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【四国108箇所歩き遍路3(伊予)】#12 石鎚神社頂上社(2025年9月)

これは2015年12月~2025年11月にかけて、順打ち、全7回の区切り打ちで結願した四国108箇所歩き遍路の記録である。



もう随分前、土佐を歩いている頃、遍路宿でよく元山屋さんと一緒になった。
若い頃北アルプスや南アルプスなどに通った経験があるという元山屋さんが、かなりの割合で遍路道にはいらっしゃる。そういった方々が一緒になると、昔登った山の話で盛り上がる。
そのときも、遍路宿で二人の元山屋さんが百名山の話で盛り上がっていて、百名山かつ西日本最高峰の石鎚山の天狗岳の話をされていた。
その頃のわたしは天狗岳どころか石鎚山すら知らず、完全に蚊帳の外だったのだが、石鎚山と天狗岳のなまえは強く耳に残った。
 
歩きで番外霊場の石鎚山を目指す人は、60番横峰寺の奥之院星ヶ森(標高800m)から石鎚山の成就社(標高1,450m)を経由して山頂(弥山の標高1,972m→天狗岳の標高1,982m)を目指すことが多い。星ヶ森から成就社までは10km、山頂までさらに4km程度だ。
しかし、このルートについては不明だが、石鎚山系では過去に多くの事故が発生していることを知り、震えた。初級者レベルのわたしがひとりで歩けるような道なのか。

 そんなときにネットで見つけたのが、モンベルのツァーだった。
石鎚山登山ロ-プウェイの終点、成就社から向かう中級者向け
土小屋から向かう初級者向け
の2つがあった。
いずれも、遍路道から歩いてつなぐことはできないが、鎖場も天狗岳も通らない安全ルートで石鎚神社頂上社に参拝できる。

3か月前にもかかわらず前泊のお宿を確保することができずツァー参加は諦めたが、土小屋コースであれば登山者が多いため道迷いもなく難所もないと聞いて、わたしはこのコースをひとりで登ることにした。
 
ただし、久万高原から石鎚山土小屋まで行く路線バスは土日祝日に一日2往復のみ。
土曜日に土小屋に前泊して、日曜日の朝登って、午後のバスで久万高原に戻る。
これしか、わたしが石鎚山を参拝する方法はなかった。
 
(2025年10月1日以降、石鎚山土小屋まで行くバス路線は廃止され、今後は未定)


昨日の晩の時点で、今日の雨は確定していた。
国民宿舎石鎚のかたが天気図を見て、朝6時に明るくなったらすぐ出るようアドバイスしてくださった。
しかし、なんやかやで出発は6時15分になり、周囲の写真を撮っているうちにも時間が過ぎた。

国民宿舎を出発

お宿の前の駐車場を抜ける前にもう雨がパラパラし始めた。(6:18)
それでもわたしは、憧れの石鎚山に登れるという喜びでいっぱいの第一歩を踏み出した。
 
往復5時間程度のコースなので、背中のサブザックには、飲料と行動食、納経帳セット、万が一のときのための防寒用上着、ファーストエイドキッドにヘッドライト等だけ入れて身軽。雨対策として、気休めで25ℓザックの専用レインカバーをサブザックに被せておいた。
 
国民宿舎から150mで登山道に合流し、整備された、雨でも歩きやすい道を進む。
いつの間にか雨は本降りになっている。

雨でも歩きやすい道が続く


と、そこに、突如最初の難関が現われた。(6:39)

最初の難関 丸太で補強された路肩

わたしは丸太橋が苦手である。
縦の一本橋を最も苦手とするが、縦3本でも、横でも、丸太はみな同じだ。
橋でも、階段でも、丸太はみな同じだ。

土小屋は初級者コースではなかったのかと思いながら、恐る恐る進むと、路肩を丸太で補強した程度で距離が短いこともあり、最後は走って、意外とすんなり渡りきれた。
ほっとした。
 
しばらくすると山頂まで3kmの案内表示。
登山道に入って5分程度で3.6kmだったので、もう1/5くらい来たなと嬉しくなる。
まだ7時前なのに5~6人の団体が下りてきたので挨拶をすると、菅笠を被ったわたしの姿を見て、うちひとりの女性が「石鎚山も八十八ヶ所なんですか?」と驚いた顔で聞かれた。番外霊場だと答えると、納得して、わたしの背中のレインカバーを被せ直してくださってから下っていかれた。
この人たちは、夜中から登ったのだろうか?
 
