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『金木犀』と香りの思い出 〜風まかせな物語〜


iさんの企画に参加させていただきます☺️。
●お題:”金木犀”がテーマ

         ***

(金木犀の香りが好きな方、突然こんな話でごめんなさい。)
金木犀の香り……それは、私にとって『トイレの香り』。

実家がまだリフォームする古い家だった頃、トイレの前に金木犀の木が植えてあったのだ。

母は和式のそのトイレの匂いが嫌いだったらしく……金木犀の枝を、その時期になると一輪挿しにいけて、トイレに飾っていた。

だからどうしても、金木犀の香りを嗅ぐと、実家のあの古いトイレを思い出してしまう。

でも。
……ある年のことだ。

帰ってきた子どもたちが、いつも以上に騒がしくしながら、玄関の外から声をかけできた。

「ただいま、お母さん!ねぇ、来てきて!」

いったい何事かと外に出ると……袋いっぱいに詰め込まれたオレンジ色の花が見えた。

「これ、すごくいい匂いなの!公園で見つけた!」

「おじさんに聞いたら、木を持って帰っていいよって!でも、もったいないから落ちてるやつを集めてきたのっ!」

それが何かは……聞かなくてもわかった。

外に出た途端に感じた、あの懐かしい香り。
どこか嬉しくなるような、オレンジの色。

そして……その小さな花を袋にいっぱい集めてきたという、キラキラの瞳たち。

「……ありがとう!本当にいい香りだね。母さんも好きな匂いなんだよ。なんで知ってたの?」

言葉はするりと飛び出していて……そう声に出して気づいた。

これは、確かにトイレの香りだった。
でも……本当は、私が好きな色、すごく好きな香りでもあったのだ。

「思い出させてくれてありがとうね。母さんもその公園に見に行ってみようかなぁ」

理由は何であれ……この花をトイレに飾っていた母を少しだけ恨めしく思いながら、そう言った。

きっと金木犀の香りは、トイレの香り。
でも。
今……こうやって新たな思い出が、優しく記憶を上書きしてくれている。

「知らなかった……じゃあ、いつ行く?僕たち、場所を案内するよ!」

「木に咲いてるやつのほうがね、匂いが強いし、すごくきれいなんだよ!」

口々にそう言ってくれるのが嬉しくて。

「それは楽しみ。じゃあ、おやつを食べたら出かけようか?」

「やったー!」
「はーいっ!」

みんなで家に入り、玄関を閉める。
優しい香りは、まだそこにちゃんと漂っていた。


iさん、ありがとうございます☺️。

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