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キツネとクマとハリネズミ|つながる寓話「笑いの調べ」第2話

深い霧に包まれた北の森に、三匹の獣がいました。

一匹目は、金色の毛並みを持つキツネです。彼は自分の知恵と美しさを正義だと信じて疑いませんでした。困っている者がいれば導き、森の秩序を守る自分は、特別な存在なのだと胸を張っていました。

二匹目は、鋭い牙と大きな体を持つクマです。彼は自分の力を悪だと恐れていました。ただ歩くだけで草花を踏みにじり、その咆哮は森中の鳥を逃げ出させます。「お前は恐ろしい」と言われ続けた彼は、深い洞窟で孤独に過ごしていました。

三匹目は、背中の丸いハリネズミです。彼は自分の針を無用の長物だと嘆いていました。誰かを抱きしめることもできず、ただ丸まって震えることしかできない自分は、何の役にも立たない、価値のない存在だと思い詰めていました。

ある秋の日、森を未曾有の大嵐が襲いました。鉄砲水が溢れ、三匹は濁流に囲まれた小さな高台に追い詰められます。

「私がいれば、必ず道は見つかる」

キツネはいつものように言い放ち、激流の浅瀬を読み解こうとしました。しかし、渦巻く泥水の前では自慢の知恵も通用せず、彼は足を滑らせて流されそうになります。

その時、クマが太い腕を伸ばしてキツネを掴みました。岩をも砕くその剛腕は、荒れ狂う水の中でも微動だにしません。「……すまない」と震えるキツネを、クマは黙って自分の背中に乗せました。その広すぎる背中は、かつてキツネが野蛮と蔑んだものでした。

しかし、行く手には折れた大木がトゲだらけの茨(いばら)を絡ませて道を塞いでいます。クマの厚い皮でも、執拗な茨の棘には敵いません。

「……僕が、行きます」

ハリネズミが震えながら前に出ました。彼は体を丸めると、忌まわしいはずの針を逆立てて茨の隙間へ転がり込みました。ハリネズミの鋭い針が茨を弾き飛ばし、絡まった蔦を切り裂いて、三匹が通れるわずかな隙間を作ったのです。


嵐が去った後、泥だらけになった三匹は、静まり返った森で朝日を浴びていました。

キツネの毛並みは汚れ、クマの牙は泥にまみれ、ハリネズミの針には枯れ葉が刺さっています。キツネは自分の無力さを、クマは自分の力強さを、ハリネズミは自分の鋭さを、ただじっと見つめました。

そこには、賞賛されるべき正義も、忌むべき邪悪も、卑下すべき無能もありませんでした。ただ、激しい流れを止めた「重さ」があり、茨を割った「鋭さ」があった。それだけのことでした。

三匹は言葉を交わすことなく、それぞれの住処へと歩き出しました。キツネは泥を払わず、クマは足音を忍ばせることもなく、ハリネズミは背を丸めず、ただそのままの姿で、の奥へと消えていきました。


小さな問い
・個性とはなんでしょう?
・あなたはキツネ派?クマ派?それともハリネズミ派?
・自分らしさの良し悪しは何で決まると思いますか?


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