〈線形代数入門①〉連立方程式を巡って(2)
こんにちは!ねこかすてら(@casrellachat)です。前回は連立方程式を復習し、加減法と代入法の2つの解法を説明しました。今回は前回に引き続き、線形代数への導入をしていきます。次回以降線形代数の説明にスムーズに入れるよう、線形代数の考え方を見ていきましょう。
1.連立方程式の解のバリエーション
前回、連立方程式の解き方には加減法と代入法の2種類が存在することを紹介し、実際にそれを使って連立方程式を解いてみました。この節では、連立方程式の解について、もう少し踏み込んでいきたいと思います。
1-1.不能
まずは、次のような連立方程式を考えてみましょう。
$$
\begin{cases}
2x-4y=1\\x-2y=3
\end{cases}
$$
読み進める前に、まずは自分で解いてみましょう。
Q1.上の連立方程式を解いてみましょう。
加減法、代入法のどちらを用いても構いません。
どうでしょう、解けましたか。恐らく、0=5や1=6など意味不明な式が出てきてしまったのではないでしょうか。その答えが得られるのは、貴方が計算ミスをした訳でありません。むしろ正しく式変形ができています。では何故このように意味不明な式が出てきてしまうかというと、この連立方程式を満たすような実数の組(x,y)は存在しないからです。このように、連立方程式の解が存在しない場合、その連立方程式は不能であると言います。その連立方程式を満たす実数の組(x,y)を与えることは不可能であるということです。
1-2.不定
次に、こんな連立方程式を考えてみましょう。
$$
\begin{cases}
x+3y=2\\2x+6y=4
\end{cases}
$$
こちらも、読み進める前に一度考えてみてください。
Q2.上の連立方程式を解いてみましょう。
加減法、代入法のどちらを用いても構いません。
ここまでの展開からして、どうせ解けないんだろうなぁと思った方、大正解です。恐らく、今度は0=0という式が得られたのではないでしょうか。またまた嬉しくない式が出てきてしまいました。では、この連立方程式も解が存在しないのか……と思ってしまいそうですが、よく観察してみると、先程とは状況が違います。不能な連立方程式を考えたときも今回も、式変形を進めた結果変数が消えてしまいました。しかし、先程は0=5や1=6のように意味不明な式であったのに対して、今回得られた0=0という式は、等式としては問題なく成立しています。では、どういう状況なのでしょうか。これは、この連立方程式を満たすような実数の組(x,y)が無限に存在することを表しています。実際、cを任意の実数として、
$$(x,y)=(2-3c,c)(c\in \mathbb{R})$$
とすると、この実数の組は確かに先程の連立方程式を満たします。このように、連立方程式の解が無限に存在する場合、その連立方程式は不定であると言います。連立方程式の解をただ1つに定めることが不可能であるということです。
ここまでの観察から分かるように、連立方程式の解は常にただ1つに定まる(=一意である(※1))というわけではありません。無限に存在することもあれば、そもそも1つも無いこともあります。このように、連立方程式の解には、バリエーションがあります。
※1
数学で、ある条件を満たすものがただ1つ存在するとき、これを一意に存在するといいます。連立方程式を満たす解がただ1つであるとき、その連立方程式の解は一意に定まるとか、その連立方程式は一意解を持つとかと言います。
2.新たな解法への希望
前節までで、連立方程式の解き方と、解のバリエーションについて書いてきました。この節ではそれらの観察から得られたことを元に、加減法と代入法の持つ3つの問題点を提示します。そこから、新たな解法へのモベーションを紹介します。
2-1.加減法と代入法の持つ問題点
加減法と代入法を紹介したとき、実際にそれらを用いて連立方程式を解いてみました。例に挙げたものは2元連立方程式だったため、解くのが大変だとはそこまで思わなかったのではないでしょうか。しかし、これが5元や6元連立方程式だったらどうでしょう。もしかしたら、私たちは100元連立方程式なんてものに出会うかも知れません。そうなったとき、加減法と代入法は次のような問題点を持ちます。
