資本主義という怪物を知る冒険へ。大企業のビジネスパーソンが人文知を学ぶべき理由。
この記事は、資本主義との距離感を考える本をみんなで作る『100人超でつくる資本主義の本』プロジェクトの有志によるアドベントカレンダーです!
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0. はじめに -なぜ資本主義を学ぶのか-
本日12月3日のアドベントカレンダー3日目を担当させていただきます、ハンドルネーム・くりさんと申します。
本記事では、大企業に勤める私のようなビジネスパーソンの皆さんに向けて、
本書籍を通じて、資本主義や人文知(哲学や歴史、文学などの人間社会を理解するための学問の総称)を学び始める価値
をご紹介したいと思っています。
「社内調整ばかりで、誰のために仕事をしているのかわからない」
「DXと言われても、何が正解かわからない」
もしあなたがそんなモヤモヤを抱えているなら、この記事と本書はきっと何かのヒントになると思っています。
しばし、お付き合いください。
1. 仕事は理系、趣味は人文知
簡単な自己紹介をさせてください。私は工学系の大学・大学院を修了後、建設業界で機械系のエンジニアとして働いています。最近はDXやAIの社内推進・システム開発に携わる仕事をしています。
そんな理系キャリアの私ですが、趣味では昔から文学・新書・漫画などが好きでした。高校では世界史にハマり、大学の教養単位では哲学や美術史学、宗教学など、人文系のインプットが加速しました。人文知・リベラルアーツが人生を豊かにしてくれると感じながらも、仕事は趣味と切り離して楽しみたいと工学系の研究に進み、今の建設系の会社に入りました。
両親ともに教師の家庭で育った私にとって、ビジネスの世界は未知の領域でした。世界史を変えた産業革命の力や、世界を動かすグローバルビジネス。これまでの教育や研究とは違う新しい世界への知的好奇心が、私がビジネスパーソンを志すきっかけでした。
2. 大企業で感じた「価値」への違和感
入社以来、与えられた仕事を必死にこなす日々を過ごしました。
もっと効率よく費用対効果の高い仕事がしたい。経験を積んで成長したい——。
資本主義にどっぷりと浸かって激務をこなしていた時、ふと感じることがありました。
『自分は誰に価値を届けているのだろうか』
大企業にはよくあることですが、自分の成果物を受け取るのは社内の別の部署の担当者や関係会社の方で、関係性も近くない。営業担当でない限り、顧客担当者と直接対話する機会はほぼなく、直接感謝を言われることも少ない。
いわゆる"サイロ化” (組織が縦割りになり、情報連携が滞る状態) によって、部門間の厚い壁に阻まれてコミュニケーション不全が起こり、自分の仕事の成果の価値がわからなくなっていきました。
そんな環境で、時短・業務効率化・利益率向上・スキルアップ。そんな言葉を唱えられても、受け取る側には大した実現手段もモチベーションもなく、周囲に響かない。違和感が心を支配していました。DXの門を叩き始めたのも、この違和感がきっかけの一つでした。
3. 資本主義における「価値」
そんな中、音声コンテンツが好きだった私はCOTEN RADIO(*1)とたのてつ(*2)を通じて本書の筆者の品川さんを知ります。お金の歴史や資本主義の歴史、労働の思想史に知的好奇心を揺さぶられ、こちらの資本主義本制作プロジェクトに自然な成り行きで流れるように参加しました。
本書の第二部ではアダム・スミスからマルクス、シュンペーターといった天才思想家達の一連の思想潮流が紹介されています。資本主義がもたらす6つの課題・構成要素とその根本原理が紐解かれていきます。分業がもたらした社会の繁栄と個人の機械化、自分の労働力を売ることでしか生きていけない労働者の感じる『疎外』という概念。時代が進んでも、我々が資本主義社会を生きる限り、変わらない根底にある怪物のような強力な原理の正体を改めて学び、自分の問題は特に解決していないのに、なぜかスッキリしたことを覚えています。
その中でも私が特に腑に落ちた「価値」に関する一節を引用します。
価値とはそのものにそなわった自然の性質ではありません。人々が「価値あるもの」として扱うという社会的な関係から生まれる、資本主義社会において特有のいわば幻想的な力なのです。でも、この幻想は現実の力を持ちます。
自分は誰かの「価値」のために労働をしてきたはずです。しかし、そもそもその「価値」とは何なのか? 言葉の定義も、その背景にある社会的な関係性も深く問うことなく、私はただ勝手にモヤモヤし、イライラしていただけなのではないか——。
資本主義社会に生きるには、価値があるといわれているものの深層にある社会的関係、その意味を読み解くこと、が必要なのではないか——。
4. 資本主義社会が求める「価値」の深層理解
そう思った時に、自分のDX開発のアプローチが変わり始めました。
自分の成果物は、どの顧客の、何の価値に繋がっているのか。その顧客はどのようにその価値を感じているのか。それは貨幣によって数字として計測可能なのか。その数字で表し切れていない価値は何か。顧客すら気がついていない価値を社会的関係性づくりから共に生み出していけないか——。