そして、狭い階段状の道などを過ぎたら、また、前触れもなく丸太が現われた。(6:49)

2つめの丸太 これは怖かった

1つめと異なり、崩れた路肩に刺すように丸太が組んであった。
足がすくんで前へ進めない。
それでなくとも怖い丸太が、雨で濡れて見るからに滑りそうだ。
怖すぎる。渡れない。
 
ぐずぐずしていたら、後ろからご夫婦が現われたので、「どうぞお先に」と言ったら、「いいえ、待ってますからごゆっくり」と返されてしまった。
もういちど譲ってみたが、また譲られた。
前へ進むしかなくなり、仕方なく、全身カチコチのまま丸太に土踏まずを載せて一歩一歩進み、今度も最後を走って渡りきった。
 
振り返ると、ご主人が奥様に、「2本の丸太に足の前後をかけてゆっくり渡ればいいから」とアドバイスしているのが聞こえた。
そうすればよかったのか・・・
 
その後山頂から2.8km地点のベンチ1に到着、さらに15分程度でベンチ2に到着したが、屋根がないので水分補給は諦めた。(7:10)

ベンチ2


その後も丸太で補強した階段や、少し岩の出た道などが続いたが、よく整備された歩きやすい道ばかりだった。

ちょっと岩だらけ

 
ついに山頂までの距離が1kmを切ったところから20分で、成就コースとの合流地点に到達した。(8:10)

土小屋コースと成就コースの合流地点

下山時には絶対間違えないよう、宿で念押しされた場所だ。
ここで下山コースを誤り、気づいて登り返しているうちに日が暮れるというパターンも多いらしい。
 
そして、トイレの横を通り、非常階段みたいな長い階段を昇り、山頂まで0.4km地点で二の鎖との分岐に来た。(8:29)

二の鎖との分岐

雨でなければ二の鎖を登る人の姿を見物するつもりだったが、この雨で鎖場を行くひとはいないだろうと思い、そのまま直進した。
さらに100mで三の鎖との分岐。

三の鎖を行く場合には左へ進む

 
さらに5分で急に周囲がひらけ、山荘と、その先にぼんやり石鎚神社頂上社が見えたところで、突風に菅笠が飛ばされた。
菅笠には雨用のビニールカバーがついている。こんなに綺麗なお山でゴミを出してはならじと慌てて両手を伸ばして菅笠を押さえようとして、前のめりに転倒してしまった。
ただ、菅笠の頂上は割れたものの、なんとか取り押さえることはできた。

いきなり視界がひらける
石鎚神社頂上社の社務所と本殿


とにもかくにも、石鎚山の弥山の山頂に立つことができた。(8:43)
お宿でいただいた案内図には、この弥山が山頂だとわざわざ書いてあったが、天狗岳は?
残念ながら、雨と霧で視界は10mもなく、天狗岳に至ってはどちらの方向にあるのかすらわからなかった

そして、本殿の前に立ってはじめて、雨のなか蝋燭やお線香まで持ってきたが、ここは神社なので不要だということに気づいた。
さらに、お賽銭をあげてお詣りし、隣の社務所で納経帳を差し出すと、御朱印はあらかじめ印刷された紙に日付を加筆したものだったので、納経帳も不要だった。
ずいぶんと余計なものを持って登ったものだ。
 
