〈線形代数入門①〉連立方程式を巡って(1)
こんにちは!ねこかすてら(@castellachat)です。今回から、〈線形代数入門①〉を書いていきます。線形代数入門では、理系の学部レベルで扱う線形代数を①,②の2つにわけて扱う予定です。①では行列を導入し、行列の基本的な演算や行列式の計算から、ガウスの消去法やCramerの公式による連立方程式の解法を説明していきます。なるべく自然な形で、噛み砕いて書いていこうと思いますので、ぜひ最後までお付き合い下さい!
今回は、線形代数の説明にスムーズに入っていけるように、中学校で学んだ連立方程式の復習をします。連立方程式は何かを説明した後、具体的な解法について説明します。最後に確認問題も付けておきますので、ぜひチャレンジしてみてください!
1.網目の法則
貴方は、吉野源三郎さんが書かれた『君たちはどう生きるか』という本を読んだことがあるでしょうか。この小説には、本田潤一という15才の少年とその叔父が、精神的、人間的な成長に繋がる様々な体験と向き合う様子が描かれています。本田潤一という少年、通称コペル君は、日々過ごすうちの観察から、「私たちの身の回りのものは多くの人々の働きによって成り立っており、世界中の人々は、目に見えない網目のように繋がっているのだ」ということに気づき、これに『網目の法則』と名付けました。
網目の法則は、人間関係だけに適用されるものでは無いでしょう。生態系や、天体の動きなど、この世界のものは互いに複雑に絡み合っています。しかし、そのどれもが極めて複雑であり、私たちがそれらをあるがままに解析することは不可能に近いです。そこで、それらの関係を可能な限り単純化し、それについての理解を深めてみましょう。それにより、複雑な世界を少しでも理解出来るようになることが期待されます。そしてこの営み探求こそが、私たちがこれから学んでいく線形代数なのです。
2.連立方程式
複数のものが影響し合っている様子を数式として表すためには、どうしたら良いでしょうか。私たちは中学校で、それを極めて単純な形で実現するための概念を学んでいます。それが、「連立方程式」です。
$$
\begin{cases}
2x+3y=-1\\x-4y=5
\end{cases}
$$
上の連立方程式には、x,yという2つの変数の関係性が、極めて単純な式で表されています。この例のように、2つの変数の関係性を複数の式で表したものを2元連立方程式と呼びます。変数が3つであれば3元連立方程式、n個であればn元連立方程式と呼びます。また、この例では、x,yそれぞれの1乗以外変数がありません。つまり、x²やy³のようなものは含まれていません。このように、変数の1次式だけで構成された方程式のことを1次方程式と呼びます。上に挙げた例は、2つの変数の1次式のみで構成されているので、正確には「2元1次連立方程式」ということになります。〈線形代数入門①〉では、n元1次連立方程式に焦点を当て、これを観察していきます。そのため、n元1次連立方程式のことを単にn元連立方程式や、変数の数が文脈から明確である場合はさらに簡単に連立方程式と呼ぶことにします。
3.連立方程式の解法
私たちは中学校で連立方程式を学んだ際、連立方程式を解く練習を沢山してきました。例えば先程例に挙げた連立方程式を解くと、$${(x,y)=(1,-1)}$$が解になります。このように、連立方程式を変形し、その連立方程式を構成する変数に対して具体的に何らかの表式を与えることを連立方程式を解くと言い、その表式のことを連立方程式の解と呼びます。連立方程式を解く方法のことを〈線形代数入門①〉では連立方程式の解法と呼ぶことにします。
私たちは、連立方程式の解法を既に(少なくとも)2つ知っています。それらは、加減法と代入法と呼ばれるものでした。それぞれの解き方について、前節で挙げた連立方程式を実際に解くことで確認しましょう。解き方に不安がない人は、読み飛ばしていただいて構いません。
3-1.加減法
まずは加減法で解いてみましょう。先程の連立方程式を再掲します。
$$
\begin{cases}
2x+3y=-1\\x-4y=5
\end{cases}
$$
