失われた記憶と、今ここにある光
記憶がない。
昔の記憶。
ほとんど思い出せない。
思い出せたとしても、
パズルのピースの一欠片みたいな、
ほんの一瞬だけ。
そしてなぜか、
苦しかったことや
悲しかったことだけが残っている。
電気治療をして、記憶は失われた。
しばらくしたら戻ってくると言われたけれど、
本当に稀に、記憶喪失が起こるらしい。
色んなことを忘れやすくもなった。
私は何者なんだろう。
どうやって生きてきたんだろう。
誰といたんだろう。
何が楽しかったんだろう。
気づいた時には、真っ白な病院で、
自分のことなのに、何も分からなかった。
今もまだ、
私の中に還ってこない。
過去に囚われてはいけないと言うけれど、
人は過去があるから今がある。
だから強く生きられるんだと思う。
「からっぽの人間なんだよ」と母に言ったら、
「じゃあ写真を渡すよ」と言われた。
でも、そういうことじゃない。
写真を見ても思い出せないし、
虚しくなるだけだった。
たくさん失った。
記憶だけじゃない。
私の人生の中で、
たくさんのものが失われていった。
憎んでも仕方ないし、やるせない。
でも、たまに悲しくなる。
それはどうしようもない。
本当に、どうしようもない。
おかしな話だよね。
死にたくなる気持ちを消すために
電気治療をして、
その結果、記憶を失って、
また死にたいほど苦しくなるなんて。
これからしかないから、生きていく。
また新しく築き上げていくしかない。
それでも、私は思い出したい。
大切なものが、きっとたくさんあったはずだから。
でもね、
今そばにいてくれる人には、本当に感謝している。
私が生きていくための光です。
勝手に思っていてごめんなさい。
それでも、本当にありがとう。
ひとりでもゆくよ 死にたくなっても
声が聞こえるよ 死んではいけないと
例え辛くても 闇に閉ざされても
心の奥には 明かりが灯ってるよ
巡って流れて 時は移ろいだ
もう何があったか 思い出せないけど
目を閉じてみれば みんなの笑い声
なぜかそれが今一番の宝物
一番の宝物 / Lia
