプロジェクトリーダーを任される。1997年末にセガを退社後、1998年6月に株式会社リズを設立。以降30年近く代表取締役を務め現在に至る。今回は1995年の東京おもちゃショーにセガサターン版「バーチャコップ」がプレイアブルで出展されることになった裏側の話をお届けします。

▼前回のお話はこちらからご覧いただけます!

▼「2026年間購読マガジン」だと、2026年に掲載された分の記事すべてをいつでも読み返すことができるようになります。ぜひこちらからお求めください!

※本記事はこちらからもお楽しみいただけます(※上記の「2026年間購読版」は購入後もずっと記事を保存できますのでおすすめです)。

皆さん、こんにちは。元セガAM2研の磯野です。
前回の配信から半年以上の時間が過ぎてしまいました。相変わらずの遅筆で申し訳ございません。実は前回のコラムを脱稿した後、バーチャガン開発者の戸崎(健司)さんから追加寄稿をいただきました(戸崎さん、ありがとうございます)。そこでバーチャガンには別の回路で設計し直したバージョンが存在したという衝撃の事実を知りました。初耳です。30年間まったく知りませんでした(汗)。たしかにソフトウェアはコピーすればいくらでも増産可能ですが、ハードウェアには部品調達が必要です。数をそろえるために、そのようなご苦労もあったのですね。今さらながら当時のハードウェア部隊に感謝感激です。自分は実に恵まれた環境で仕事をしていたのだなと改めて思った次第です。

披露目ひろめのはじまり─東京おもちゃショー出展─

さて。あわただしくも粛々しゅくしゅくと開発を進めていたセガサターン版「バーチャコップ」(以下SVCと略すことがあります)チームに次なる試練しれんが立ちはだかります。そう「'95東京おもちゃショー出展」という、アーケードゲームを専門に開発していたAM2研には無縁の、開発中のゲームを一般のお客様にお披露目するという(私たちにとっては)想定外のイベントです。今回は、おもちゃショー出展時のお話とSVCのメディア展開についてお伝えしたいと思います。

余談ですが、現在における「ゲームソフトお披露目の場」と言えば東京ゲームショウですよね。世界中からゲーム開発者やゲームファンが集まる一大イベントですが、当時はまだ存在しなかったのです(第1回は翌1996年8月に開催)。AM2研におけるイベント出展と言えば、業務用のAMショーAOUエキスポ(2013年に統合されたとのこと)だったので、私をはじめチームメンバーは誰もおもちゃショーの存在を意識していませんでした。最初は「映像出展する」という話を聞いただけで、特に開発側で対応する必要もなさそうだなぁ~くらいに考えていました。ところが...ガンコンが用意できるということが分かって以降(戸崎さんってば仕事早すぎぃ!)なんと事態は急変します!

寝耳に水の開発スタッフ─プレイアブル出展という名のわな

「バーチャコップはプレイアブルで出展するから」...寝耳に水です。プレイアブルとはつまりお客さんが遊べる状態ということ。映像出展であれば、多少画面が乱れてもポリゴンが欠けてもUIが完全でなくとも、まぁ開発中の映像だしね、でむかもしれません。最悪、見られたくない画面はカットしてしまえば良いのです。が、プレイアブルとなるとそうはいきません。少なくともプレイに支障が出ないレベルでUIを用意しなければなりませんし、テクスチャを貼っていないとかポリゴンが欠けるなんて、ずかしくて許容できません。タイトル画面も用意したいですし、ステージの途中でプッツリ終わらせる訳にも参りません。例え途中であっても、それっぽく終了プロセスを作る必要があります。当然チームからも「そんなん聞いてませんよぉ~」と抗議のひとつもあがってくる訳です。いや私も同じ気持ちです。聞いてませんよぉ~と言いたい。でも決定事項です。仕方ありません。開発スケジュールに支障をきたすのは重々承知の上で、おもちゃショー出展バージョン(通称トイショー版)を急遽きゅうきょ制作することになりました。

ここから先は

5,267字 / 16画像

■サブスク版 毎週Beep21とは 伝説のゲーム誌が21世紀の2021年に奇跡の復活を遂げた『Bee…

サブスク版 毎週Beep21

¥500 / 月

「2026年間購読版」は2025年版に続き、お得な価格で好評販売中です! 一度買えば買い逃しなく2026年すべての記事が収録されていく、お得な2026年間購読マガジンをぜひお求めください!

伝説のゲーム誌『Beep』が2021年に21世紀仕様になって5年目に突入! 『Beep21』は他では読めない独自取材記事と当時の関係者によ…

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?