加減法と代入法はそれぞれ異なる方法ではありますが、方針としてはどちらも同じです。それは、連立されている式を変形して、うまく整理することで注目したい変数以外に退場してもらうという方針です。例えば上の例に挙げた連立方程式からyを求めたいとき、下の式を2倍すると、上と下の式でxの係数が揃います。そこで、上の式から、変形した下の式を引くことでxを消し、yのみの方程式にしてyを求めます。実際にやってみましょう。
1つめの式(=上の式)をr₁、2つめの式(=下の式)をr₂とします。この先変形をしていきますが、変形が終わった時点で上にあるものを常にr₁、下にあるものをr₂と呼ぶことにします。つまり、1つめの式を2倍するという操作をした後「1つめの式」と言った場合、2倍したあとの式のことを指します。さて、下の式を2倍するという操作を$${r_{2}\rightarrow 2\cdot r_{2}}$$と書くことにすると、連立方程式は、
$$
\begin{cases}
2x+3y=-1\\2x-8y=10
\end{cases}
$$
と書けます。ここで、r₁-r₂をすると、
左辺:$${(2x+3y)-(2x-8y)=11y}$$
右辺:$${(-1)-(10)=-11}$$
より、$${11y=-11}$$となります。これから、$${y=-1}$$を得ます。残ったxを求めるには、連立されている式のどちらかに、求めたyの値を代入します。ここではr₁を使うと、
$$
\begin{align*}
2x+3y=-1\\
\Leftrightarrow 2x=-1-3y\\
=-1-3\cdot (-1)
=2
\end{align*}
$$
より、$${2x=2}$$となります。これから、$${x=1}$$を得ます。以上より、最終的に連立方程式の解は、
$$
(x,y)=(1,-1)
$$
と求められます。これが加減法による連立方程式の解き方です。
3-2.代入法
次は、代入法を用いて解いてみましょう。代入法では、まず連立されている式を変形し、ある特定の1つの変数を他の変数で表します。そして、これを他の連立されている方程式の該当する変数に代入することで変数の数を減らします。実際にやっていきましょう。まずは先程と同様、問題を再掲します。
$$
\begin{cases}
2x+3y=-1\\x-4y=5
\end{cases}
$$
代入法を適用するため、2つの式のうちどちらかを変形します。この場合、r₂を上手く使えそうです。r₂を"x="の形に変形すると、$${x=4y+5}$$という式を得ます。これをr₁のxに代入して整理すると、
$$
\begin{align*}
2x+3y=-1\\
\Leftrightarrow 2(4y+5)+3y=-1\\
\Leftrightarrow 11y=-11
\end{align*}
$$
となることから、$${y=-1}$$を得ます。xについて、代入法では変数を減らす際に$${x=4y+5}$$という式を作っていますから、これに代入すれば良いです。
$$
x=4y+5=4\cdot (-1)+5=1
$$
以上より、考えていた連立方程式の解は、
$$
(x,y)=(1,-1)
$$
と求めることが出来ます。
4.確認問題
各講義ごとに、その回の内容確認や計算練習用の確認問題を用意します。回答は別にnoteを作りますので、そちらから確認してみてください。
問1
次の連立方程式を解け。
(1)
$$
\begin{cases}
2x+3y=1\\7x+9y=2
\end{cases}
$$
(2)
$$
\begin{cases}
x+2y+3z=5\\3x+y+2z=7\\2x+3y+z=12
\end{cases}
$$
(3)
$$
\begin{cases}
x+2y=1\\2x+y=2
\end{cases}
$$
解答・解説
[制作中です。公開までお待ちください。]
5.次回予告
次回は、連立方程式の解についてより深く観察していきます。そこから、既存の解法の持つ問題点と、新たな解法への希望をまとめます。そこまでを線形代数入門①の序章として、次々回から線形代数の説明にスムーズに入れるように説明をしますので、是非読んでください!
今回の講義はここまでです。また次回もお会いしましょう!お疲れ様でした!
[2025/12/30 更新]
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