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波の音を聴かせて ~ショートショート~ #シロクマ文芸部

【波の音を聴かせて】

「波の音」という缶詰がここにある。

日本海の小さな島へ旅行に行った彼が、
「お土産」と言ってくれたもの。
いかにも観光地にありがちな
奇抜なラベルを巻きつけた目を引く缶詰。

「面白くない?」

そう言って渡してきた彼に、私は曖昧に笑い返す。

いつもそう。
自分が面白いものは人も面白い。

前回は『ギョーザのキーホルダー』
その前は、『金の手乗りだるま』

悪気はない。

わかってる、わかってるから、
「ありがとう」で済ませてきた。
そんな感じ。

ありがた迷惑な缶詰はプルトップじゃない。
今どき珍しい昔ながらの缶切りで開けるタイプ。

「いつ作られたのこれ?」

振ってみても音もしない。

耳を当ててみても、もちろん何も聞こえない。

開けてみようかと思った。
けど、開けたら彼の思惑に乗せられた気がして、
手が止まる。

そんな複雑な気持ちのまま、
私は缶詰を棚の隅に置いとくことにした。

それからしばらく経って、
私は仕事で大きなミスをやらかした。

「気にしないで」
「大丈夫、大丈夫」

仲間や上司も気遣ってくれた。

けれど、私自身は許せなかった。

何もかも嫌になって、
ぼんやりと部屋を眺めていると、
棚の上の缶詰に目が止まった。

「波の音……癒やされたいな」

そんな気持ちで、私はキッチンに缶切りを取りに行く。

カチャッ。

ググッと刃を押し込み、
ギュイギュイと開けていく。

開いた缶の中を覗くと、

「……小豆?」

中身は小豆がぎっしり。

その小豆の隙間に、一枚の紙が覗いてる。
つまみ出すと、商品説明みたい。

《あなただけの波の音を聴かせて》

そして、裏にはこう書かれていた。

《小豆を入れると、いつでも波の音》
~姉妹品 波ざる 6,000円(税込)~

私は静かにスマホを手に取った。

そして、私の「荒れ狂う波の音」を彼に送った。



ここまで読んでいただきありがとうございました。

この記事は、
小牧幸助さん企画【シロクマ文芸部】参加用の記事になります。
今回のお題は、「波の音」

過去参加作品

お題「夜店から」

お題「水たまり」

お題「自由帳」

今回も参加させていただきました。
いつもは、こんな感じで、
Gemini(AI)の出すお題で即興小説を書いたりしています。


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モルアゥナ♥ブラック目醒ラボ **市場の熱狂と崩壊、 人間の欲望と静かな思想。 ブラック目醒ラボでは、FX分析と思想哲学の観測記録を発信しています。 20年生きている老猫アポロンと共に、 今日も静かに観測を続けています。 いただいたチップは、創作・分析活動のために大切に使わせていただきます。**