【感想】パテック杯楽しかったです

 こういう企画には初めて参加しましたが、とても楽しかったです。企画していただいたパテックさん、改めてありがとうございました。

 私が読んだ中で特に印象に残った作品を三つ紹介します。

 「あと、5キロ痩せたら」という言葉をフックに、二人の曖昧な関係の断片が描かれています。確かにこの言葉について考えると、結論の先延ばしのようにも、関係の継続のようにも、拒絶のようにも聞こえます。こういう言葉の多相性に目を付け、短編を完成させてしまう才能が素直に羨ましいです。二人の関係性はそれだけだと物語たり得ないと思うのですが、このワンワードが物語をぐぐっと最後まで推し進めてしまっています。こういう物語を支えるアイデアを私はいつも探していますし、そういう意味でこれは私のお手本のような小説です。

 こちらの作品も「華さん」という言葉が物語を静かにドライブさせているように感じました。今回の企画では恋の始まりや途中、つまり恋愛そのものを描いている作品が非常に多かったように感じましたが(当たり前のことですが)、この作品はタイトル通り、恋が終わった後に残る何かについて描いているのが特異点です。恋愛が終わったとしても生活は残り、恋愛の結果生まれたもの(この作品の場合は息子)が存在し続けることもあります。そういう当たり前のことに気づかされました。何より「華さん」という言葉が円環を示唆しているのが面白いです。家族って家系図のように下に延びていくようなイメージがありますが、どこか円環めいた部分もありますよね。

 こちらの作品も「花になりたい」という言葉が物語の軸になり、結末で綺麗に回収されます(ネタバレ!)。この作品は今回の企画で最も情熱的で官能的な恋愛を描いていると思いました。私には逆立ちしても書けない文章です。「老舗ホテルのホテルマン」、「華道教室」、「テーブルのスターチス」などなど登場する設定や場所がどれもどことなく艶めかしくて、それでいて哀愁があります。後半の展開は読んでいるこちらがどぎまぎするような色気があり、これが恋愛小説というものかと圧倒されました。企画を通してこういう作品に触れることが出来たのも良かったです。

 とにかくこれまであまり他の人の作品をじっくり読むということをしてこなかったので、今回の企画を通して多くの皆さんの作品に出会えたことがただただ嬉しいです。

 特に印象に残った三作品はいずれも、ある一言を起点に物語を構築し、恋愛の輪郭を浮かび上がらせる巧さがありました。私はそういう作品が好きだということを改めて実感し、自分も書けるようになりたいと思いました。本当に良い機会になりました。主催してくださったパテックさん、改めてありがとうございました。



 ちなみに私が応募した作品はこちらです。恋愛によって結ばれ、結婚を考えた相手が自分と相容れないものを信じていた場合、それでも関係を継続できるか、ということについて考えながら書きました。企画に並んだ作品に比べ、自分の作品は恋愛そのものを描けていない、と反省しました。とはいえいつもよりいいねやコメントを多くいただけて、企画の注目度の高さを実感しました。ありがとうございました。これからも細々と短編小説の投稿を続けますので、よろしくお願いします。

最新の短編小説です。


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