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同じ1枚の画像に、二社が違う答えを返しました

先日、AIが作った文章に見えない透かしが入る話を書きました(前回の記事はこちら)。そのとき、透かしは入るのに、まだ誰にも読めないという話で終わっていました。

読める道具が、画像にはもうあります。OpenAIが公開している検証ツールで、ファイルを1つ上げるだけ。アカウントもいりません。

試してみました。想像していたのと、だいぶ違う結果になりました。


どれで作ったのか、自分でも思い出せませんでした

先月、3つのAIに「自撮りを送って」と頼む実験をしました。返ってきたのは、どれも人ではありませんでした。その画像が手元に残っています。

検証ツールを開いて、まず気づいたのがこれです。どの画像を、どのAIに作らせたのか、自分でもはっきりしない。同じ月の話です。ファイル名は連番で、フォルダも分けていない。

1枚目を上げました。
緑のチェックと「OpenAI ツールで生成されました」。当たりです。この画像はChatGPTで作成したものです。

2枚目を上げました。赤い×が表示されています。

ChatGPTで生成した画像をChatGPTに確認した結果

「検出されませんでした」が言っているのは、それだけではありません

赤い×の横に、大きな赤い文字でこう出ます。

OpenAI シグナルは検出されませんでした

その下に、小さな黒い文字で続きがあります。

このコンテンツがOpenAIのツールで生成されたことを示す証拠は見つかりませんでした。ただし、AIによって生成されたコンテンツである可能性はあります。

読み落としそうになりました。画面でいちばん大きい文字と、いちばん正確な文が、逆の位置にあります。

このツールが答えているのは「AIが作ったか」ではありません。「うちのAIが作ったか」です。

同じ画像を、Geminiに入れました

検出されなかった画像は、たぶんGeminiで作ったものです。

Geminiにも検証機能があります。専用のボタンはなく、普通のチャットに画像を貼って聞くだけです。こちらはログインが要ります。「これはAI生成ですか?」(このあと何度も試すのですが、聞き方は毎回少しずつ違います。それでも答えは同じ形で返ってきました)

返ってきました。

この画像(またはその大部分)は、GoogleのAIツールを用いて生成または編集されたことが確認されました。

ChatGPTで生成した画像をGeminiに確認した結果

同じ1枚が、片方では「検出されませんでした」、もう片方では「確認されました」。


ChatGPTで生成した画像をGeminiに確認した結果


言い当てたのは、透かしではありませんでした

では逆はどうか。ChatGPTで作った画像を、Geminiに入れてみました。
読めないはずでした。この検証に付き合ってもらっていたClaudeも、そう言っていました。根拠はGoogleのヘルプです。他社もSynthIDの透かしを採用し始めているが、Geminiが認識できるのはGoogleのAIツールで作られたコンテンツだけ、とはっきり書いてある。

ところが、Geminiはこう答えました。

記録によると、この画像は OpenAI Media Service(OpenAI OpCo, LLC)によって作成されたことが示されています。

ChatGPTで生成した画像をGeminiに確認した結果

会社名まで出ています。読んだのは透かしではなく、C2PA Content Credentials でした。ファイルの中に埋め込まれた、署名付きの記録です。透かしとは別のもので、こちらは業界共通の規格です。

つまり画像には二種類の印が付いています。ひとつは誰でも読める記録、もうひとつは押した会社しか読めない透かし

私もClaudeも、透かしの話だと思い込んでいました。公式の説明を読んで、そこから正しく考えて、外しました。動いていたのは、見ていたのとは別のほうでした。


ChatGPTで生成した画像をGeminiで確認した結果

スクリーンショットを1枚撮ったら、読める側だけが消えました

ここで思いつきました。C2PAはファイルに付いたメタデータです。スクリーンショットを撮れば消えるはずです。

同じ画像を画面のスクリーンショットで撮り直して、Geminiに入れました。

この画像がどのように作成されたかについて、確定的な判断を行うことはできません。

ChatGPTで生成した画像をスクショで保存したものをGeminiに確認した結果

会社名まで言い当てた同じAIが、分からなくなりました。

そのスクリーンショットを、今度はOpenAIのツールに入れました。

緑のチェック。「OpenAI ツールで生成されました」。

こちらは読めています。


ChatGPTで生成した画像を一旦スクショでクリップボードに保存した画像をChatGPTで確認。

読める側は残らない。残る側は、押した人しか読めない。

正確に書いておくと、OpenAIのツールがどちらのシグナルで検出したのかまでは確かめていません。ただ、C2PAが消えたことは言えます。元ファイルではそれを読んで会社名まで答えたGeminiが、スクリーンショットでは読めなくなったからです。

