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碓氷峠廃線ウォークに参加してみた


EF63が走ったあの鉄路を自分の足で歩く

 旧信越本線の横川から軽井沢の区間は、鉄道の難所として知られ、1997年9月30日に廃止されるまで多くの鉄道ファンを魅了してきました。わずか11キロほどの区間ですが、その歴史は古く、道中にはレンガ造りの橋梁やいくつものトンネル、変電所などの貴重な遺産が残っています。
 そして、線路はいまでも軽井沢まで続いています。 かつて電気機関車「EF63」が走った本物の線路の上を、横川から軽井沢まで歩くことができる「廃線ウォーク」というツアーがあると知り、早速参加してきました。本当は廃止日と同じ9月30日に参加したかったのですが、定員がいっぱいで叶わず、紅葉が見頃の11月初旬に行くことになりました。

アプトの道をスタート

 山の紅葉がちょうど見頃だったこともあり、参加者は45人ほどと、思っていたより大勢で賑やかでした。横川を午前11時に出発。すぐ近くに慰霊碑があり、まずは鉄道建設で命を落とした方々に感謝と安寧を祈りました。 ここから軽井沢へ向けて11キロの旅が始まります。
 出発してすぐの場所には「碓氷関所跡」があり、上州(群馬)と信州(長野)の境にある横川が、かつて中山道の宿場町として栄えた歴史を伺うことができます。 そこから少し歩くと「アプトの道」という遊歩道に入ります。ここはかつて、下り線の線路が敷かれていた場所です。この辺りから、25パーミル(1000m進むと25m登る)ほどの勾配が始まります。

碓氷関所跡

 ふと左後ろを振り返ると、「碓氷峠鉄道文化村」の背後に、岩が切り立った特徴的な形の山が見えました。列車が走っていた頃には、あんな高い山の頂上まで登って写真を撮る「撮り鉄」の方もいたそうです。

頂上が撮り鉄の撮影スポットだったという山

 さらに進むと、左側の眼下に大きなプールのようなくぼみが見えてきます。今は車が止まっていたり倉庫があったりしますが、ここはかつての「貯水池」で、かつてあった火力発電所の一部でした。この発電所は碓氷峠を電化するために作られた施設で、当時必要だった電気はここで作られていたそうです。

プールのようなくぼみのところは貯水池があった場所

写真で見たあの美しいレンガの建物

 頭上を通る高速道路の大きな陸橋を過ぎてしばらく歩くと、右側に立派なレンガの建物が見えてきます。写真でもよく見る「丸山変電所」です。西欧風の美しい建築物で、先ほどの火力発電所で作られた電気をここで変換して機関車に供給していました。
 建物の中に入ることはできませんが、ガラス越しに覗くと、がらんとした室内はまるで時間が止まったかのような不思議な光景でした。 横川駅からここまで、ゆっくり歩いて30分ほどです。
 鉄道にとっての25パーミルは急勾配ですが、歩く分にはそれほど辛くなく、心地よい運動になりました。ここで10分ほど休憩があり、希望者は変電所をバックに記念撮影をしてもらえました。

丸山変電所
丸山変電所(正面の入り口)
丸山変電所(屋内)

66.7パーミルの急坂区間

 線路は丸山変電所から左にカーブしており、その先からは明らかに坂が急になっているのが分かります。ここからは、いよいよ60パーミルを超える区間に入ります。時々後ろを振り返ると、みるみるうちに標高が上がっていくのが実感できました。
 しばらく進むと、線路の脇に「66.7」と書かれた標識がありました。ここが日本一の最急勾配地点です。あまりの坂のきつさに、10両編成の特急「あさま」を力強く押し上げていたEF63の姿を想像しながら、一歩一歩踏みしめて歩きました。

丸山変電所を過ぎた辺りから険しくなる勾配
この辺りは最急勾配(歩いているのは上り線の線路)
60パーミル以上の勾配が続く

思い出の「峠の釜めし」と、暗闇のトンネル体験

 「峠の湯」という施設に着くと、待ちに待ったお昼休憩です。ここで横川駅の名物「峠の釜めし」が振る舞われました。特急「あさま」の車内でなくても、目の前に線路があるこの場所で食べる釜めしは格別です。空の容器は返却もできますが、私は記念に持ち帰ることにしました。

峠の釜めし

 ここから先はトンネルが続くため、ヘルメットを着用し、懐中電灯を手に進みます。線路の周りには草木が生い茂り、景色も少し鬱蒼としてきます。ガイドさんが時々「熊よけのサイレン」を鳴らしながら先導してくれます。
 1200メートルほどある第2トンネル内では、ガイドさんの合図で一斉に懐中電灯を消すという体験がありました。これが本当に「正真正銘の真っ暗」で、少しの光も感じない闇に驚きました。
 この闇を照らしながら登って来る特急「あさま」の姿を思うと感慨深かいですね。 これ以外に、他のトンネル内では、壁を使ったビデオ上映や、信号機を点灯させる演出など、イベントも盛りだくさんでした。

 トンネルの番号は忘れましたが、ある場所ではトンネルとトンネルの間の橋の上から旧線の「めがね橋(碓氷第三橋梁)」を遠くに見ることができました。紅葉の赤や黄色が本当にきれいで、自然と鉄道の風景が重なる様子に夢中でシャッターを切りました。

メガネ橋(碓氷第三橋梁)
紅葉に囲まれるトンネル

 また、トンネルで印象的だったのは、直線区間なのに設置されていた3つの丸い電気が並んだ信号機です。通常はカーブの先に置くものだそうですが、ここは勾配が急すぎて、直線でも先の方が見えにくいために設置されていたという話を聞き、改めて峠の険しさを知りました。

峠の休息地、熊ノ平でひと息

 横川と軽井沢の中間より少し軽井沢寄りにある熊ノ平に着くと、ここでトイレ休憩となります。枕木の上を歩くのに慣れていないせいか、少し足が疲れました。横川を出てから、ずっと坂を上り続けてきたのだと実感します。
 この場所はトンネルに挟まれた、わずかな「フラットな場所」で、地下鉄が一瞬だけ地上に出たような不思議な感覚になります。
 ここには、かつて変電所として使われていたコンクリートの建物が残っています。また、ここにはレンガ造りの「旧線のトンネル」と、コンクリート造りの「新線のトンネル」が並んでおり、時代の違いを間近に感じることができました。

熊ノ平旧線トンネル(横川側)
熊ノ平

トンネルを抜けると夕焼けだった

 熊ノ平を出発すると、軽井沢まではもう一息です。再び60パーミルを超える勾配のトンネルを進みます。音は聞こえませんが、この真上を北陸新幹線が走っているそうです。 

熊ノ平と軽井沢の間にある古いレンガの橋

 第18号トンネルを抜けて少し歩いたところにある旧軽井沢信号場がゴールでした。トンネルを抜けて外に出た瞬間、目の前が鮮やかなピンク色に染まっていました。夕焼け空です。ずっとトンネルの中にいたせいか、久しぶりに空を見たような、晴れやかな気分になりました。 時間は午後5時過ぎ。「ノッチオフ」。EF63と一緒に特急「あさま」が走った道は、今も確かにそこにありました。

軽井沢側に出たらきれいな夕焼けが・・・


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