気がつけば、私は成果としての価値を定義するという目的で、部門の壁を超えてコミュニケーションし、社内のシステムユーザー・部門マネジメント・経営・人事・社外の顧客といった多様なステークホルダー視点での複層的な業務価値表現を取り入れ始めました。
DX開発で表面的な時間効率・費用対効果だけを追い求めた「システムを作る」ことだけを目的にせず、
「ステークホルダー間の関係性にどんな価値を生み出すのか」
を問うようになったのです。次第にDX案件の開発要件をよりシャープに精緻化する習慣・スキルが身についていきました。そのおかげか、今では自分の仕事を支援してくれる人が増え、自信を持って自分の届けたい価値を表現しながら楽しく仕事ができるようになってきています。
それぞれの立場の人々にとって真に必要な深層的な価値を、根本から問い直す。貨幣だけによって測られる価値に縛られることなく、デジタル技術で企業のビジネス自体を変革する。
DXの起点として最も必要な考え方は、「価値」という言葉の深層理解、資本主義の思想潮流から得られたものでした。
5. 最強の剣と盾。「社会構造」を知れば、人生は楽しくなる。
以上が私の体験です。
2章に書いた当時の私の課題感は、特に大企業のビジネスパーソンの皆さんに共通するところがあるのではないかと想像します。大きな会社では、収益源となる既存のビジネスプロセスが大規模化・複雑化し、部門間でサイロ化現象が起こり、顧客や関係者との距離が遠くなって自分の労働の意味や価値が見えにくくなる、という現象が起こりがちです。このような企業の課題とその対策は、世の中のビジネス書や組織開発論でよく語られていると思います。
しかし、その課題の根本原因は何か?我々を苦しめているものは何か?に答えようとすると、意外と断片的ですっきりしないことが多かったりします。
私は今、現代のビジネスが資本主義に立脚している以上、資本主義の構造に様々な苦しみの原因が収斂していくように感じています。
お金も時間も足りない。数値目標が達成できない。自分の労働の価値がわからない。成長が追いつかない。顧客が欲しいものがわからない——。
全ての苦しみが、我々をこれまで豊かにしてきた資本主義社会の構造に原因があるとわかれば、根本的な解決策のヒントも、資本主義の構造理解にあるといえるのではないでしょうか。
人文知を通じた社会構造理解は、ビジネス課題の解決に直結する武器、最強の剣に変えることができる。そして、ビジネスを楽しむことができる。
これが私の体験です。
そして、この体験からもう一つお伝えしたいのは、個人の気持ちの変化です。社会構造理解を味方につけると、生きやすくなる、ということです。
課題の根本原因が社会構造にあるのであれば、目の前にいる人も同じ社会構造の被害者である、という認知に変わっていきます。隣の部署の人も、取引先の会社も、お客様も、それぞれの立場で同じ社会構造からくる苦しみを味わっている、いわば"同じ傷を負った仲間"です。そう考えると、問題の原因を他人のせいにするような他責思考は自然と消えていき、同じ仲間であるステークホルダー全員にとって真に実現したい姿、それぞれの立場にとってのWinを考える思考習慣に変わっていきます。
誰のせいでもない。我々人類は、共通の社会構造の上に、敵でもあり味方でもある”資本主義”という名の大きな怪物と戦い続けている。その中で仲間達が幸せに生きられる状態とはどんな状態だろうか。共通の善はどこにあるのだろうか——。
社会構造を理解することで、希望のある世界認識が広がっていきます。
人文知を通じた社会構造理解は、周りに優しく楽しくポジティブに、自分がより善く幸福に生きるためのお守り、最強の盾でもあると感じています。
6. おわりに -人文知の冒険へ-
本書は、資本主義社会に生きる我々個人の目線に立って、天才思想家達の思想を大変わかりやすく解説している、稀有な書籍です。
この資本主義の怪物が跋扈する社会を生き抜くために、最強の剣と盾を同時に手に入れる。それが、人文知による謎解きの冒険です。
大企業のビジネスパーソンの皆さんも、本書を片手に人文知の冒険の旅に出発してみませんか?
興味を持った方はぜひDiscordコミュニティで自由に議論しましょう!皆さんのご参加、お待ちしています!
この本のプロジェクトに興味を持ってくださった方は下記リンクから参加お申込みいただけます。担当者が確認しましたら、Discordへの招待メールが届きます。
「100人超でつくる資本主義の本」コミュニティ参加申し込みフォーム
(注記)
*1: COTEN RADIO: 株式会社COTENが企画・運営する大人気歴史Podcast番組。本書の著者品川さんが歴史調査を担当。
*2: たのてつ: 本書の著者である品川さんがスピーカーをしているPodcast『日本一たのしい哲学ラジオ』の愛称。
ぜひ皆さんもPodcastから気軽に人文知を学んでみてください!
結果的にこちらの記事が初めてのnote記事になりましたが、今後の個人noteについてはまた改めて記事を書きたいと思います!
では!
