006 |詰め込みすぎた森のキット【夜ふかしアトリエ】
森の広場では、季節ごとに開かれる大きなマーケットのほかに、 個人が作ったものや、森で採取したものを自由に販売できる露店エリアがある。
今日はその一角に、
ずきんちゃんのちいさな看板が立っていた。
【はじめの一歩を応援する魔法のキット】
こぐまのモカとココが、興味津々に駆け寄る。
「ねぇねぇ、これなあに?なにが入ってるの?」
「うふふ、これはね……“これから何かを始めたい!”って思ってる誰かの背中を、そっと押すキットなの。」
ずきんちゃんはそう言って、丁寧にラッピングされた箱をいくつか並べた。
──その中身は、
・自己紹介カード(3種)
・やってみたいこと棚卸しシート
・プロフィール用テンプレート
・森のおすすめツール一覧
・SNS設計のワークシート
・想いを形にするための小さな問いカード(全12枚) ……などなど、
想いがぎゅっと詰め込まれた盛りだくさんの内容。
「うわぁ……なんかすごいけど……なんか多い……!」
モカがキットを開けて、目をぐるぐるさせた。
「おねえちゃん、これ全部やるの?」とココ。
不安そうな2人に慌てて、
「いや、やらなくてもいいのよ!好きなのから始めていいの。 えーっと、でもその前にこの“全体マップ”を見て……あ、これは目的別のガイド……えーっとえっと…」
ずきんちゃんがガサゴソ資料を探し
説明しようとした瞬間、こぐまたちはそっと箱を閉じてしまった。
「……む、難しいかも」
その言葉に、ずきんちゃんはハッとした。
作っている時は、
『あれもあったら親切かな』『これも入れておけば安心かも』と、どんどん足していった。
だけど気づけば、
「これでいいのかな?」 という一番小さくて大切な問いが、奥の方に押し込まれていたのかもしれない。
その時、森の妖精が風に乗ってふわりと現れた。
「ねえ、ずきんちゃん。思いやりって、時に重荷になることもあるんだよ」
「……うん。届けたい気持ちが強すぎて、
たぶん“準備しすぎた”のかも。」
風がやさしく吹き、こぐまたちが草の上に座って、
小さなパーツのひとつを取り出す。
「この“問いカード”だけで、ぼくやってみる!
モカもこれやってみよ〜」
『全部じゃなくていい』『どこからでもいい』
それをちゃんと伝えるためには、
まずそぎ落とす勇気が必要なのかもしれない。
ずきんちゃんは、森の空を見上げながら静かに思った。
「ほんとうに届けたい“やさしさ”は、 きっともっと軽やかで、風に乗れるくらいのものだったんだ。」
↓ つづき ↓
©Chocodori / ©Yofukashi Atelier
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