風まかせ文芸部 『夏の終着点』
夏、君と遊んだ海。
白い波が弾けて、記憶の底に沈んだ。
僕が触れる肌は、誰かの想いでコーティングされて、その柔らかさすら伝わらない。
一時の戯れにリスクを負って、青い海が警告の赤に染められてゆく。
君が孕んだあの夜の息遣いは、もう、辿り着けない夏の終着点。
「誰かが呼んでる気がするよ」
「気のせいだよ。今は私だけを見て」
「でも君は、誰かのものだから」
「私は私。誰のものでもない」
どんな映画にも終わりがあるように、僕達の恋愛ごっこにも終わりが来る。
ラストシーンは夏、君と遊んだ海。
白い波が弾けて、僕達の記憶を曖昧にしてくれた。
もういいんだ。
きっとこのまま流されて、エンドロールに埋もれる。
観客はたった一人。
シートに身を沈め、ずっと君の名を呼んでいる。
ねえ、君は心が痛まないのかい?
夏が終わり次の季節が来ても、このサマーフィルムを撮り続けるのか。
君の演技に辟易して、僕はステージを降りたというのに。
砂に埋まるサンダル。
打ち捨てられた麦わら帽子。
すべて君の残骸。
逆に辿れば、あの日の僕達が手を繋いでいる。
今はもう海は凪いで、まるで波風など立てることなく。
そこに、夏の終わりが待っていた。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