雨でずぶ濡れのわたしを見た神主さんが、すぐ下の山荘で温まって行くよう勧めてくださったので、山荘の戸を開けた。
山荘には暖房が入っていたが、お客さんは誰もいなかった。温かい飴湯を注文し、雨に濡れたサブザック等をかけて腰をおろすと、一瞬にして根が生えた。
こんな雨の日でも登山者は結構いたので、そのうち誰か来たら出ようと思ったが、30分待っても誰も来なかった。
 
30分休んで外に出ると相変わらず雨が降っていた。
驚いたのは、10時過ぎても次々登ってくる人がいること。標高1,900mを超える山に、平地の遍路道の何倍もの人が登ってくる不思議。就学前くらいの小さな男の子が母親らしき女性に手をひかれ、数人のグループで登ってくるのともすれ違った。登り始める時点で既に本降りの雨だったはずだ。
わたしはというと、どんどん下れて、登りであんなに苦労した丸太橋もあっさり渡れたので別の場所だったかと思ったくらいだった。

ふたたびの丸太橋

 
結局、朝、国民宿舎の玄関前を出てから5時間足らずで、再び国民宿舎の前に戻ることができた。(11:13)
 
スタッフのみなさんが温かく迎えてくださり、脱衣所で着替えていいですよと仰ってくださったが、着替えが1組しかなく、再び雨に濡れたら今日のお宿で着るものがなくなってしまうので、預かっていただいていたザックのなかみだけ詰め替えて、ロビーで休憩させてもらった。
挽きたての珈琲が実に美味しく、壁に飾ってある天狗岳の写真などを眺めてのんびり過ごした。
 
その後思いついて、宿の傘とサンダルを借りて土小屋テラス前の広場に近い石鎚神社土小屋遙拝殿にもお詣りした。
こちらも、あらかじめ印刷した御朱印だったので、納経帳は不要だった。

石鎚神社土小屋遙拝殿

 
その後土小屋テラスのモンベルショップで食事をしたりして時間をつぶし、下山のバスの到着を待った。
 
この路線バスは、もともと毎年4月から10月の土日祝日だけの運行だったのが、利用客の減少を理由に、今年は例年より1か月早い10月からの運休が決まっていた。そして、伊予鉄南予バスはこの路線を今月で廃止するつもりだというもっぱらの噂だった。つまり、来年(2026年)の4月以降公共交通機関で土小屋まで行く手段がなくなるということである。仮にここまでタクシーで来るとしたらいったいいくらかかるのだろうか。かと言って、くねくね山道を1時間も運転したら、半日は寝込んでしまいそうだ。
 
運転手さんが土小屋バス停の時刻表に運休の掲示をして、バスは出発する。(15:09)
いやしの宿八丁坂の前で降ろして欲しいと伝えて、わたしは座席に腰をおろした。
乗客はわたしを含め3人だけ。
行きでもそうだったが、石鎚スカイライン(県道12号線)を40分かけて下ると面河のバス停で10分間の休憩があった。

面河で休憩中の伊予鉄南予バス
行き先は「久万」
同上

 
休憩が終ると、バスは白い大きな鳥居をくぐって、また県道12号線を下り始める。
行きと同じ景色が窓の外を逆向きに流れてゆく。
途中ひとりだけお客さんが乗ってきて、バスはいやしの宿八丁坂の前で停車した。
いつか晴れた日に弥山から天狗岳を仰ぎ見てみたい、そして、鎖場を登る人の姿も見てみたい。興奮冷めやらぬまま、わたしはバスを降りた。


【参考URL】
伊予鉄南予バス
久万営業所↔上直瀬 の間はフリーバス区間なので、路線沿いの安全な場所で手を挙げれば停まってくれるし、あらかじめ伝えておけば降車もできる(「いやしの宿八丁坂」前など)
ただし、面河~土小屋路線は廃止とのもっぱらの噂なので、2026年春以降の運行については、久万高原町のHPを要確認


【コースタイム(実際)】

*    距離はgoogle mapでの簡易計測および登山道の案内標識等による
**岩屋寺前バス停~いやしの宿八丁坂は、後日歩いて繋いだ
                   


いやしの宿八丁坂(久万高原初日にも宿泊)







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