雨海 武さんインタビュー|アートとアトリアのこれまで
2026年、アトリアは開館20周年を迎えました。
20周年を記念した新たな試みのひとつとして、5月からスタートしたアトリア公式note。
第1弾では、アトリア創建当初、美術専門員として運営の中核を担っていた山本信さんをご紹介しました。
インタビュー第2弾では、今年4月にアトリアで開催された「山本信 回顧展」で、実行委員として中心的な役割を担い、展示を主導した雨海 武さんにお話を伺います。
美術家として活動しながら、「雨海商店」としてさまざまなアートプロジェクトの企画・運営も行う雨海さん。山本さんとの出会いを通して、当時のアトリアを知るお一人でもあります。
これまで関わってきた地域のアートイベントのこと、山本さんとの出会い、そして雨海さんが知る当時のアトリアについて、たっぷりお話を聞かせていただきました。

雨海 武(あまがい・たけし)
美術家として活動しながら、「雨海商店」の名前でアートプロジェクトの企画・運営も行う。栃木県益子町の「土祭(ひじさい)」や長野県松本市の「松本ぬのといと」、川口市の「川口暮らふと」など、地域に根ざしたアートイベントに携わる。
作家と人が出会う場所をつくる
――まずは、雨海さんのお仕事について教えてください。
美術関連の自営業です。「雨海商店」という名前で、いろいろなアートプロジェクトの企画や運営もしています。
これまで、栃木県益子町での「土祭(ひじさい)」や、長野県松本市の「松本ぬのといと」など、地域に密着したアートイベントに携わってきました。
川口市の方であれば、「川口暮らふと」という名前を聞いたことがありませんか? 実は、初期の「川口暮らふと」にも関わっていました。


――イベントの名前を聞くと、アートの中でも工芸系のイベントによく携わっているように感じます。何か理由があるのでしょうか?
作家には、たとえ安くても、作品を買ってもらえる、飾ってもらえる喜びを体験してもらいたいんです。
実用的なものを売買して、作家が自分の作品でコミュニケーションをとること、これが面白いし、大事だろうと考えています。
だから、モノとして使うこともできるような気楽さもある工芸作品を取り扱うことが多いのかもしれません。
――そういった工芸系統のイベントを企画するとき、意識していることはありますか?
地域密着型のイベントが多いのですが、その地域の作家だけではなく、その地域の外からも作家を呼ぶようにしています。
地元の人たちとは全く異なるような作風の作家を呼ぶことで、新しい刺激を呼び込んで、より盛り上げていってほしいと思っています。

山本信さんとの出会い、そして回顧展
――山本さんとは、どのように知り合ったのでしょうか?
実は、私の妻が元アトリア職員でして……。妻を通して山本さんと知り合いました。
それから2015年くらいにアトリアで山本さんの展示があったときにも関わりました。そして今回の展示についても山本さんからお話がありまして、携わることになりました。

――山本さんの展示について、今だから言える裏話のようなものはありますか?
とにかく山本さんは良い意味でマイペースなので(笑)、展示準備中にも新しい作品を作ったり、「雨海さん、こんな作品もありましたよ」なんて言いながら、過去の作品を引っ張り出してきたりするので、展示準備もなかなか大変でした(笑)。
――今回の展示準備を通して、「良かったな」と思うことはありましたか?
今回の展示準備には、山本さんがいた時代のアトリアの元職員も何人か参加していました。
みんなでわいわいしながら準備しているのが、当時のアトリアのようで懐かしい、という声が聞こえてきたんです。
それが良かったですね。
――最後に、雨海さんが知っている当時のアトリアについて教えてください。
私の知っているアトリアというと、「川口暮らふと」が始まったあたりの頃、2011年くらいからでしょうか。
あの頃のアトリアを言い表すなら、「市民のための施設」という感じでしたね。
子どもや、美術にあまりなじみのない人たちにも開かれていた施設という印象があります。
お正月遊びだったり、四季折々のイベントだったり……そういうのをよくやっていて、川口という街に密着している、というイメージがありましたね。
20周年を迎えて
雨海さんご自身のお話をはじめ、山本信さんの展示の裏話や、当時のアトリアの様子まで、たくさんのお話を伺うことができました。
アトリアの創建当初、市長は「子どもや美術初心者にも開かれた施設にしたい」と語っていたそうです。
雨海さんのお話を聞きながら、そうした思いが、さまざまな人との関わりを通して20年の歩みにつながってきたのだと感じました。
20周年を迎えた今、この大切な思いを受け継ぎ、次の歩みへとつないでいきます。
川口市立アートギャラリー・アトリア
インタビュー・執筆:学芸員 宮澤
編集・広報:髙野
