Photo by
nyakopan
【毎週ショートショートnote】踏切オーディション
「次の、一歩を踏み出せない方」
案内人に促され、私は白い線が引かれた体育館の床に立った。目の前には、人生の障壁を象徴するような、巨大な十段の跳び箱がそびえ立っている。
これは、新しい自分に生まれ変わるための「踏切オーディション」。審査されるのは、手前に置かれた踏切板を踏みつける覚悟の音だ。
私の前を走った男は、転職をためらっているらしい。助走は力強かったが、直前で怖気づき、情けない音を立てて跳び箱に激突した。「不合格」の声が響く。
次は私の番だ。長年、言いたいことを我慢したきた窮屈な日々がフラッシュバックする。
「もう、嫌だ!」
私は全力で疾走し、バネの仕込まれた板へ渾身の力で両足を叩きつけた。
ダダーン!!
体育館に、世界で一番美しい爆音が響き渡る。
私の身体は重力を忘れ、見上げるほど高かった十段の跳び箱を、驚くほど軽やかに跳び越えていた。着地した私の耳に、「合格」を告げる温かい拍手が届いた。
自分の殻を破り、爽快だった。
410字
※踏切というと普通は鉄道のを思い浮かべることでしよう。私は小中学校で苦手だった体育の跳び箱の手前の踏切(板)をすぐに思い出しました。 以前、自分の記事にも書きました。
※田原にか様、どうぞよろしくお願いします。
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