【第四話/一部】まんなかのベンチーー大人になった子ども
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「キーンコーンカーンコーン」
聞き慣れた、学校のチャイムの音が聞こえる。
「あれ?」
恐る恐る目を開けてみた。
そこは、毎日僕が通っている学校だった。
(ちぇっ、あれは全部夢だったのか。)
なんだ、飛ぶベンチも、フードの魔法使いも全部、僕の想像だったんだ。
と、がっかりしていると、後ろから、
「せんせーい!おはよーございまーす!」
とバシッと、僕の背中を叩いて、小田くんがすり抜けていく。
「小田くん?」
クラスの人気者の小田くんは、僕なんかに話しかけないのに
……あれ? 先生?
「おはようございまーす」
「おはようございまーす」
「せんせー、チャイムなったよー!」
周りを走っていく、同級生や上級生までもがみんな小さくなってる。
自分の体を見ると、黒のスーツに革靴を履いていた。
(ぼく、大人になったんだ。しかも、先生に!!)
(やったー!!)
嬉しくなって、校舎の下駄箱に走った。
「あっ、そうか。」
先生は、上履きははかないんだ。
立ち止まっていると、後ろから知っている声がした。
「先生、走って校舎に入っていく姿、何だか子どもみたいですよ」
クスクス笑って話しかけてきたのは、僕の担任の杉谷先生だった。
いつものんびりした、おじいちゃん先生だ。あんまり表情が変わらないので、何を考えているのか分からない。嘘をついた時なんか、ドキッとするようにじっと見つめられて、すぐにばれちゃうから、少し怖い。
「今日から先生は、僕のクラスの副担任ですね。」
「えっ、副担任?」
「校長先生から話しているはずですよ。新任の先生は、副担任からって決まっているんです。よろしくお願いしますね。」
そうか、僕は、新任の先生なんだ。
「よ、よろしくお願いします!」
胸がどきどき高鳴った。僕もいよいよ、大人として仕事ができるんだ!
杉谷先生が話しながら僕の前を歩く。
「2年3組は、なかなか個性的な子が多いクラスなんですよ。」
「個性的?……問題が多いってことですか?」
(誰のことなんだろう。)
「いえいえ、まぁ、おいおいわかるでしょう。」
ガラガラと、教室の扉を開ける。
「はーい、席につきましょう。」
バタバタと、みんな着席する。
「きりーつ! れーい! おはようございまーす。」
副委員長の前野さんが、号令をかける。
(あぁ、いつもは僕の役割なのに。でも、いいんだ。
だって、今は、学級委員よりすごい副担任なんだから。)
「えーっと。今日から副担任の先生が来ています。自己紹介お願いします。」
「えっ。」
そっか、名前を考えないと……青色のベンチ。
「あ、あの、青木です。よろしく。」
「あはは、せんせー、緊張してるー。」
と、前の席の山本さんが茶化す。
「そうですね、では、何か趣味なんか教えてください。」
(えー! そんなー!)
「しゅ、趣味は、空を眺めることです。」
「なんじゃそらー!」
どっと、教室に笑い声が起きた。
(よかった。笑われたらいつもは嫌なのに、なんだかうれしい)
ニコッと笑ってお辞儀した。
「先生、いいですね。」
こそっと、杉谷先生が耳元でいう。
「よーし、それじゃあ、国語の11ページ開けましょう。」
そうして、授業が始まった。
