アラフィフ乙女、ビールを薄めて徳を積む
私は常日頃からセコい。
頭の中は、理想と怠け心の辻褄合わせが繰り広げられ、実にやかましい。
二の腕のたるみと共に心までも緩み、以前なら理想のためにかろうじてストイックになれたことも、今は「まぁ良いか」という飴玉を口に含む甘さに負けてしまうようになった。
それと共に言い訳の技術も、着実にエリート街道を突っ走っている。
模範回答からいかに、天女の如く美しくひらりと逃げようか。
アラフィフ乙女の脳内は、フル稼働のファンタジーだ。

必要経費と、我が家の最大の発明
我が家では毎晩、泥試合のような攻防戦が繰り広げられている。
先月受けた内視鏡検査の診察時、ドクターからアルコールの有害性をコンコンと諭されたのが全ての元凶だ。
(詳しい経緯はこちら👇)
しかし、私にとって心の友であり、生きる燃料でもあるビールをゼロにする人生なんて、サクサクの衣がないエビフライみたいなもの。
キッチンで1本、食事中に1本、お風呂上がりに1本。計350ml×3本はもはや生活インフラであり、ビール代は必要経費だ。
とはいえ、アラフィフともなると、翌日に残るダメージが「抗えない重力」になって襲いくるのもまた事実。
だからといって、酒をやめる気など毛頭ない。
いかに我慢せず、かつビビりながらアルコールを減らすか。
あの手この手で巡らせる小細工こそが、今の私の全脳みその使い道だ。
まずは、糖質オフを選ぶ。
それだけでアルコール分を少し減らせ、なんとなく徳を積んだ気になって悦に入る。
が、翌朝の体は相変わらず重い。
そこで閃いたのが、私史上最大の発明にして、もっとも貧乏くさい所業だった。
350mlのビール2本を、500mlの炭酸水で豪快に割るのである。
これならグラスを傾ける回数は一切減らさず、アルコールの実質量だけをスリム化できる。
しかも、「最初は薄く、後半にいくにつれて濃く飲む」という、セコさの極まったグラデーション技法まで会得してしまった。
ビールを3本買うよりお財布に優しいのも、乾いた心に染み入る。
薄められたグラスを見つめながら、「これぞ究極の知恵……」と謎の達成感に浸る姿は、ツタンカーメンの墓を発見したハワード・カーターが黄金のマスクを目の当たりにしたときの興奮と同じくらいとか、そーでもないとか…。

糖質ゼロビール120円より90円お得だと言って、賢くなった気でいる
酒に魂を売った男と、シュールな距離感
そして、我が家にはもう一人の酒に魂を売った男がいる。
夫である。
高血圧で毎日欠かさず薬を飲んでいるというのに、酒の量は一ミリも減らさない。
「ダイエットのために、ビールからハイボールに変えたから!」と、ドヤ顔で謎の宣言をかます。
……いや、アルコール度数、むしろ上がってますけど?
そもそも太る原因は、あなたのその猛烈な早食いと油物好きのせいであって、ビールのせいだけにするのは濡れ衣もいいところだ。
なのに、ちょっと太ったら「しゅん」とし、痩せれば「見たか!」とばかりに得意げに自慢してくる。
欲しいおもちゃを手に入れて、ホクホクしている子供並みに、めでたい生き物である。
しかも、昔から人の話を聞かない頑固さは相変わらず。
だから私も、彼の言動についてあれこれツッコむのをやめた。
右から左へ華麗にスルーされるだけの会話にエネルギーを使うほど、アラフィフの体力は余っていない。

それが我が家の円満の秘訣らしい
常温のスープに浮く、浮き輪の上で
矛盾に満ち満ちた我が家は、今日も今日とて平和だ。
そもそも、人間なんて生き物は矛盾だらけなのだ。
すべてに正しい整合性を求めていた若い頃の私は、少しのほころびも許せず、自分を追い込み、他人の些細な言動にトゲを立てては、勝手にすり減っていた。
けれど、今はセコい自分も案外嫌いじゃない。
禁酒が100点満点としたら、とうに私は赤点だ。
だがここまで落ちたら、キリキリ自分を締め上げるのはもうおしまい。
正論という名の熱湯で身を焦がすのも、冷徹な現実で凍え死ぬのもごめんだ。
人生という名の、誰が作ったかも分からない、中途半端にぬるくて油の浮いた『常温のスープ』に、不完全な自分もまるごとだらしなく身を委ねてしまおう。