問題点1:加減法と代入法は、機械的でない。そのため、連立方程式に含まれる文字が増えれば増えるほど、解くのが極めて困難になる。
例えばどの変数をどう消すのかということや、どの式を変形して代入するのかといったことは、解く人に完全に依存してしまいます。言うなればその人のセンスによって楽に解けたり、または対照的に、収拾がつかなくなって解けないということになりかねません。連立方程式の解法は、やはりある程度機械的で、かつ誰がやっても確実に答えにたどり着けるような方法であるべきです。
もうひとつ、気になる点があります。代入法を用いるとき、私たちは適当に1つ式を取ってきて、それを変形して代入することで変数を減らしました。このとき、私たちはその取ってきた式を特別扱いしていることになります。どうしてその式を代入すれば求まったのか、他の式ではダメだったのかということに対する疑念は晴れません。加減法を用いた際も、いくつか変数を求めたあとで、他の変数を求めるために得られた解を適当な式に代入することで求めました。ここでも、連立されている式のうち数本が特別扱いされてしまっています。このようなことから、加減法と代入法は次のような問題点を持ちます。
問題点2:連立されている式を対等に扱っていない。
最後に、私たちは連立方程式の解にはバリエーションがあることを知りました。式変形の結果意味不明な式が得られたら不能、0=0が得られたら不定としました。このとき、考えている連立方程式がただ1つに定まる解(=一意解)を持つのか、はたまた不能/不定なのかということは、最後まで式変形を進めることでしかわかりませんでした。また、不定であるとわかったとして、具体的にその解がどのような形で表されるのかを知る手段がありませんでした。これは、連立方程式に対する理解を深める上で大きな問題点と言えるでしょう。
問題点3:考えている連立方程式の解の個数を判断するのが大変。また、不定であったときに具体的な表式を求めるための確立された方法が今のところ存在しない。
2-1.新たな解法へのモチベーション
ここまでに挙げた3つの問題点から、新たな解法に期待することが明確になります。
連立方程式の新たな解法は、
1.機械的に、かつある程度簡単に運用することが出来る
2.連立されている全ての式を対等に扱うことが出来る
3.解の個数を判断するための特定の方法を持ち、同時に、不定解の具体的な表式を得る方法が存在する
ようなものであって欲しい。
以上を目標に掲げながら、この先線形代数の説明を続けていきます。
3.〈線形代数入門①〉で苦しくなったら
最後に、〈線形代数入門①〉を読み進めるうちに苦しくなったときの処方箋を出しておきます。この先線形代数を学んでいく中で、何をやっているのかわからないと思うこともあるでしょう。そうなったとき、〈線形代数入門①〉の中では、連立方程式についての理解を深めようとしているのだということを思い出すようにしてください。より簡潔にいえば、私たちは、連立方程式をラクに解きたいだけです。苦しくなったらこれを思い出してください。
4.確認問題
問1
次の連立方程式を解け。解が一意に定まらないときは、不能であるか不定であるかを述べよ。
(1)
$$
\begin{cases}
x+2y=-1\\2x-3y=12
\end{cases}
$$
(2)
$$
\begin{cases}
3x-6y=-1\\-2x+4y=0
\end{cases}
$$
(3)
$$
\begin{cases}
x-y=-1\\-x+y=1
\end{cases}
$$
問2
連立方程式が不能であるとはどういうことか説明せよ。また、不定であるとはどういうことか説明せよ。
解答・解説
[制作中です。公開までお待ちください。]
5.次回予告
次回から、本格的に線形代数に入っていきます。まずは行列を導入し、それにより連立方程式を『一次方程式化』することができることを示します。同時に一次方程式についても復習することで、この先の展望を見ます。
今回の講義はここまでです。また次回もお会いしましょう!お疲れ様でした!
[次回]