この記事のアイキャッチには、赤い×が付きました

もう1枚、試したものがあります。この記事の上に載っている画像、いま見出しの上にあるあれです。

これは私が作りました。正確に言えば、Claudeに描画のコードを書かせて、色とモチーフの方針は私が決め、出てきたものに指摘を返して直させました。生成AIの画像生成は一度も通っていません。プログラムが図形と文字を置いただけです。

OpenAIの答え。赤い×。

Geminiの答え。

この画像からは、AIによって生成または編集されたことを示す信頼できるシグナル(SynthIDや検証可能なC2PA電子署名など)は検出されませんでした。この画像がどのように作成されたかについて確定的な判断を行うことはできません。

Claudeが生成した画像をGeminiに確認した結果

同じ結論です。シグナルがない。でも見せ方が違う。片方は×を出し、片方は判断を保留する。

ひとつ気づいたことがあります。あの画像には、○と×の分かれ道が描いてあります。「読める側は残りませんでした」とも書いてあります。**人が見れば何の話かすぐ分かるのに、機械はそれを読んでいません。**書いてある内容ではなく、埋め込まれていないことだけが報告されました。

そして正直に言えば、この1枚については「分かりません」のほうが正しい。AIが作ったのか、私が作ったのか、私にも一言では答えられないからです。

最初に、どの画像をどのAIに作らせたか思い出せなかったと書きました。あれは私の記憶が悪いだけだと思っていました。でも一枚ずつ確かめてみて、思い出せないほうが自然かもしれないと感じています。作った経緯は、画像のどこにも書かれていません。


Claudeで作成したアイキャッチをOpenAIで確認した結果

4枚ぶんを並べると、こうなります。

ChatGPT製(元ファイル)
・OpenAI → 検出
・Gemini → 検出(会社名まで)

ChatGPT製(スクリーンショット)
・OpenAI → 検出
・Gemini → 判断できない

Gemini製
・OpenAI → 検出されず
・Gemini → 検出

この記事のアイキャッチ
・OpenAI → 検出されず
・Gemini → 判断できない

OpenAIの列で、しばらく目が止まりました。Geminiが作った画像と、私が作った画像が、どちらも同じ「検出されず」です。あのツールから見れば、その2枚を隔てるものは何もありません。

Geminiのほうは、片方を自社製だと言い当てています。区別できているのは、自分が押した印があるからです。

私の文章には、まだ誰も読めない印が入ります

赤い×を見たとき、私は一瞬「違う」と思いました。この画像は私が作ったのに、と。でも×が言っていたのは、そういうことではありませんでした。あの会社は、自分が押した印しか探していません。

画像については、ここまで分かるようになりました。音声も、7月末から同じツールで確かめられます。

テキストは、対象外です。

前回の記事で書いたとおり、Anthropicは文章に見えない透かしを入れると告知しました。ただし検出の方法は「今後の技術文書で共有する」とされたままです。押す側から先に整い、読む側は後から来る。

私たちが日常でいちばん多くやりとりしているのは、文章です。画像でも音声でもなく。そこだけが、まだ空白になっています。

あなたが受け取ったその1枚を、あなたはどの会社に聞きに行きますか。文章のほうは、まだ聞ける先がありません。


参考にした一次情報

  • OpenAI「OpenAIが生成したコンテンツを検証」 https://openai.com/research/verify/

  • Google「Gemini アプリでコンテンツを検証する」 https://support.google.com/gemini/answer/16722517

  • Anthropic「How Claude marks AI-generated content」 https://support.claude.com/en/articles/16266773-how-claude-marks-ai-generated-content

  • C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity) https://c2pa.org/


この記事は「AIと、正しく付き合うために」に収録しています。 見出しを鵜呑みにせず、自分の手元で確かめるための記事を集めたマガジンです。


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